彼に似ている小さな彼 事の発端は、尾行帰りに通ったゲームセンターで、雪原先生そっくりのぬいぐるみを見かけたことだった。
まるで先生をモデルに作られたかと思うほど特徴が似通った二頭身のキャラクターは、デフォルメされた大きく簡易な瞳でこちらをじっと見ている――ように思えた。
気が付けば、私は数千円と引き換えにそのぬいぐるみを手に入れていた。普段ならばこの金額を費やすのにそこそこの葛藤が生じるはずだが、予想を遥かに上回る弱さのアームとの駆け引きに、つい夢中になってしまった。この手にあるのは魔性のぬいぐるみだ。強い魔力は却って魔除けになると山神さんが言っていた気がする。これは、常日頃病魔を滅ぼさんとすべく闘っている雪原先生にあげることとしよう。
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