それはプロポーズの準備だったちゃんと事前に電話で予約入れてきた相談者「吸血鬼の生殖を考える会と言うものに所属しておりまして、是非ドさんに」
ロくん「帰ってください」
「あっ、違うんです、生殖について本当に真面目に」
「帰ってください」
お茶請け持ってきたドちゃん「なにそれ面白い話?」
「ほらきちまったじゃねえかクソ案件を愛するクソ雑魚砂おじさんが」
「いえ私が真剣に考えているのはこちらの」
「ペットの写真??」
「ほう、ニホントカゲですかな…おやこれは」
「ええそうなんです、番の片方だけ吸血鬼化してしまって、しかしこの子全然血とか吸わないタイプでもうただのトカゲかなって思ってたら最近私の脳内に直接話しかけてきまして」
「幻聴だろ」
「ロナルドくんシッ」
「どうしても番との間に子孫を残したいと」
「ふむ…ヒトと吸血鬼でも難しいことは多いですからな…」
「もう片方も吸血鬼にしたら」
「それがなんか才能ないみたいで…普通に交尾しても全然でして」
「なるほど爬虫類でさえ子作りしてると言うのにうちの若造ときたらスナ」
「うるせえお前でやる予定だわ!」
「え」
「ナスナス それで私にその子たちの妊活アドバイザーをせよと?」
「はい意思疎通が図れるならとこちらを勧められまして、あの子作りされるんですか」
「勧めたやつ誰だか気になるけどやっぱ帰って」
デンワワワ
「くっそ応援要請だ、おいドラ公、俺が戻るまで勝手なことすんなよ!」
「安心しろ肉体労働の僕ルドくん、君が床下や下水を這いずり回っている間、私が速やかにこの問題を解決しておいてやろう!」
「本当ですかありがとうございます、あのおふたり子作りされるかんじの」
「勝手なことすんなっつってんだろ!!」
「あいつ!!帰ったらいねえし!!」
デンワワワ
『ヘロー、ロナルドくん、解決したよ! 両方女の子だったからとりあえず正しい吸血の仕方教えてあげて長じてどちらか変身できるようになったらちんちん生やして交尾すること勧めてきたけど、なんか一緒にいられるならそれでいいみたい』
「だから勝手なことすんなって…!! お前爬虫類に血の吸い方とか教えられんの? 吸血鬼ちんちん生やせんの??
まあ解決したんならいいか…さっさと帰ってこいよ」
『うん、そろそろ蓬の季節だから、なんかそう言うおやつの材料買って帰るね』
「…迎えに行くからどこのスーパーにいるか教えろ」
『うふふ過保護だなあ、いいよ君どうせどろんこだろ、お風呂入ってあったまってなさい、今日のお夜食は唐揚げに似た何かだよ』
「いや唐揚げ作れや」
さて、このロナルドはドラルクに告白済みのロナルドくんである。しかし付き合ってはいない。
なぜなら晩御飯の時にうっかりぽろっとなんの予定もなく「すき」と口走ってしまって、ムードもなにもそもその心構えすらなかったロナルドは混乱して奇声を上げてドラルクを殺して絶望して泣きながらご飯を食べて、翌日土下座して仕切り直しをお願いしたからだ。
そんなわけでロナルドの好意はドラルクにバレバレだし、ドラルクはドラルクで「えー、せっかく私も好きなのにまだ付き合わないの?」とか面白そうに言って絡んでくるのでもう勝ち確を極めてるところだ。
「それでいつ仕切り直す気なんだね初手大失敗ルドくん」とにやにや邪悪な顔してるくせに、ロナルドにはもう可愛く見える笑い方で、細くて長くてえっちな指先で顎をするりと撫でてくるのでロナルドのエッチメーターは溢れっぱなしだ。
最近に至っては出掛けに行ってらっしゃいのちゅー(投げるやつだけど)してくれるし、ソファに座る時もすぐ隣に座るのでいい匂いがしてロナルドはうっかりドラルクを抱っこしてしまうし(初めは気付いたら奇声をあげて自分の行動が信じられなくてうっかりドラルクを殺したこともあったけれど)、いつだってごはんはおいしいしで、ロナルドのドラルクへの好きは日々京単位で更新中もう大好き。
しかもその好きに比例してドラルクのえっち仕草レベルが爆上がりしていくのでちんちんが痛い。ひどい。ロナルドはめちゃくちゃ頑張って耐えた。嘘だ。頑張ったけどダメだった。
「うわあ、童貞って同居してるだけのおっさん相手でもそんなんなっちゃうの」
「うるせえ童貞関係ねえだろお前だからなるんだよ」
ドラルクはひとしきり大笑いしてからロナルドのちんちんをヨシヨシしてくれた。ロナルドのちんちんをヨシヨシしてくれた。ロナルドのちんちんをヨシヨシしてくれた。3回言う。
付き合ってもないのにそんなこと、とロナルドは始めはやめさせようとしたけれど、
「そうだねえ、付き合ってないけど、私はロナルドくんのこと可愛いからなでなでしてあげたいな」
とかえっちに言われてダメだった。ロナルドのちんちんは弱弱だった。ちょっとなでなでされただけでもうすごく気持ちよかった。
しばらくおかずに困らなかったし脳内でめちゃくちゃアレンジした。
「付き合ったらもっと楽しいことしてあげるよ」
ドラルクは笑う。揶揄われているわけではないことくらい、ロナルドはもうちゃんとわかる。だって大好きだからずっと見てるしずっとそばにいるのだ。もっと楽しいことしたいです。
だからロナルドは次の休みの日に向けて薔薇の花束を予約したしお揃いの指輪も買ったし役所で転化とパートナーシップについての書類ももらってなんならドラルクの母親(弁護士)に手続き相談した。ジョンにも日程を合わせて外出してもらった。キンデメさんは事務所に待機。念の為に密閉瓶も用意してある。
そんなわけで満を持しての告白本番は明日、日付が変わってすぐにでも。
そう思っていたので、本当はロナルドはドラルクを外に出したくなくて、ずっと家にいて欲しかったのだ。
でも、それでもまあ、無事に解決したと言うのなら。
ロナルドはスマホの待ち受けで笑うドラルクとジョンとメビヤツを眺めてにへ、と笑った。
心をめちゃくちゃぴょんぴょんさせながら、言いつけ通り風呂に入り温もる。
ちゃんと付き合えたら一緒に入りたいなとかも考える。
機嫌よく柔らかく、嬉しそうに、すぐ帰るよと言ったのに。
ドラルクはその日帰ってこなかった。