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    2r8Co

    @2r8Co

    せあです。
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    2r8Co

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    やまみつ(中編)
    片思いやまととお馬鹿になっちゃったみつきの話、の続き。
    後編に続く!ていってたけど全然進まなくて嫌になったので途中ですがあげました。
    今更ですが注意↓
    ※名前のあるモブ女子が出ます
    ※みつきキャラ崩壊気味
    あまり読み返していないのでミス・矛盾あるかと思います。許せる人だけどうぞ。

    フラワーパニック!!(中編)「一度整理させてもらっていい?」
     自他共に認める小鳥遊事務所の出来る男はそう言うと、数秒の間こめかみを抑えてから「つまり」と口を開いた。
    「大和くんが、十日ほど前にクランクアップの祝いに共演者……『chips』の雪平さんに室内で育てられる花の栽培キットを貰ったので自室でお世話をしていた」
    「そうです」
     俺が頷く。
    「ところが、雪平さんがそのキットを購入した店から連絡があり、彼女が購入したものの中に、輸入物の、ちょっとアブナイ種類が混在していた可能性があると言われた。……パニックになった彼女はモモくんに相談した」
    「ちょうど番組で一緒で、撮影終わりに話してたところだったから、それで」
     モモさんが頷く。
    「ひとまず花を贈った人に連絡をしたら、他の人たちはまだ花が咲いていない中、唯一、大和くんの花だけが開花していた」
    「今朝、ですよね。グループチャットに写真が送られてきて……」
     ソウが控えめに答える。
    「それで、その花が食べられるものだと聞いた三月くんが、手作りケーキの飾りに使用……その花びらごとケーキを食べてしまった」
     しんと静まり返ったリビングへ、万理さんの声が響く。
    「……そしてその花は、蜜を吸ったり花びらを食べることで錯乱や幻覚——催淫作用を招く花だった、と」
    「大和さん、オレのケーキ食べないの? あんたのために焼いたんだから食べてよ……ほら、あーん♡」
     しんだ目で頭を抱える俺とモモさん、終始汗が止まる様子のない万理さん、そして恥ずかしそうに俯くソウという地獄の空気の中で、ミツがお構いなしにケーキを刺したフォークを向けてくる。煮詰まる地獄に響く甘い声。琥珀に浮かぶハートマークは見間違いではなかった。
    「ミツ……嬉しいけど、お兄さん今それどころじゃなくて……」
    「なんで……? 大和さん、オレのケーキ、嫌い……?」
     うりゅ、と滲む涙。上目遣いの瞳。痛む良心と恋心。我慢のできない俺。
    「ッッッ嫌いなわけないだろっ! ミツのケーキなんて胸焼けしてたって食えるよ!!!」
    「大和落ち着いて! そこ花も乗ってるところだから!」
     ミツからの「あーん♡」に耐えられずに口を開こうとする俺を、モモさんが慌てて止める。ソウと万理さんが来るまで、すでに三回はこのやりとりをしていた。金魚のように口をぱくぱくとさせながら「ミツ、ごめん……」と小さく謝る俺に、何もわかっていないミツは「なんで?」「食べてよぉ」「大和さん……」と傍らで囁き続ける。右腕にミツの両腕が絡みついていて、鼓動は小動物並みの速さを刻む。こんな拷問初めて……。
    「見たところ、確かに催淫……ぽいかな? うん……むしろこう……惚れ薬みたいなところもあるけど……」
    「大和と引き離すと普通なんですよ! 俺のことも、仕事のこともちゃんと理解してるし、けろっとしてるんですけど、大和のことを話題に出すと駄目で……」
     こそこそと万理さんとモモさんが話す隣で、意を決したようにソウが「三月さん!」と声をかけた。
    「よかったらそのケーキ、僕が戴いてもいいですか? あ、花は乗っていないところで……」
    「おう、いいぜ!」
     ソウの呼びかけに反応したミツは俺の腕をあっさりと離すと、普段のように軽く応じ、別に分けておいたケーキ皿を差し出す。
    「洋酒のケーキだから壮五にも食べさせたかったんだ!」
    「ありがとうございます。いただきます……あ、ほんのり洋酒の香りで美味しい……」
    「だろ?」
    「はい! これ、大和さんも好きな味ですね!」
     あ、と思うと同時にミツの表情がとける。明るく元気なグループのムードメーカーから、切ない恋に悩む顔つきへ。
    「そうなんだよ。せっかくオレが愛情たっぷり込めて作ったのに、この人一口も食べてくんないの……なぁ、大和さん……?」
    「うっまじやめて。ほんとやめて。人の手にのの字書かないで……まじであの……一生椅子から立てない……」
    「大和……」
     モモさんの哀れみの視線が突き刺さる。せめてもの救いは、イチを含む年下組が不在であること。そして、過去にミツを除くこのメンツで飲み会をしたことがあり、酒に酔った俺がうっかりとミツへの思いを彼らに吐露していたことだった。
     これが本当に救いかはわからないけど。
    「どうする? とりあえずこの状況、動画に収めておこうか」
    「流出するとトラブルになる恐れがあるものをマネージャーが率先して保存するのはどうかと……あ、でも大和さんは三月さんが好きなわけだし、三月さんがいつ元に戻るかわからないなら思い出として残しておくのも必要か……?」
    「ソウ、三秒で意見を覆さないで」
    「大丈夫! 面白いところはモモちゃんがもう動画に撮ったから!」
    「それ絶対相方にだけは見せないでくださいよ?!」
    「大和さん、ねぇ~ちゅーしよ?」
    「あーはいはい、ちゅーね、ちゅー……ちゅう??!!??!?! なっ。ミツ、おまえ、えっ?!」
     隣でタコのように唇を尖らせて、ネズミのようにチュウチュウと鳴くミツ。ずれた眼鏡をかけ直すと、ドキドキと胸を高鳴らせながら聞き返す。
    「し、していいの?」
    「いいわけないよ!」
    「落ち着いて大和くん」
    「錯乱状態で得た合意は正当な合意と言えるんでしょうか」
    「もーーー無理たすけて俺はどうすればいいんだよ」
     それなりの間、秘めていた思いだった。伝えられなくてもいい、傍にいられるだけでいいと堪えてきた。それが、ここに来て。こんなわけのわからない花の作用で。
     隣を見れば、ミツがあどけない表情でこちらを見上げている。目が合って、呟かれるのは「下から見上げる大和さん、かっこいい」なんて頭のネジが緩まっている声。
    「かっこいい大和さん、だいすき」
     すり、と二の腕に頬を擦り付けてミツが言う。
     ああ、いやだ。知ってしまった。和泉三月からの「好き」の音を。
    「……ひとまず、今夜と明日について考えようか」
     目の前の状況から目を逸らすように絞り出された万理さんの声に、俺たちは漸く現実に向き合うことにした。


