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    naiharu1

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    naiharu1

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    鳥してーの恋バナ話。
    彼女たちは欠席してる。
    ホー冬+とこつゆ。

    遅効性思春期時折、ホークス事務所には特別なものがくる。それは手紙が主だが、たまに異国情緒溢れる土産物だったりもする。そしてそれを自身の机に認めた時、緩りと雰囲気を柔らかくする者が居る。
    新人SKの常闇と、その相棒である黒影だ。


    *


    差出人について、彼は苦楽を共にした同胞(はらから)だと簡潔に説明した。だが、勿論それだけではないと皆分かっている。それを敢えてつつき回さず見守っているだけだ。まあ、我らが所長はたまにからかっているが。そういうとこだからな、とは誰が言ったか。


    「ほい、常闇くん」
    「感謝する。ホークスの手を煩わすとは……」
    「んー、別に?君のかわいい彼女からの手紙を渡す役目を任されて恐悦至極、ってね」
    「な、……っ」


    あーぁ。
    一言多い。うちの所長は(わざとの場合が殆どだけど)ホントに一言多い。事実かもしれないが、仕事に私情を持ち込むことを良しとしたくない彼の真面目さは師匠と仰がれる彼が一番知ってるだろうに。だが、いつもの彼なら確かにそういった配慮も出来たろうが今日はタイミングが良いのか悪いのか。



    「あれ?違ったの」
    「ち、……が、わなくはないが」
    「ハハ、どっちなの」
    「ツユはフミカゲのカノジョ!」
    「黒影!!!」
    「合ってるじゃん」
    「っ、ともかく手紙感謝する。今後はホークスの手を煩わすことのないよう事務方に進言する」
    「えー?」
    「……まだ何か」
    「また持ってきたい」
    「……は??」
    「常闇くんと恋バナしてみたいなと」
    「……は!!?」



    そう、本日の所長は紆余曲折、拗らせつつあった轟冬美と無事に収まるところに収まった──つまりは恋人出来たての浮かれぽんちなのである。あちゃーと古株のSKたちは頭を抱えた。


    *


    常闇踏陰の彼女、蛙吹梅雨は普段の活動の場が殆ど洋上である。波動らと同じ職場に就職すると思われたが、自分が活かせる海難救助が主となるセルキーの事務所所属となった。そのため、主たる帰港先は決まっているが大半は洋上。そのため通信機器の扱いには慎重にならざる得ない。ならお手紙ねと彼女が提案したので常闇も乗ったのだ。あなたの字はとても素敵だから読むのが楽しみ、とケロケロ笑った彼女に心が温められた。そして決まり事が出来た。


    「なるほど。で、ラブレターは自宅バレの危惧から事務所(ウチ)に届くようになったと」
    「わざとその単語を使って楽しまないで頂きたいが」
    「ホントのことじゃん、特例措置だからね?あれ、じゃあ君が彼女に送る時は?」
    「郵便局の局留めだ。帰港した時にまとめて回収していくと聞いている」
    「それも用心しないとじゃない?居るんだよねそういうの漁りたがるの。事務所(ウチ)に送るのもそれ防ぐのもあるんでしょ?」
    「局留めは3つ程ある。月によって代わり、俺も届けられた文によって次の指定を知る」
    「……あら素晴らしいコンプライアンス」


    セルキーさんもなかなかやりよる、と真面目くさった顔でホークスはうんうんと話を聞いてから「馴れ初めは?」と急な舵取りを施した。これだからこの師のスピードは、と常闇は顬を人差し指で抑える。休憩時間中に終われるテンションだろうか。


    「え?言えないくらいはっちゃけちゃった?」
    「……何だそれは」
    「いやぁ、弟子が黒歴史しちゃったなら師匠としては慰めた方がと」
    「……至って普通だ」
    「卒業式に想い告げちゃった系?」
    「そこまで想像がつくならもういいだろう」
    「えー?」


    にこにこ。職務中に見せるニヤニヤと擬音がつく表情ではないことに一瞬面食らってからああ、なるほどホークスは今楽しんでいると常闇は理解した。それはおちょくったり煽ったりの愉しみというよりは、この会話をすること自体を楽しんでいると悟らせるものだ。(なるほど……ならば俺の次の台詞は決まっているな)と常闇は咳払い一つ。


    「俺ばかり聞かれるのは冷汗三斗。ここはホークスも語るべきかと」
    「ん?何を」
    「ご令嬢との馴れ初めだ」
    「……う、」
    「ほぉ。師ともあろう方がやらかしてしまったか」
    「ち、違うし」
    「ならば聞こう」


    その為に俺を引き止めたのだろう。
    と、言葉を投げればうずうずしている口元をそっと襟で隠してから「言ってもよか?」と幼子のように伺いを立ててきた。全く惚気けてみたいならそう言えばいい、という台詞を一旦飲み込んでからどうぞと手を差し出すジェスチャーで勧めた。


    *


    あれからホークスは『恋人のかわいいところを話す』、即ち惚気けをするということをいたく気に入った様で事ある毎に常闇に話し掛ける。それが赤裸々であっては困るとも思うが内容はなんともかわらしいものだ。ここで一例をあげる。


