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    Dom/Subユニバースのメドショカ。
    世話焼き構いたがりDomメが構われたがりSwitchシとくっついてハッピーエンドになる話です。プレイはまだです。

    メドショカDom/Subユニバース「どうかした?」
     今日は休みにしよう。
     そう決めて、自営業の利点を生かして休日を合わせた日の夕食後。
     後片付けを終えたメドキはやけにそわそわしていて、落ち着かないまま風呂掃除まで終わらせて、もう夜だというのに部屋の掃除まで始めようとしたので流石に声をかけた。あれこれしてしまうのは不安なことがあるときの動きだ。部屋掃除まで始めるってことは相当の。
     とりあえずうろうろしてしまうメドキを座らせて、自分も隣に座った。なんとなくつけたテレビの音だけがBGMのように流れる。つい先日とはいえ長い友人期間を経て恋人同士になったのだから、何かあったなら相談なり愚痴なり話せばいいのに。ちょっと遠慮しいなところも好きだけど。
     メドキはこちらをちらと視線を送るとすぐさま逸らしてしまった。指先は落ち着きなく何度も組み直されている。口元がこわばっているから、何か話しづらいことがあるのだろう。わかりやすくも強情な恋人は、こちらが「いいよ」と合図しないとなかなか一歩が踏み出せないところがあった。
    「今日なんかあった?」
    「別にない、けど……」
    「うそ。なんか話したい事ある顔してる」
     ぐ、と息を詰めて体をこわばらせるメドキは、こちらが考えているより数段思いつめた様子だ。じりじりとした不安を感じながら、どこか冷静な自分が別れ話だろうかと考える。付き合ってみたけどやっぱり友達がいい、とか。
    「…………別れ話?」
    「ッ違う!!!」
     ハッとして「急に大声だしてごめん」と続ける様子に、別れ話じゃないならなんでここまで思い詰めているのかと不安が増す。何かのカミングアウトか。元カノの話とかされるのかな、とじんわり気持ちが沈んできたところで、顔をあげたメドキと目が合った。
    「……その、ダイナミクスの、ことなんだけど」

    ・・・

     ダイナミクス。第二性。乱暴にまとめれば、サドとマゾと、どっちもできるやつとそれ以外。この説明をすると怒られるってくらい乱暴なラベリングだけど、どっちもやったことがある側からすればこれで概ね合っているだろうと思っていた。少なくとも自分では、世に聞く繊細な信頼関係を感じたことはなかった。