     様々な危険に考慮した結果、今夜はミツと万理さんが二人で事務所に泊ること(俺と同じ寮内にいるとミツが何をするかわからないから)、明日の仕事も極力俺とミツは別行動を取ること(同じ局内で個々の仕事があるため行きは一緒だが、局内では出くわさないように気をつける)、紡マネージャーやほかのメンバーにはぎりぎりまで知らせないこと(あいつらが帰ってくるまでに解決したとしても、最悪、何も伝えないこと)が決められた。
    「モモくん、雪平さんはどこまで知ってるのかな」
    「三月が誤って花を食べちゃって体調が悪そうだ、とだけ。解毒剤とか治療法を教えてもらうために、花を買った店についても聞いてます」
    「向こうの事務所の人には相談してる?」
    「言ってないと思います。というか、俺が口止めをしてます。どう転んでも、小鳥遊さんたちはきっと大ゴトにしたくないだろうと思って」
    「ありがとう、モモくん」
     ふわ、と万理さんが微笑んだ。モモさんの瞳に、ミツと同じようなハートマークが浮かぶ。
    「バンさん……♡」
     助けてもらっている手前、ひとの寮を浮気現場にしないでくださいとは言えなかった。もしもモモさんがこの状況をあの人に漏らすことがあったら、そのときはこっちも言うこと言ってやる、とだけ心に誓う。
    「お店のこと、詳しく教えてくれる? 俺が直接やり取りするよ」
    「わかりました。ラビチャに送っておきます」
    「僕も何かサポートを……」
     そわそわと申し出るソウに、俺は「いいよ、いつも通りで」と返す。でも、と返ってくる前に続けた。
    「てか、いつも通りにしてて。ミツがこんな様子だから、俺も調子狂いそう……ってか狂ってるから。ソウだけでも普段通りにしてくれてると、それだけでお兄さん大助かり」
    「! はいっ」
     ただせさえ、とんでもない面倒事に巻き込んでしまったのだ。これ以上心配をかけるわけにはいかない。気にしいのソウには、特に。
     力強く頷いて「普段通り、普段通り」と繰り返すソウは既に普段以上に意気込んでいる。まあでも、そんな不器用そうなところがソウのかわいいところで「イデデデデ!」
     突然、耳の穴がこれでもかと広げられた。耳朶に走る激痛に「何?!」と隣を見れば、膨れっ面のミツがこちらを睨んでいる。
    「……大和さんの浮気者」
    「うっ」
     心臓いってぇ……。