    「ね、ね、常闇くん」
    「何か」
    「やっぱ手汗って人間としてはどうしてもかくよね」
    「……何の話だ」
    「こないだ、手を繋いだんだよね。緊張してませんって顔はしといたんだけど手汗がどうしても」
    「それは普通では?余りに白々しくされても不安の素たりえるのではないか」
    「そ、そっかだよね……冬美ちゃんの手、冷とうて柔らこうて最高やった」
    「それは僥倖」


    それから、ご飯作ってもらったやらあーんしてもらったやらフライトデートしたやら。恥ずかしそうに、しかしそれを上回る喜びに溢れて報告してくる師に「順調なのは結構だが、進捗報告は不要だ」と一応窘めはしたがそれでもそのような話を次々と事ある毎にホークスがしてもいいと思える程に世が平らかに、それでいて愛を抱える余裕が出来たのだと思考が回ると常闇としても全面拒否までは至れないのだ。


    「それでさ、こないだ俺ん家に招いた訳」
    「……そこから先は俺が聞いても大丈夫か師よ」
    「え?大丈夫だよ」
    「ホークス、『ヘタレ』ッテヤツカ?」
    「やめろ黒影」
    「そうなのかな」
    「アタッタ!」
    「ほら仕事柄俺の方がどうしても後から帰るってなるじゃない?で帰ったら「勝手にごめんね」とか言いつつお風呂の支度が出来てるのよ。風呂上がったらご飯とか全て支度終わってて」
    「……何なら風呂上がりの支度すら準備されている」
    「分かるぅ~」
    「気を抜くとお疲れ様などとすぐ頭を撫でられ」
    「子ども扱いだよね」
    「……御意」
    「ツユとフユミ、ニテルな!」
    「無意識甘やかし長女強いよね……」


    などと自身の彼女が『しっかり者の長女過ぎてなかなか甘やかさせてくれない』という共通の悩みまで発掘され盛り上がってしまった程だ。


    「やはり長女強いよね……」
    「そしてただの長女ではない。弟妹たちの面倒を率先して見ていた、まさに八面玲瓏」
    「ねーーそれを労ると」
    「姉だから当たり前だと取り合わぬ」
    「それ!それだよ~どう甘やかしてやろうか滅茶苦茶考えることになるんだよ」
    「だがうかうかしているとこちらが甘やかされてしまう」
    「ね……。はは、」
    「なんだ」
    「恋バナって、楽しいもんなんだねえ」


    したことなかったからさ、と眩しいものでも見るかのようなホークスの表情に常闇は胸の柔いところを握りつぶされそうになる。今度の蛙吹への手紙に『師と恋バナとやらをした』とうっかり書いて報告してしまいそうになるほどのもだった。


    *

    「はい、常闇くん今回のラブレター」
    「感謝する」
    「ふふ、ね、昼休みに恋バナしよう」
    「……、御意」
    「なーツクヨミくん、」
    「なんでしょう」
    「ホークスに無理に付き合わんでよかっちゃん」
    「そうばい」
    「酷くないです?」
    「確かに明るくない分野ではあるが……」
    「えッごめんそんな風に思ってた?パワハラ?」
    「いや、そうではなく」


    す、と一瞬地面に目線を落としてから顔をあげ常闇は言った。それはホークス事務所史上、伝説に残る一言であったとSKは語る。



    「師は……遅くきた思春期を謳歌している最中。故に今暫く共に見守って頂きたく……若輩者の自分が言うのも烏滸がましいが」


    これを聞き、師本人は固まりSKたちは暫く無言になってから笑いだした。大笑いである。常闇は至極真面目に発言したつもりなので頭上に?マークが飛び交っているのがまた彼らの笑いを誘った。だがそれら全ては嘲笑ではない。どこにでもあるありふれた日常の、『幸せ』を切り取ったところなのだ。


    「ツクヨミん方が年上やったっけ」
    「そうやったかも」
    「……俺が年上ですね七つも」
    「じゃあ拗らしぇた初恋しとー場合やなかばい」
    「う」


    こうして恋バナは、更新されていくのだ。平和と共に。


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    Replies from the creator

    naiharu1

    DOODLEふゆちゃんを中心に喧嘩するとやとホでしか取れない栄養素があるという勢いのみの話です。
    焚き付け燃やすのは得意です ※何もかもがご都合主義
    ※とや兄が普通に監獄でなくお外にいます、保護観察処分かな
    ※考えるな、感じて欲しいの勢いのみで読むのを推奨


    焚き付け燃やすのは得意です


    「燈矢兄、入るよ~」

    返事を待たずに入った。
    荼毘としての許されざることをして、本来なら監獄──それもタルタロス級のところへの収容されるのが妥当な燈矢兄はセントラル病院の一角に大人しく収まっている。一重に崩れかけた身体の維持にはここの設備でしか到底叶わないという一点に尽きる。個性に関しては使えないこともないらしいがそんなことをすれば身体はたちまちに崩れて終わり。その為抑制、といえば聞こえがいいが要は制御具を医療器具の中に取り込ませて繋がれている。そんな本人は「一度燃え朽ちてるし、荼毘として動いてたときから崩れっぱなしだったから変わんねえよ」「てか再生医療に貢献してんだから感謝されるもんだろ」と体は確かにベッドに横たえて病人だけど普通の態度のままある種のふてぶてしさのまま生きている。そう、生きている。私の兄は、生きている。
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