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    美味しいご飯を食べて、また少し仲良くなる話

    #翔昴

    翔昴 はじめての 何か目的があったわけではなかったし、ただ少し顔が見たかっただけ。
     顔を見て、軽く挨拶をかわして、お互いの日常に戻る。
     そんな淡い交流を望んでいなかったかと聞かれたら、嘘になる。
     昴流は遠巻きに忙しそうにキッチンカーの中で働く翔平の姿を眺め、どう挨拶をしようか考えていた。
     あまりに忙しそうで、完全に気後れしてしまった。
     やはりランチタイムなんて忙しい時間にやることじゃなかったと、諦めようと思った時だった。
    「あれ?加賀見センパイ!どうしたんすか?」
     大きな声で名前を呼ばれ、おまわず固まってしまった。
     他の客の頭上ごしに翔平は続ける。
    「センパイ、お昼まだっすか?
     実はセンパイに食べてもらいたいものがあって……」
     楽しそうに続ける姿をみていたら、恥を忍んで近寄るしかなかった。
    「……まだです」
     他の人からの視線が痛い。
     それ以上なんと答えるべきかわからず、端的に質問に答えると、翔平は表情を明るくし笑いかけた。
    「んじゃ、食べてってくださいよ!
     俺、先輩のためのメニュー考えてたんで」
     屈託なくそう言われ、昴流は思わず頷いていた。

     流石に気が引けた昴流からの一般客がいなくなってからという提案を翔平は受け入れ、料理が提供されたのはしばらくたってからだった。
     さっきまでの賑やかさが嘘のように、落ち着いている。
     隅の方の席で待つ昴流の前に、料理と共に翔平が現れた。
    「おまちどーっす。
     結構待たせちまって、逆に迷惑だったかもしれないっすね」
    「そんなことないよ。
     ぼくこそごめんね。
     気を使わせてしまったみたいで……!」
    「……?
     いや、別に気は使ってねぇんすけど……ま、せっかくなんであったかいうちにどうぞっす」
     翔平が昴流の前に用意したのは、以前も食べたチキンオーバーライスだった。
     前に食べた時も美味しかったと思ったのだが、自分のためというからには、何かが違うらしい。
     それを先に聞くのは野暮に思え、昴流は促されるまま口に入れた。
    「……美味しい」
     以前と同じように変わらずスパイシーなのに、ずっと自分に合う感じがする。
    「っしゃ!!」
     勢いよくガッツポーズをする翔平に目を丸くしていると、流石に恥ずかしかったのか翔平は髪をかきながら、解説をした。
    「あー、前にセンパイが食べてた時、たまにしんどそうな顔してたっすよね。
     胡椒が苦手なんじゃないっすか?」
    「そう……だけど……」
    「やっぱ、そうっすよね。
     俺も俺なりに、なんでだったのか考えて……今回のは、胡椒とチリを控えめにして、生姜とか山椒をきかせて和風な感じに寄せたらいいんじゃねぇか?って考えたんすよ」
    「そ、そんな……前のも十分すぎるくらい美味しくって……嫌だとか思ったわけじゃないんだよ」
    「わかってるっすよ、それくらい」
     向かいに座った翔平は、昴流に向かって微笑んだ。
    「でも、どうせなら100%美味しかったって思ってもらいてぇっすよ。
     センパイは俺の客第一号なんすから」
     なんでもないことのようにそう言われ、昴流は胸がいっぱいになってしまった。
     何かもっと気の利いた言葉を、
     今の気持ちにふさわしい言葉を伝えたいのに、口から出てきたのはとてもありふれた一言だった。
    「……ありがとう。
     嬉しいよ、すごく」
     さっきからずっと、見返りのない愛情を与えられ、胸の中が暖かい。
     自分の言葉の続きをまつ翔平に向かって、昴流は伝えるべきか悩んでいたことを口にした。
    「翔平くんといると、新しい刺激っていうのかな。
     いままでの僕では想像できなかったようなことを知れて……すごく、楽しいんだ」
    「そうっすか?
     別に大したことじゃねぇっすよ」
     昴流が何を指しているのか、いまいちピンと来なかったが一つ思いついたことがある。
    「センパイ、バイクでニケツってしたことあるっすか?」
    「な、ないよ!!
     っていうか、バイク自体あまり見たことがないし……」
    「んじゃ、決まりっすね。
     今度俺の愛車の後ろに乗って、センパイが知らないようなとこに連れて行ってやるっすよ」
     あっさりと提案された内容に昴流は一瞬固まってしまった。
    (……いいの、かな。
     そんなこと)
     考えただけでドキドキする。
    「あれ、いやっすか?」
    「ううん!違うんだ、その」
     一歩踏み出すのは怖かったが、それでもやっぱり踏み出さずにいられなかった。
    「行きたい、な。
     翔平くんと一緒に」
     口に出してみるとあっけなかったが、未だにその余韻にドキドキしていた。
    「じゃ、空いてる日Dチャするっす」
     さらりと言う翔平に昴流は一つ大きく頷いたのだった。
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