     ミツの嫉妬という銃弾に撃たれた俺に、「お互いの為に明日はなるべく会わないでいようね」と万理さんが申し訳なさそうに言った。
     


     



     朝からVTR撮りを数本、その後本日一本目のバラエティ収録を終えると、時刻は午後十四時を迎えようとしていた。番組内で試食した、MCであるモモさんイチオシのパンがまだ残っていないかとうっかりスタッフに聞いてしまいそうだ。
     ドラマの撮影は終了したが、今度は最終回前の番宣に追われている。最終回放送の当日にはジャックと称して、朝の情報番組から夕方のニュースまで一日局にいることになる。数日後のスケジュールにこっそりため息をついた。
     その頃には流石にミツのことも解決しているといいけど。
     ——今朝、万理さんと一緒に俺を迎えに来たミツはまさに無双だった。
    「大和さんおはよ! へへ、今日もかっこいいな」「一緒に寝られなくて寂しかったけど、夢に大和さん出て来たよ」「夢の中まで会いに来てくれたんだよな? ありがとう♡」「そうだ、着くまで手繋いでてもいい……?」
     筋張っていて女の子の手とは程遠いけど、それでも俺よりは小さな手。送迎車の中でその手を握り、運転席に向かって「マジでこのことはイチとユキさんには言わないでください」と懇願した俺に、ハンドルを握る万理さんは「俺は大和くんの味方だから」と心強く答えてくれた。その数瞬後には「BGM変えようか? 丁度Re:valeのアルバムがあるよ」なんて言っていたけど(何が丁度だったんだ)。
     疲労と空腹を紛らわせるように眼を閉じれば、ミツの笑みが浮かぶ。この数年で飽きるほどに見てきたはずの笑顔は、まだまだ知らない色を潜めていて。カメラの前で誘う視線とは別に、ミツが俺を見てくる瞳は生々しい艶やかさを潜めていて、正直、ここまで手を出さずに大人しく過ごしたことを褒めて欲しい。昨夜のミツを事務所に泊まらせたのは自分からしても正しい判断だったと、車内で繋いでいた手の感触を思い出しながら頷く。恋人のように指先を絡めていたなど、正気に戻ったミツが知ったらどうなるのだろう。
    「大和さん」
    「ああ、雪平ちゃんお疲れ」
     声に反応して顔を上げると、雪平ちゃんはほっとしたように小さく笑みを浮かべた。VTR撮りはずっと一人だったが、今のバラエティと、午後の収録は彼女と一緒だ。
    「あの」
    「ん?」
     雪平ちゃんの表情が強張る。小さく潜めたソプラノボイスが「……三月さんの体調、どうですか?」と恐る恐る訊ねて来た。
    「あー……」
     そうか、彼女にはミツが誤って花を食べたことは伝えていたんだっけ。
    「平気だよ。今日も普通に仕事に来てる」
    「本当ですか? 実はさっき楽屋を見かけたんです! それなら私、ご挨拶と謝罪に……!」
    「いいいい行かなくていい! 本当に大丈夫だから! それにほら、元はミツが花なんて食ったのが悪いんだし!」
     ぱっと勢いづいた雪平ちゃんを慌てて止める。この表情がくるくる変わる感じととりあえず走り出してしまう真っすぐさ、流石駆け出しアイドルのセンターだ。
     とはいえ、ミツの前で雪平ちゃんが俺の名前を出したとき、今のあいつがどんな態度を見せるかわからない。「本当に大丈夫(むしろ行かないでくれ〜)」と繰り返すと、雪平ちゃんはしょんぼりとした様子で頷いた。
    「気にしなくていいからさ、次に仕事で会ったときには普通に挨拶してやって? ミツも、自分の馬鹿な行動でいつまでも君を困らせたくはないだろうから」
    「っ、はい……! 大和さんにもご迷惑をお掛けして、本当に、本当にすみませんでした……」
    「いいって。俺にも、もう謝んないで。あ、お昼まだでしょ? 楽屋戻ろう」
     一時間もすれば次の収録だ。彼女とはまだ一緒の現場がいくつもある。お互い気持ちよく仕事ができるようにと声をかけることは昔から多かったが、こうしてメンバー外にも気を遣っていると、自分もそこそこアイドルをやってきたものだと感じる。業界で言えば芸歴はまだまだ浅い方だが、なんというか、感慨深いものだ。
    「大和さん!」
     ひとりで感傷に浸っていると、後ろから声をかけられる。
    「もしよかったら、今度……!」
     雪平ちゃんが何かを言いかけたときだった。マネージャーがいないために、自分で持っていたままだったスマホが尻ポケットでぶるぶると震える。
    「っと、ごめん待ってね……うっ」
     画面を見れば、万理さんからの着信だった。これは、何か、ある。たぶん、ミツのことで。
     嫌な予感がサーっと駆け抜けていくのをぐっと堪え、「ごめんね、俺ちょっと先に戻るから! 午後もよろしく!」と雪平ちゃんに声をかけると、そのまま振り返ることなくスタジオを出た。



