くやしい四男恋は早い者勝ちだ。
出遅れたものがなんと言おうと、先に想い人の心を奪われてしまったらそれでお終いなのである。そう、分かっているつもりだったのだ。
オレは2つ上の実の兄に恋をしている。
相手が身内な時点でアウト。さらに同性、極め付けは同じ顔である。端からスリーアウトチェンジ!すぎる状況に自覚したときはそりゃもう荒れた。高すぎるハードルと叶う望みの薄さに絶望を繰り返し、オレはすっかり闇人形にと化した。そしてもう自分の恋については諦めた。諦めた、つもりだったのだ。
気付いた時にはあのクソはドブスの彼女を連れ込み、尽くし、全てを捧げていた。優しさも愛情も家族との時間も全部。今までそれはオレの、いや、家族の為だけにあったのに。
タキシードを着て式場に立つ姿を見た瞬間、猛烈な後悔に襲われた。
諦めたなんて嘘だった。誰にも取られたくない。誰かの物になんてならないで欲しい。ずっとそばに居て、名前を呼んで、クソみたいなファッションで笑っていて欲しい。
しかし時に既に遅し。ゲームセット。
もうどうしようもないのに、でも頭の中でぐるぐると思考が回る。
普段からもっと仲良くしていれば、引き止めることが出来たんじゃないか。アイツよりおれの方がカラ松を幸せに出来るんじゃないか。あんな奴より絶対ぼくの方がカラ松のこと好きなのに。くやしい。
と、そこで物語もといオレの人生は終わるところだった。しかしギャグアニメよろしくドタバタと色々あり、結局は奴はドブスと別れ、何事もなかったかのように日常が帰ってきたのである。
そこからのオレは迅速だった。あの兄の心を手に入れるため、暴力、恐喝、泣き落としも辞さない忙しい日々を送った。結果、長い闘いの末、押しに弱く弟に甘いカラ松の心をなんとか捕まえることが出来たのである。
晴れて恋人同士となってからは(暴力を含まない)スキンシップも増えた。ソファで並んで本を読んだり、布団でこっそり手を繋いだり。自分より高い体温に触れるとソワソワとむず痒い気持ちになって、心臓が跳ね上がる。
幸せ借金に塗れる日々だったが、