猫妖精と水遊び「暑い……」
「ニャウぅ~」
まだ8月ではないけれど、でもまさに夏真っ盛りと言えるような連日の暑さ。だというのにこの猫妖精はいつもお腹の上に乗ってくる。
「おまえ、暑くないのか……?」
「にゃ~」
うん。どう見ても暑そうだ。
「ほら、こっちの方が少しでも涼しいぞ?」
そう言ってフローリングに降ろしてやるが、すぐにお腹の上に戻ってくる。
「暑いだろ~?少しでも涼しいほうにいた方がよくないか?」
お腹に乗ってくるのは決して嫌ではないのだけど、お互い暑いのではなかろうか?
クーラーをつけてはいるけど、それでも暑いものは暑い。
「猫って汗かけたっけ?でもお風呂とか嫌がるしなぁ」
風呂。という単語が聞こえたのか、こちらを軽く睨むように見てくる猫妖精。
湯船につかれば大人しくなるのに、そこまでいくのが大変な猫妖精である。
「あ、そうだ……」
この間物置にしまった「とあるもの」を思い出す。
外に出て物置から「とあるもの」を出す。
「にゃう?」
その「とあるもの」を見て不思議そうに首をかしげる猫妖精。
「ポンプがあっても大変だわ、これ……」
その「とあるもの」とはビニールプールである。
姉の子供である甥たちが遊ぶために置いていったものだ。我が家は井戸水を引いているゆえに夏でも水が冷たいということで、実家で水遊びをさせたい。と置いていったのである。
水を溜めてやれば興味が出てきたのか、ちゃぱちゃぱと水を飛ばして遊んでいる。
「よいしょっと」
おちびを抱えてプールに入れてやれば、最初は嫌がったがその水の冷たさに満足したのか大人しくなった。
ちゃぱちゃぱと水遊びをしている姿はやはり普通の猫とは違うようで、だがかわいらしいもだった。
見てるだけでも少しは涼しくなるので、出してよかったと思う。
「少しは元気になったみたいでよか……ぶっ!」
ばしゃりと水を顔面にかけられて、口に出した言葉が途切れる。水をかけてきた本人?本猫はけらけらと楽しそうに笑っている。
「……元気になったと思えばヨシ……うわっ!」
二発目を再び顔面に食らう。
さすがに、されるがままというわけにはいかなかった。
「よし、その挑戦しっかりと受け取った」
手に取るのは甥が残していった最新型の水鉄砲。威力はほとんどないが広範囲に大量の水をまくことができる。大容量のタンクを備えてもいるので弾切れの心配も少ない。欠点と言えば少し重いくらいか。
しっかりと構えて撃てば大量の水が猫妖精を襲った。
「にゃぅ~!」
反撃してくるが水量ではこっちが勝っている。
「負けん!」
果たして勝敗はつくのだろうか?
「ここまで濡れたらもう同じようなもんだな」
水かけ勝負に飽きたのか、猫妖精はぷかぷかと浮かび始めていた。そんな猫妖精を抱えて自分もプールに入る。水の冷たさが心地よくて気持ちがいい。
「濡れるのが嫌なわけじゃないんだよなぁ」
風呂はそこそこ嫌がるのに、濡れるのが嫌というわけではない不思議な猫妖精。入浴剤なんかで釣れば割と簡単に一緒に入ってくれる。琴線がわからない。
「もう少ししたら、しっかり拭いてアイス食べようか」
「にゃぁ~!」
猫妖精が遊びに来るようになってしばらくたつが、何者かに追われていない限りはとてつもなく平和で楽しい日々であった。
この日の夜、風呂に入れるために再びひと悶着があったのはお約束。