ハウリング・アルファ アルファは、暗澹とした世界の不文律に馴染めなかった変わり者の一人だった。戦火に身を投じ、理不尽に身を沈め、血塗れた常識に幾度も馴染もうとした。しかしどれも上手くいかなかった。だからアルファは逃げた。
「この世界に生きるには、悲しいことが多すぎる」
アルファは、くすんだ包帯に包まれ寝台に横たわる起動されたばかりの強化人間を見下ろした。脳が焼き切れた強化人間の末路は例外なく人間としての尊厳を奪われ、ACを駆るためだけに最適化された部品に成り果てる。それだけなら、アルファは戦場から逃げるという選択肢を選ばなかった。コーラルを応用した強化技術の未成熟さと、人倫を顧みない無茶な手術は彼に多くの弊害をもたらした。特に、彼のような第四世代の起伏の乏しい情緒は多くの場合死に対する感情さえ希薄にさせたが、それは残酷にも機能以外に僅かに残されてしまったものだ。感情も奪われた生体部品であったなら、彼らにとってどれだけ幸福なことだったのだろうか。彼らを人間と呼ぶには、あまりにも憐れだった。
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