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    snbn⑥ Sonny side*


    「よぉ! よく来てくれたなサニー!」

    既にできあがっているミスタに勢いよく抱きつかれ、ほんのりと酒の香りが漂っている。
    勘弁してくれ...と思いつつ、昔ながらの友人を粗末にできるほど冷徹ではないため、大人しく抱きつかれた肩をポンポンと叩いてやる。


    「はいはい、サニーが困ってるからそこまでにしときなよ、ミスタ。 」


    助け舟を出してくれたのは、このシェアハウスで唯一の常識人であり、話が通じるシュウだった。
    彼が居なければ、ルクシムのメンバーを誰も制御できないはしないだろう。


    「前回ぶりだね、サニー!調子はどう? 今日は一段と盛り上がってるからいつもの倍ほど騒がしいけど、ゆっくりしてってよ」

    ミスタがしょぼくれながらサニーから離れると、今度はシュウに抱きついてご機嫌になっている。
    その姿は、普段のツンと澄ましている彼からは想像できないだろうが、酒を飲むと大体こうなるため、いつものように楽しく飲んでいるのだなと微笑ましくなる。


    「...助かった。はい、これ」

    「ん? あぁ、そんなのいいのに。でもありがとう」

    手土産で持ってきたワインを渡し、既にどう理由をつけて帰ろうかを考え始めていた。

    こういう場が嫌いなわけではないが、酒が入ると後に響く。
    あまり自分はアルコールに体制がないらしく、いつも軽めのものしか飲まないため、場の雰囲気に馴染めていない気もするのだ。


    ───それに。
    最近になって、何かと自分の周りをうろついている人物が、もしかしたら現れるのではないかと考えるだけで、胸の奥がざわついた。

    何故、癇に障るのかも分からない。

    何故、気になるのかも分からない。


    ただ、目が合えばうつむかれ、顔を逸らされることに、何故かイラついた。


    来るかも分からない相手だが、癪に障る相手になどプライベートで会いたくはない。

    気心知れた友人達に少しだけ付き合って、すぐに帰る。

    そう決めたはずだった。





    * * * * *






    ───ぼんやりとした視界で、目の前がゆらゆらと揺れている。

    恐らくは、自室のベッドでまどろんでいるのだろう。考えれば考えるほど瞼が重たくなり、意識が遠ざかっていく。


    しかし、何か特別なものを手に入れたという底知れない幸福感があって、自分は〝それ〟を決して逃がすものかと強く思っているようだった。
    今までにないほど...人生で一番といっていいほどの感覚に、自分でも驚いている。


    「.....................さい」


    近くに感じるぬくもりが、近づいては離れ、ぽつり、ぽつりと震えながら切なく何かを懇願している。

    ...何も心配することはないというのに。これから何もかも自分の手の中に閉じ込めるというのに。


    「ぼ、ぼくを、お嫁さんにしてください...」


    重たい瞼はとうとう閉じられ、夢の世界へと飛び立つ。

    最後にしっかりと聞こえたその声は...耳にほんのりと残ったぬくもりは、ゆっくりと遠くへ去っていった───



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