笑い話にして欲しかった笑い話にして欲しかった。
風真は雑貨屋の店員としてアルバイトしている。ごくごく希ではあるけど、厄介な客に絡まれる事もある。笑顔が気に入らないとか言って因縁つけてくる人とか。まぁ、接客業なのでそういう変な生き物に遭遇することもある。
『そんな事いうヤツ本当にいるんだ、ウケる』
なんて言葉を想定してたのに、七ツ森はただ静かに軽く肩を叩いたあと
「お疲れさん、カザマ」
そう言って笑った。眼鏡の奥の翡翠が優しくこちらを視ているのに気付いて風真の肩が緩りと
落ちていく。完全に机に突っ伏してしまってから、あぁ、自分は疲れていたのかと今更思いしる。
「頑張ったねぇ」
「うるさい。つぅか、頭を撫でるな」
疲れを見抜かれた恥ずかしさと、長い指に撫でられるのが存外に気持ち良くて頭があげられない。
「いやぁ、カザマ、髪サラサラで気持ちいい」
楽しげな七ツ森の声に自分がやられるのは嫌がる癖にと風真は人知れず唇を尖らせた