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    naiharu1

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    naiharu1

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    猛者インナーを愛用するおさむちゃ♀の前にむっつり紳士が現れる話()。

    #葦治

    自分になら、まあ、見せてもええけど発育が良い、と言われ育った。
    そりゃまあよく食べよく動いてよく寝たら育つもんも育つやろ。
    けど年頃──二次性徴を差し掛かるあたりからなんとなく違う意味を持ってこられるようになった。無遠慮な視線がよこされながら無視する。男子からはそれ、女子からは羨望か嫉妬。いや知らんねん自分の意志でこうやっとんのちゃうから。それを言うと余計ヒートアップしたらしく(今で言うところの炎上やな)、うんざりした。
    胸の育ち方が顕著で、それ故に無遠慮な視線も羨望と嫉妬な視線もなくならず、なんなら視線に飽き足らず触れようとする輩も現れた。女は隙がある方がかわええとか言いよるけど、そういう輩に触られそうになったら隙があるからいかんと言われるのはどういった了見なんやろなとこれにもうんざりした。
    極めつけにうんざりしたのは育ったそれでの物理的な弊害。まず、サイズがない。いや、あるけどない。着けるからにはかわええのがええなぁって思っとった。始めは。そらそやろこちとら花も恥じらう乙女やねんで?見えないところも自分の好きなかわええのん身につけときたいやんか、と勢いこんでショップに行くも、無い。いやある。自分のサイズで自分の好みのデザインがあれへん、とそういうだけの話や。芸術性と機能性はなかなかに折り合わんとはよう言ったもんや。……知らんけど。
    せやから二番目くらいに好きなデザインのんを買う。そして更にうんざりすんねん、華奢さに。いや、もたへんねんすーぐヘタりよる。支えきらんとばかりに弱ってもたん。インナーの!意義!!!アンタらが支えんと揺れんねん、揺れんの阻止しやらな痛いしまァた変に視線集めんのやってば。つらい。もううんざり通り越してきた。学生時代の長距離走の授業とかホント憂鬱やったし。なのでどんどん機能性を重視するのはしょうのないことやったと思う。レースで優しく包まれるよりもカップのホールド力の強さを。肩紐は細く嫋やかなラインよりも太くちぎれ無い強いラインを。布地面積は汗を考慮して少なめより多めを。花柄の飾り気よりも透けた時の言われのない目線にとどめを刺す黒を。こうして自分のつけるものはシンプルイズベストの質素で耐久性に優れた所謂猛者なインナーになっていったのである。


    *


    別にそうやって自分のインナーを片付けたタンスの彩りが黒、灰色、白になったことに別段ショックもなにもなかった。日常生活に支障をきたすことの方が余っ程めんどくさかった。運動部やったから汗でベチャベチャになってすぐ変えるとかもザラやしそもそもさっき言うたけど支え方がヤワやとそれだけでベストパフォーマンスが出せんかったりもある。そんなん自分が許せん。バレーはメシの次に愛しとって本気やからその時のベストを出せるようやないと。せやしシンプルイズベストベスト。まあ、そら、たまぁにはかわええんもあるけど、そんなんほぼほぼ一日だけのもんや。華奢やヤワなんは要らんねん。
    そうやっていたら突っかかってくんのがおる。その代表格が片割れのツムや。自分がこっちが着替えとんのにノックもせんと入るというデリカシーとマナーの欠片もないことしたクセに、(うわぁ)みたいな顔して去っていく上に「お前に可愛げ無い理由がよぉ分かった」とか着替え終わってからわざわざ言うてくるから喧嘩になった。当たり前やろそんな売り文句は高価買取したるわ。なんやねん、ちゅうか自分の為に着とるんちゃうわボケ。そのお気持ちを大層込めてそのヘラヘラした右頬にストレートを叩き込んだった。


    ……ちゅう若かりし頃を思わず述懐してしまうんは、今自分の城とも言える店の中で繰り広げられている低俗極まりない会話のせいやと思う。居酒屋ではあれへんけど酒をそこそこ出しとうことを後悔し始めている。うーん。古今東西酔っ払いどもはロクな話せぇへんとは決まっとるけども。やっぱりそのロクでもない話をしよる筆頭は片割れのツムで頭が痛い。成人──というか社会人になってそこそこ経ちよるっちゅうのに話のセンスがこうもクソガキレベルなのはどうなんや、所謂ツム担のムスビィファンそれでええんか?と明後日の心配をする。それとも同世代で酒を飲み、盛り上がるとそうなってしまうんやろうか。はぁ、と顬に指をあててぐり、と揉み込む。それで頭痛がよぉなる訳がもちろん無かった。


    「せやねん、可愛げ無いないオンナはなぁとことん可愛げ無いん」
    「ほー何処まで?」
    「ぜぇんぶやぜーんぶ!」
    「それお前の見る目が無いだけの話ちゃうの」
    「ちゃうわ!可愛げ無いのんがあかんねん。言動もやし、いざやろ思たら……ブラやらまで可愛げあれへんかってん」



