逃した魚は大きく、恋した悪魔は手強い【ディアルシ】 腕を引く仕草がたまらなく優しかった。一度や二度の話じゃない。俺に触るとき、彼はいつもそうだった。
だから、そういうことなんだろうと思った。
悪魔のくせして妙に誠実な男だから、まるで人間みたいに手順を踏もうとしているのだと。
そういうのは嫌いじゃないし、悪くない。
けれど、彼の出方を待たずにこちらから手を伸ばすことを決めたのは、自分の欲望に素直に従った結果だ。
彼はとびきり俺の好みだからさっさとモノにしたかった。そう言うと伝わりやすいだろうか?
いつも楽しそうで、けれどどこか寂しい影をはらむこの男を早く手に入れてしまいたかった。
だから、相変わらず優しく俺の腕を引こうとする手を掴み、じっと見つめてから体を寄せたわけだ。
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