    「あっ、……お疲れ様、です」
     あっという間に見えなくなった大和の背中に、雪平楓は届くはずのない小さな声を投げた。胸の上で握りしめていた拳が、力を失ってだらりと下がる。
    「雪平ちゃん、お疲れ!」
    「! お、お疲れ様です!」
     にぱ! と笑って手を挙げるモモに楓は再び緊張しながらも、「さっきの収録よかったよー! 楽しかった!」という言葉に嬉しそうに頷いた。
    「大和は? もう行った?」
    「あ、はい。電話か来たみたいで、慌てて」
    「そっか。……ね、一応聞いておこうと思ったんだけど」
    「はい」
    「……花のこと、故意ではないんだよね?」
    「! 違います! それは本当に、何も知らなくて!」
     青ざめた顔で必死に否定する楓に、モモはまた「だよね!」と明るく弾けるように笑う。
     ああ、自分は本当に、一歩間違えればここでもう生きてはいけないことを犯したのだ。泣き出しそうな気持を抱え、それでも、楓は言葉を続ける。きっと、この事実だけはモモくらいにしか告げられない。
    「……でも、どの花を大和さんに渡すかだけは、決めていたんです」
    「え?」
    「撮影中、どんな花が好きかって話題になって。……大和さん、オレンジ色の元気な花が好きだって、言ってたから」
     ただ、喜ぶ顔が見たかっただけだ。撮影が終わっても親しくできたら、それは、とても素敵なことだけど。そうじゃなくとも、せめて、彼がいちばん喜ぶ花を贈れたらと。そう思っただけだった。
    「だめですね。こんなこと考えてたから、そんなんじゃアイドルなんて出来ないぞーって芸能の神様が喝を入れてくれたのかもしれないです」
    「……雪平ちゃん」
    「はい?」
    「今度、若手の俳優とかダンサー集めるからおいで! アイドルは流石に呼べないけど、筋の通ってる子たち揃えちゃう!」
    「え、いや、それは……」
     私の話聞いてました? と慌てる楓に、モモがぱっちりと片目を瞑る。誰にも文句は言わせない、王者のウインクだ。
    「自分がハッピーじゃなきゃ、誰かをハッピーになんてできないんだよ? アイドルだって、幸せ掴んでいいんだから!」
    「! はいっ、よろしくお願いします!」
     不安と自責で枯渇していた少女の胸に、真白な花が咲く。
     
     さあ、次は二人の番だよ。
     幸せを掴んで、どうか、美しい花が咲きますように。
     
     素直になれずに二の足を踏んで、妙な運命に巻き込まれた後輩たちを思いながらモモはこっそりと笑った。

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    2r8Co

    DONEウィスマナの学パロ小説です。

    5/26インテにて頒布予定の、うぶたさん(@ 3CinuO)との学パロウィスマナ合同本の小説パートの全文になります(実際の本では一部削っての収録になります)(なのでこちらも叩き台の全文といった感じです)

    ※全員が学生または教師という設定。
    ※リンウイ本編に沿うような話です
    ※恋愛要素薄めですがウィスマナです
    学パロウィスマナ【邂逅の庭】 ◆プロローグ

    「今日は転校生がいる。――入れ」
     担任のヴェイルの声に、教卓側の扉が開く。生徒たちが少しだけざわめくのを、ウィストは窓の外を眺めながら聞いてた。どんよりとした雪雲に覆われた空はいつ見ても同じだ。雪がちらつくのも。
    「寮に住むことになるから、寮生は良くしてやってくれ。席は空いてるところに好きなように……教材がまだ揃ってないから、なるべく見せてもらえよ。じゃ、昨日の続きから」
     教科書を開くように、と合図がかかってウィストはようやく前を向いた。そうだ、転校生。頭の片隅で聞いていた話題を今さら思い出したが、すでにどこかの席へ紛れてしまったようで見当たらない。
     ……まあいいか、そのうち何処かで見かけるだろうし。教科書とノートを開いてペンを手に取りながら、ウィストは再び窓の外へと目を向けた。
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