ハロウィンだよ! ここは業平の自宅の一室。存在感を示しすぎる、見るからに高級そうな革張りのソファに道真は座っていた。
「そういえばお前は何の仮装もしていないな。せっかくのハロウィンだというのに」
ソファの後ろに立っていた業平が道真に声をかけた。そう、今日は十月三十一日、ハロウィンだった。
「ハロウィンなんて、そんなくだらないことに興味はありません」
「お前らしいな」
業平は声を立てて笑うと、持ち手の付いているやたら大きな紙袋を持ってソファに近づき、道真の隣に座った。そして、自覚のある人好きのする笑みを道真に向けながら、その紙袋を差し出した。
「だが、年に一回のイベントだ。一緒に楽しもうじゃないか」
「どのイベントも年に一回でしょう。……というか、なんですか。その紙袋」
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