     メドキの話はダイナミクスのカミングアウトだった。確かに第二性の話はプライベートな話題だが、メドキは自分がdomであることを話すのに随分と抵抗があるようだった。なんでも、欲求自体は一般的なdomのそれなのにプレイの度に"らしくない"と言われ続けてきたため、第二性の話題自体に身構えてしまうようになったそうだ。また恋人がお互いに同じ第二性だった場合、ダイナミクス性の欲求を満たすプレイが困難になる。そういった場合は恋人とは別でダイナミクス面でのプレイパートナーが必要となるが、メドキはこれに抵抗があったので俺の第二性を知るのが怖かったらしい。
    「ショーカがdomでも、俺以外と、そういうこと、しないでほしく、て……」
     無茶なお願いなのはわかってるんだけど、と。いつも相手の目をまっすぐ見て話すメドキが俺の顔を見られず、つっかえつっかえになりながらそう言ってくれたときのなんとも言えないむず痒さ。メドキからの"お願い"に感じた甘い痺れ。たぶんあの時にはもう切り替わっちゃってたんだと思う。
    「しないよ」
     考えるより先に返事をしていた。応えたいと、義務感なくすんなり思えたのは初めてかもしれない。しかし顔を上げたメドキの表情はまだ少し苦しそうで、俺の言葉を信じ切れていないことがありありとわかった。途端にぢくぢくと痛みはじめる胸を無視して、メドキが絶対に知りたいであろう言葉を続ける。
    「俺switchだから大丈夫だよ」
     たぶん今はもうsubになってる。そう続ければさっきまで怯えていた顔はぽかんとして、今度は嬉しくて信じられないって顔になる。メドキって本当わかりやすいよね。domのお願いに応えられたからか、それともメドキのお願いだったからなのか。俺の胸の痛みも治まり、代わりにじんわりと体温が上がった気がした。
    「メドキ以外としないよ」
     念押しするように言葉にすれば、こちらを見るメドキの視線が首筋をぴりぴりと痺れさせる。一体どこが"らしくない"のか。これは紛うことなきdomの視線だ。熱にあてられたように、自分の中のsub性がじわじわと強まるような錯覚さえ覚える。
    「その、俺、物足りないって言われてばっかだけど、頑張るから……」
    「大丈夫だよ、俺もそれ、言われまくってるから」
     俺はどっちもできるswitchだったから、その時の相手に合わせて切り替えることができた。ただしswitchは真性に比べると欲求が薄いので、要求されるプレイがエスカレートしていくと応えるのが難しくなる。そもそものマイペースな性格も相まってか、恋人としてもパートナーとしても関係が長続きしないことは当然だったのだろう。
     もっと虐めたい、もっと虐めてほしい。徐々に過激になるプレイへの要求に、俺はいつも応えきれなかった。domからはもっと必要としてほしいのにと詰られ、subからは求められているのか不安になると涙ながらに訴えられることもあった。今思えば、そこまで相手のことを好きではなかったのかもしれない。
    「もっと虐めたいとか虐められたいとかって、結構言われた」
     ぎくり、とメドキの体がこわばる。同じようなことを言われてきたのかもしれない。今までと同じ"好き"だったなら、きっと気付かなかっただろう。だから今までずっと、どっちの役でも応えきれなかったのか。
    「けど、正直ダイナミクスのことすっかり忘れてた」
    「な、なにそれ……」
    「俺、メドキだから好きなんだよ」
     そして今まで何度かsub役をやったことはあれど、自分に向けられる執着がこんなにも心地良いなんて知らなかった。
     混乱した様子のメドキをぎゅっと抱きしめる。コンプレックスになってしまうほど自分勝手なsubに傷つけられてきたと思うとちょっと切ない。自分は元恋人に嫉妬するタイプじゃないと思っていたのに。
    「メドキは俺がsubになれるから好きなの?」
     腕の中が僅かにこわばるのを感じて、抱きしめる力を少し強める。表情は見えないけど、俺の背中はひんやりしたままだ。
    「思ってたのと違ったなんて、俺だってもう言われたくない」
     メドキから言われたら泣くかも。冗談めかして言ったけど、少し想像したら結構辛くて考えるのをやめた。ちょっと鼻を啜ったら、おずおずと背中に腕が回される。ゆっくり背を撫でる暖かさが嬉しくて少し笑えた。
    「言わないよ、そんなこと……絶対言わない」
    「俺が全然subっぽくなくても?」
    「俺が好きなのはショーカだから」
     きっぱりとした口調で言い切るのを聞いて、ほっとしている自分に気付いた。ぐっと詰めていた息をゆっくりと吐き出すと、硬くなっていた肩からも力が抜けていく。俺にメドキの緊張が伝わってたように、これだけ密着していれば俺のことも当然相手にはわかるわけで。耳元でふふ、と緩んだ声がこぼれる。
    「二人して体ガチガチになってる」
    「メドキほどじゃない」
    「本当かなぁ」
     二人して抱きしめあったままくふくふと笑う。メドキの手が俺の髪を優しく梳いてくれる。ぎゅうと抱きしめてくれる。それが無性に嬉しくて。まだ確認の軽いプレイだってしていないのに、なんの根拠もないままもう絶対大丈夫だと思えた。
     それからしばらく後、無理やりくっついていたものだから二人して脚が痺れてしまって、ひーひー言いながらまた笑った。