    こないだ女の子に捨てられてもうてピリピリしよるからって歴代の彼女らの話をまあそんな風によーも……。それ以降もやれ「可愛げ無い」「そんなん見せられて萎えた」やら聞き捨てならんワードがぽんぽんと飛び出していく。自分らその時彼女の状態を慮ったんか?自分がヤリたいばっかで準備させたらへんかったんちゃうの。可愛げ無い、可愛げ無いてバカの一つ覚えで何度も何度も鬱陶しい。そこまで思考が回って目の下に青筋がひとつ。ぴきり。お前らのその脂下がった顔の方が萎えるんじゃボケェとカウンターに顔を叩きつけてやろうか、それともアイアンクローか?とこれ以上は営業妨害やし実力行使やと声の主の背後まで回った時に意外なところから声が上がった。


    「……?そうなんですか?大事なのは下着じゃなくてその下の中身でしょう」



    一瞬シン、と場が静まり返る。
    同調もせず、諌めるでもなく、淡々と放たれた自論に皆がついていけん状況が出来上がってる。発言の主は言いたいことを言った為かまたまくり、とおにぎりにかぶりつきおいしいと目元を緩ませた。この四角四面に返した眼鏡の常連──赤葦京治くんや──の一言に毒気が抜かれた面々がようやっと意識を取り戻したかのように彼にまくし立てよる。うるっさ。


    「いやお前、それはないわ」
    「そうですか?」
    「そーやろ!オバンみたいなんとかもう論外やん」
    「すぐ脱ぐじゃないですか」
    「え」
    「……脱ぎません?だから別に良いのでは」
    「……いや、そうやのうて、いや、そうか……??」
    「でしょう」



    実力行使を少し待ち、会話を見守ったってたけど(あ、ちょっと感心して損したやつかこれ)と思い直す。なんやねん中身が大事とか言いつつそれはすぐ脱ぐからインナーどうでもええやろっていう着眼点。ドヤ顔すな。ツムも大概やけどあかーしくんも酔うとるなさては。


    「てか、相手がその子であることが大事じゃないかと」
    「……はぁ?」
    「だから相手が」
    「聞こえてへんかった訳ちゃうわ!……ちょっと納得しかけたけどやっぱ合わん去ねトーキョーモンが」
    「なかなかない罵りですね」


    そうしてその話題は流れて今季のランキングやらトレーニングメニューやらの方に話題が移り、何か収まりよくなったけど何やねんこのアホ共と溜息が出た。あかーしくんが冷酒を頼んだから1:9の水割りにして出したろうと思う。勿論9が水。1も酒があるのは優しさやと思って欲しいわ。そして元凶のツムには料金三割増請求やなと決意した。そんなある晩のこと。



    *


    「なぁ、因みに」
    「なんです」
    「中身って性格のことか?」
    「いえ?下着の下にある中身のことです」
    「お前……むっつりスケベやったんか……予想通りやな」
    「成人男子は大体スケベでしょうが」
    「なるほど?まあ、そやな」
    (ツムって丸め込まれるタイプやったんか……アホやからか)


    *

    【遠い後日】


    これは敢えてである。
    意地と賭け。
    これで溜息吐いたり怪訝な顔をしたら即サヨナラや。そう思ってペロリとめくられた『中身』を覆うものを見せた。いつもと同じ、シンプルイズベストの愛用インナー。
    少し大きくなった目。……そんだけ。
    いやどっちなんその反応。


    「……大事なのは中身、なんやろ」
    「確かに。貴女だってことで今すげー興奮「いや言わんでええねん」


    ……顔に出なさ過ぎやろ。
    まあ、興奮するんやったらええけど。


    「……お残しは許しまへんで」
    「勿論。欠片も残さず、いただきます」
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    Replies from the creator

    naiharu1

    DOODLEふゆちゃんを中心に喧嘩するとやとホでしか取れない栄養素があるという勢いのみの話です。
    焚き付け燃やすのは得意です ※何もかもがご都合主義
    ※とや兄が普通に監獄でなくお外にいます、保護観察処分かな
    ※考えるな、感じて欲しいの勢いのみで読むのを推奨


    焚き付け燃やすのは得意です


    「燈矢兄、入るよ~」

    返事を待たずに入った。
    荼毘としての許されざることをして、本来なら監獄──それもタルタロス級のところへの収容されるのが妥当な燈矢兄はセントラル病院の一角に大人しく収まっている。一重に崩れかけた身体の維持にはここの設備でしか到底叶わないという一点に尽きる。個性に関しては使えないこともないらしいがそんなことをすれば身体はたちまちに崩れて終わり。その為抑制、といえば聞こえがいいが要は制御具を医療器具の中に取り込ませて繋がれている。そんな本人は「一度燃え朽ちてるし、荼毘として動いてたときから崩れっぱなしだったから変わんねえよ」「てか再生医療に貢献してんだから感謝されるもんだろ」と体は確かにベッドに横たえて病人だけど普通の態度のままある種のふてぶてしさのまま生きている。そう、生きている。私の兄は、生きている。
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