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    かのたろ

    @kanotaro_g

    練習とか落書きとか
    主にゼルダ関係

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    かのたろ

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    わからせリレーの二人のまさかまさかのスピンオフ2

    さんにん「…で?いつ出ていくんだ?」
    置いたグラスが鈍い音をたて、中の麦酒が少しこぼれそうになった。
    ここはハテノ村の宿屋「トンプー亭」。辺境の村にしては設備も充実していて中も広く食事ができるテーブルがいくつか置かれている。二階のテラス席からの眺めは格別だが、常連客が毎日の様に居座っているので、今夜の席はこっちだった。
    「えー?分かんないよぉ。だって、荷造り大変そうだし」
    空のジョッキをふらふらさせながら、すでに顔を真っ赤にしているリィレが言った。
    「ツキミ―!もう一杯!」
    「こっちはお前の家に運ぶ荷物の準備、もう出来てんだから」
    「何それ、はやっ!
     戻らない”かもしれない”なんだから、明日戻ってくるかもしれないでしょ!」
    「まだ出てすらないだろ」
    そう言ってラッセがテーブルの香りキノコ炒めに手を伸ばす。
    「ねー、何なの!?あの二人!
     好き同士ならさっさとくっついちゃえっての!振り回されるこっちの身になってほしいわ」
    リィレも串焼き肉を一本掴んだ。
    「それは同感だ」
    頭の中にさっきの光景が蘇る。ゼルダがリンクにぶつけた愛の物理攻撃は、まさかの全体攻撃だったためその衝撃は2人にも及んでいた。
    「そりゃ自分には高嶺の花なのは分かってたさ。
     あの人は奇麗なだけじゃなく、まるで亡国の姫君のような儚さも持ち合わせてて、自分なんかが触れていい存在じゃない、遠くから見ていればそれでいいって思ってた。
     でも、いきなりあんな姿で飛び出してくれば…そりゃ、ああ言うでしょ!」
    「ラッセにしては頑張った」
    「お前が大胆すぎるんだよ!」
    「あの人みたいにぶちゅーってやっちゃえばよかったのに」
    「…僕はまだ死にたくない」
    一瞬、鬼神のようなリンクの姿が浮かび、ラッセは小さく身震いする。
    「盛り上がてってるね。はい、どうぞ」
    トンプー亭の看板娘のツキミがリィレの前になみなみ注がれたジョッキを置いて、代わりに空いた皿とグラスを器用にまとめて持ちあげた。
    「ありがとぉー」
    軽く微笑みながら「ごゆっくり」と残し、カウンターに戻っていく。その後ろ姿をぼんやり眺めながらリィレは「みんな、キレイね…」と呟いた。
    ラッセはグラスを傾け少しぬるくなった麦酒を流し込む。
    その時軽やかなベルの音と共に入口のドアが開いた。
    「いらっしゃ…いませー…」
    営業スマイルで出迎えたツキミの顔が一瞬固まる。
    入口には、虫取り網を担いだ大柄な青年が立っていた。
    「あーマンサクさん、こっちですこっち」
    ラッセが手を挙げると、それを確認したマンサクが小さく頷き、カウンターのツキミにウィンク…みたいな何かを送ってからテーブルにやってきた。
    「お疲れさまです。今日もハイラル平原ですか?あ、ツキミさーんこれと同じの一つお願いします」
    「ああ。でも今日は散々だ。目標の半分も採れなかった」
    虫取り網と、小脇に抱えていたカサコソ音をたてている大きな袋を床に置いてマンサクは小さく溜息をついた。
    マンサクは遠征をする際に双子馬宿を利用する事が多く、ラッセとリィレとは軽く面識があった。
    何でも今は愛する人のために相当な数のバッタを集めるというチャレンジに挑戦中で、正直その意味は全く分からないが、純粋に何かに打ち込んでいる姿にラッセは好感を持っていたし、リィレは荒くれたトレジャーハンター達とは違って、まるで自分の事を眼中にしないマンサクの存在は気楽に話せる数少ない相手となっていた。
    「で、どうした?」
    テーブルに『トンプー亭で飲んでます。ラッセ・リィレ』と書いてあるメモを置いて、お手拭きで顔を拭く。
    「あー、ちょっと色々あって。二人とも、まあ失恋というか。あれ?ツキミさんいないのかな…」
    「…そうか、それは辛いな。二人ともモテそうな若者なのにな」
    モテそう、という言葉にリィレがピクリと反応する。
    「だったらどうしてあの人は相手にしてくれなかったのよぉ、マンサク!」
    状況が分からないマンサクはきょとんとしたまま視線をラッセに向ける。ラッセはざっくりと今日の一連の出来事を伝えた。
    腕組みをしたまま話を聞き終えたマンサクは、一言「…バカだな」と呟いた。
    「ちょっとぉ何それ!」
    マンサクはテーブルの脇に置いてあったペンを取り、先ほどのメモ用紙を裏返してサラサラと滑らせる。
    そこには『恋』『変』『愛』という図形が書かれていた。「これははるか東の国の文字だ」と説明されたがラッセもリィレも見たことは無かった。
    「どれも似ているが、左から、恋心、変化、愛情を表している」
    マンサクは一番左の『恋』を〇で囲んだ。
    「自身に生まれる『恋心』には、人それぞれ様々な形がある。自分の中に秘めているうちはそれでいいが、誰かに伝える時はそのまま押しつけてはダメだ」
    次に真ん中の『変』を囲む。
    「相手のことを考え、相手に合った形に『変えなければ』決して伝わらない。
     リィレ、君のとった行動は独りよがりではなかったか?」
    「う…」
     今思い返してみると、いくら頭に血が上ったとはいえ、大胆というよりは何も考えていない勢いだけの振る舞いに思える。何だか急に恥ずかしくなって、持っていた串を皿の上に置いた。
    「お互いの恋心を相手の事を想いながら丁寧に磨き上げた時、パズルの様に初めて一つに組み合わさって」
    最後に『愛』を〇で囲んで、そっとペンを置いた。
    「愛に変わるんだ」
    ぽかんと、ラッセとリィレは再び腕組みをして目を閉じるマンサクの顔を見つめた。
    「なあに、それに気づけたのならもう大丈夫だ。今日の気持ちは大切に心にしまっておいて、次は少しだけ相手に歩み寄ればいい。きっと、上手くいく」
    「さっすがマンサクさん!勉強になります!」
    「君も同じだぞ?」
    テーブルのあげバナナに手を伸ばしながらマンサクが「ふっ」と笑った。ラッセも照れくさそうに頭をかく。
    「さて、今日はとことん付き合おう。二人ともまだまだいけるんだろ?」
    「もちろん!おっかしーなぁ、注文したのに全然来ない…。すみませーん」

    トンプー亭の夜は更けていく。
    だが、注文された品物がマンサクの前に届けれるのは、もう少し時間がかかりそうだった。
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