バルサーとクレス君の風邪の話太陽光に照らされたほんの僅かな温もりも、然し直ぐに吹き荒ぶ木枯らしに苛まれ少しばかり冷えた外気が吹き込む木造のとある昼下がり。薄らと陽を通す窓際を見遣り、また遮光カーテンを閉め忘れたのか、とぼんやり霞む視界が瞬く。ほんの少し、室内に満ちる冷気が首筋を撫でる、その瞬間。……くしゅんっ。常よりも少しばかり冷気に過敏な身体を、もぞもぞと毛布に沈める。悪寒に震える気持ち悪さ、落ちる吐息が少しだけ重い。
昨日は、失血死だった。
レオの思い出の、ボロボロの小屋の裏側。衣服を濡らす雪からはせめて身を守ろうと頭を抱え、なんとか這いずった開かないハッチの上。僕と、あと一人。其奴が倒れ伏したら、僕はきちんと椅子で飛ばされていたのだろうか。焦る狩人も奴の持ち前の判断力の前では上手くダウンを取ることも出来なかったのだろう。身体から熱が抜け、徐々に意識が遠のいていく。少しずつ此方に近付いていた仲間に、最後の気力を振り絞り声を上げる。
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