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    GOMI7188

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    #Sonnyban
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    #SS

    snbn⑤ Alban side*


    「...全く。隙があるから付け入られるんだぞ?」

    「待って。アルバーンは悪くないでしょ」


    遅れて合流したファルガーと浮奇には話さなければと、元窃盗仲間であるジェイがいきなりこの場に現れた事を告げた。

    三人は、せっかくの楽しい場を壊さぬようにと声のボリュームを極力下げ、ダイニングキッチンの壁際でコソコソと談義を始めた。

    現在ジェイは、ルカやシュウ達とボードゲームをしているので今が絶好のチャンスだと思い、二人を呼び寄せたのだ。


    「でもほんと、知らない男に肩組まれてる姿みて、驚いちゃった」

    「ああ。お前がああやって誰かに触れられることを許している姿には驚いた」

    「いや、まぁ...ジェイとは結構長い付き合いだったから...」


    今日は、美味しいご飯をと美味しいお酒が飲めると楽しみにしていたのに...

    少し遠くで、ミスタと肩を並べてボードゲームの進行を見守っていたサニーを切なげに眺めては、深い溜息をつく。
    お酒も入っているからか、頬がほんのり赤く、普段はしっかりと結ばれている口元も緩いように感じる。


    「ぷ... ちょっとアイビー、その視線はさすがに分かりやすすぎ」


    浮奇がからかうように笑いを堪えながら、誰を見ているのか当ててあげる、といった仕草で、目線の先にウィンクしてみせた。


    「...え!な、なにがっ?」

    「ふ...確かにな。まぁ、当の本人だけはまるで気づいていないようだが」


    一瞬、彼にまで気づかれているのかと焦ったが、予想していた通り、彼は熱に浮かされた視線などにはめっぽう鈍いらしかった。

    それでも、カァ~ッと顔が熱くなる感覚に焦り、まだひんやりとしたシャンパンが残っているグラスを頬に当てて、申し訳程度の熱を逃がす。


    ───すると、鋭い視線がアルバーンを射抜いた。


    「ジェイ...?」


    ジェイは、怒りとも取れる視線でアルバーンを捉え、目が合った途端、にんまりと笑ってみせた。


    「...?」


    不安が大きくなる───

    背中からは、じんわりと汗が伝ってきている。


    「......バーン? アルバーン?」


    ハッと我に返ると、心配そうな顔をしている浮奇が、僕の肩に手を置いていた。


    「...あっ、ごめん、なに?」

    「いや、サニーがまたバルコニーのほうに行っちゃったみたいだから、チャンスかなと思って」


    そう言われてみれば、ついさっきまでリビングルームにいたサニーの姿が消えていた。


    「お前との関係を強引に断ち切らせたのは俺達のようなものだし、ジェイのことは任せろ。見張っておく。お前はさっさとサニーと一言くらいは話してこい。楽しみにしてんただろ」


    言い方に多少癖があるが、ファルガ―は良心的でいいやつだ。なんやかんやで拾い猫を大事にしてくれる。(...って、僕は猫じゃないんだけどね?)

    まだ数ヵ月の短い付き合いではあるものの、二人なりの気遣いで背中を押してくれているんだろうなと感じられるくらい、アルバーンもファルガ―と浮奇には心を開いて信頼を置いている。


    「...うん! ありがとう!ちょっと行ってくる!」


    パタタ... と小走りして、バルコニーへ繋がる窓をそっと開く。


    多分、音の気配で誰かが来たことは察しているはず───

    少し風が吹いていて、暗闇でもキラキラと黄金色に輝く髪が、さらさら揺れていた。


    ドクドク、と音を立てて身体中の血液が逆流しているかのような感覚を覚える。

    何か───何か話しかけなければ。


    こちらに背を向けて、手すりに持たれかかっているサニーに、意を決してアルバーンは声を掛ける。


    「い...っ、いい夜ですね。 月が綺麗で...」



    ......


    .........


    …………


    ……………


    あれ。

    反応が────ない。


    確かに彼は、不愛想であまり表情の変化を感じられないほど感情を表に出すタイプではない。

    ───が、町ゆく人々から、色恋とは関係なく声を掛けられた際、真面目にしっかりと応答をしていたように見えた...はずなんだけどな。


    不穏な空気が流れ、その場で立ちすくむアルバーンだったが、サニーがゆらりとこちらを振り返ったため、ピンッと背筋を伸ばして唾を飲んだ。


    「───ねぇ」


    「...ぇ?」


    彼は、前髪をくしゃっとかき乱し、顔を半分手で覆っていた。


    「これ...ってさ...お前が、俺に何か、盛ったってこと...?」




    いきなり何を言われたのか理解が追い付かなかったが、サニーの様子が異常であることに気づく。

    彼は額に滴るほど汗をかいているし、先程ダイニングで垣間見た姿とはまるで別人のような青ざめた表情で、声も震えているようだった。

    そして、手すりにもたれかかっているのかと思っていたが、立っていることが困難であるかのように体がゆらゆらと揺れていた。


    それに... 僕が何か仕込んだんじゃないかって、疑ってる───?


    ズキンッ、と胸の奥が締め付けられたが、構うものか。

    明らかにいつもの彼ではなく、何か異常事態に見舞われている彼を助けなければと本能が警告している。


    「僕に心当たりはないけど、一先ずみんなに知らせて来ます。...あと、お水ももらってきますね…!」


    急いで回れ右をしたら、そこには先程まで一番恐れていた人物が目の前に仁王立ちで佇んでいた。


    「あーあ。つまんないの。もう見抜くとはね。 そうだよ、君のドリンクにすこーしだけ小細工させてもらったのは俺さ」


    先程と同じ、にんまりと笑うジェイは、サニーに向かって意気揚々と宣言した。



    Continue...
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    たまの

    SPOILERここにいるよああ、これが、俗にいう「桜にさらわれる」ってやつかぁ、なんて。あたしは思ってたんだ。

     この冬は色々あって。
     ……ホント、説明が難しいくらい色々あって。
     ケンが、たまに遠い目をするのは、今に始まったことじゃないんだけど。
     その原因を、事件を、あたしと亜己ちゃんは目の当たりにすることになって。
     あたしじゃどうすることも出来ないんだなって。大事な同僚なのに、苦しんでるの分かるのに、ただただ自分が無力で、痛いくらい。
     今でも、思い出すだけで苦味がこみ上げる。でも、ケンにとってはきっとそれ以上の苦しみだったから、あたしはもう、何も言えなかったんだ。
     亜己ちゃんが背中押してくれなかったら。
     あたしは押し黙ったまま、潰れてたかもしれない。ここにいるよって。あたしここにいるよって、やっと言葉に出来て。ゆるやかに、氷が溶けるみたいに、あたしたちは日常へ戻ってこれたけど。
     冬が終わりを告げて、春めいた日が続くようになって。
     それでも思い出したように、ひんやりとした気持ちがよみがえる時がある。
     静かに桜を見上げているケンの背中を目で追いながら、あたしの気持ちどんだけ届いたのかな、自信 1172