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    先日ツイートしたかわいそうな死に戻り半サギョの出だしを軽ーく清書したのでよろしければ…

    #半サギョ

    「先輩、来月の2日はどれくらいまでご実家で過ごされます?」

    サギョウはポチポチとスマホの予定表を操作しながら自分を抱き枕のように抱える半田に問いかける
    来たる7月2日は自身の恋人であるこの男、半田桃の誕生日なのだ
    付き合って初めての誕生日、先日の自分の誕生日を盛大に祝ってくれた恋人に、同じクオリティまでとはいかずともお返しがしたいのだ

    むじむじとサギョウのつむじをいじくっていた半田はサギョウの問いかけに一瞬またたきをした後、パァっと表情を明るくした

    「う、うむ!おかあさんが折角ならとケーキを用意してくれるらしくてな!いつも日付を越えたあたりの午前時間に食べる予定だ。朝出勤したら退勤後に予定はない」
    「…なら、その時間は僕が貰っちゃってもいいかんじですか?」

    彼の価値観でなにより一等大事なお母さんは日中活動できない
    だからきっとお祝いできる時間にめいっぱいお祝いするんだろう
    それで、僕のカッコイイ彼氏はそれ以外できちんと僕との時間をとってくれる。できた彼氏だ

    「あのな、それなんだが…」
    「?……」

    ?なにやら歯切れの悪い返事を返され、どうしたのかと首をかしげる
    おかあさんとのお祝いがあるなら、半田は残りの時間を恋人にあてないような甲斐性なしではないはずだが…

    いやまてよ…


    「もしかして、ロナルドさんの事務所に行って自分が誕生日だからセロリトラップにかかれー!なんて、やるつもりないでしょうね!?」

    半田にはもう一人優先順位の高い人間がいた!
    退治人ロナルドへの嫌がらせに日夜心血を注ぎ、金も手間もかけて情熱を注ぎ好んでサギョウも巻き込むのが半田桃だ
    まあ、誕生日に恋人と一緒にすることがそれでいいなら別に
    …イヤ納得はいかないが、半田が望むなら…

    「ち、違うぞサギョウ!なぜわざわざ誕生日にロナルドなんぞの顔を見なければならない!」
    「ロナルドさんの顔面を見るのはアンタ365日毎日自室で見てるでしょうよ…」
    「そうではなくて!!___

    __だな、おかあさんが、せっかくなら彼氏さんもご一緒にケーキを、と…」

    「…え、いいんですか?ご家族の団欒でしょう?」
    「俺の恋人なら、家族同然だと…お前が嫌でなければ、だが…」
    「嫌なわけないでしょう!先輩が大好きな家族で、先輩のことを一番大切に思ってる人たちに恋人として認められるってのが…面映ゆいくらいで」
    「無理してないか?」
    「無理なんてしません!」

    「なら、早速おかあさんに了承の返事を送ろう!少し待っていてくれ」
    「あ、先輩!」
    「ん?どうした、サギョウ」

    最愛の母に電話をするために立ち上がった半田の服の裾をひく
    待ってくれ最初の質問に答えてくれなきゃ困るんだ

    「退勤後の時間は、僕にくれるんですよね?」
    「勿論だ!サギョウに二人きりで祝ってもらえるのはとても嬉しいぞ!」

    月のような金色の瞳がこれから起こる喜びに期待してキラキラと輝いている
    もう何十回と迎えた誕生日というイベントを、家族が、恋人が共にあってくれるという
    半田は既に幸せで胸がいっぱいなのだ

    「なら、そのケーキのときと、二人のとき、二回分二倍でお祝いさせていただきますね」

    サギョウもまた、幸せだった
    この人ならきっと何をしても喜んでくれるけれど、どうせならとびきり喜んでくれることがしたい
    初心で清純で潔癖で、有能でイケメンでとても強くて
    だけど嫉妬深くて独占欲が強くて愛が重い、奇行に走る馬鹿な変人な恋人

    今どき恋愛映画でもやらないくらいベタなのがいいかな?
    それとも恋人としてちょっとステップアップするような、そんなサプライズもいいかもしれない




    幸せに

    時間は等速に進むと、疑うことなく信じていた二人だった









    そんな会話を交わして数日たったあるときのこと

    「もし、そこのお方…もしやあなたはダンピールでしょうか…?」

    出勤前の半田を呼び止めたのは見知らぬ人相の、瘦せた人間の男だった
    男は『半吸血鬼研究団体カーマイン』に所属する研究員だという

    「ダンピールのもつ超常的な力を、より深く探求するために私たちに力を貸してはいただけませんか?」
    「…すまないが、私は既に吸血鬼研究センターでの提供も行っていますので。お断りさせてください」

    名刺だけ渡してニコニコしている男は一見そこらの訪問販売くらいの怪しさにしか見えない
    だがまぁ半田にはなんの旨味もないし、聞いたこともない団体にわざわざ協力する謂れもない
    普段の非常識なそぶりは見せず、普通に断った

    「そうでしたか、いや、突然申し訳ありませんでした。では私はこれで」

    断られたというのに嫌なそぶり一つ見せず、男はパっと名刺を引っ込めて去って言った
    なんだったんだ?とは思ったが、それより半田はその日の仕事やセロリトラップ、可愛い年下の恋人が誕生日に何をしてくれるかの方が重要で、不審者ともいいきれない見知らぬ人間のことなど職場につく頃にはすっぱり忘れてしまった









    半田が姿を消したのはその数日後のことだった



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