    ---



     メドキにコンプレックスができた原因。それは加虐欲の薄さにあるらしい。
     一般的なdomならお仕置きの一環として痛みを与えることは珍しくなく、酷い加虐欲をもつ者なら鞭などを持ち出すこともある。程度に差異はあれど、domはsubに対する支配欲として"虐めたい"という欲求がある。
    「多少は個人差があるんだけど、俺は極端に薄いっていうか」
     構いたい、世話したいって欲求ばっかりなんだよね、とメドキは手元のマグカップに目を落とす。元々食後のコーヒーは俺の習慣だったけど、メドキに「夕食後はノンカフェインにしなさい」と言われて最近メーカーを変えたものだ。自分の家にメドキの痕跡が増えてきてちょっと嬉しいというのはまだ話してない。

     あの日ダイナミクスを打ち明けあってから、俺たちはまだプレイに関する話をしていなかった。メドキは恋人兼パートナー関係になれたことで随分安定したようで、なんとsubとしての欲求に先に焦れたのは俺の方だった。メドキと一緒にいないとなんとなく落ち着かず、愛されているとわかるのにじんわりと気分が沈む日が増えてきて。メドキに「我慢してない?」と聞かれてようやく、久しぶりの第二性としての欲求不満を自覚したのだった。
     もっと早く聞かなくてごめんと謝るメドキに家まで一緒に来てもらい、なんとなくだるい体をベッドに投げ出したのが2、3時間前だろうか。付き合う前からお互いの家に行き来していたからどこに何があるかは把握されているし、家主がぼんやりしていても特に問題もなく食事を済ませることができた。メドキは本人の言う通り世話好きだったようで、傍目で見てわかるくらい嬉しそうに俺の世話をしていた。
     おかげで体のだるさはだいぶ回復し、今はメドキの肩にもたれかかるようにして頭を預けながら話を聞いていた。
    「domが嫌がるプレイを要求してくるって、それ相手がダメだったんじゃないの」
    「そんな過激な要求じゃなかったんだよ。でも俺、苦手っていうよりいっそ忌避感があるくらいで……」
     ごく一般的な『お仕置き』としての軽いスパンキングすら苦手なのだとバツが悪そうに頬を掻く。それが原因でこれまでsubの被虐欲を満たせず、結果コンプレックスになってしまったということらしい。誰に対しても真面目に向き合えるのはメドキの良いところだが、これまでのパートナーの言葉で思いつめるほど好きだったのかと思うと少しモヤモヤした。
    「じゃあ痛い系は全部しない方向で」
    「俺は助かるけど……ショーカはいいの?」
    「俺も痛いの好きじゃないから」
     そう答えればあからさまにほっとした顔をした。苦手な部分だけでも一致するなんて運が良い。好みは尊重できても、苦手な部分は精神的な負担もかなり大きくなってしまう。一般的にもパートナー解消の最たる理由とされているところだ。
    「俺たち相性いいのかもね」
    「ッ……ショーカはプレイ好みとかある?」
    「俺?俺は……」
     ふと考えると、際立って好きといえる行動に思い当たるものがない。今まで不満を訴えられることはあっても、こちらから不満を感じたことは特になかった。だというのに、自分の好むプレイはdom側としてもsub側としてもピンとこない。
    「なんだろ……普通に、褒められるのとか好きだと思うけど」
    「あんまり思いつかない?」
    「うん」
    「苦手なコマンドとかある?」
    「別にない、と思う……」
     メドキにゆっくりと頭を撫でられながら、これまでの記憶を思い出して答えていく。
     食後で眠くなってきたのか、なんとなく瞼が重い。経験のあるコマンドとか伝えておいた方がいいのかな、とぼんやり思ったところで「あのさ、」と頭上から少し緊張した声がかかる。
    「明日一日もらってもいい?」
    「一日……?」
    「まだ調子悪そうだから。嫌じゃなければ、一日世話させてほしいんだけど……」
    「いいよ、もともと、メドキに声かけようと、思ってたし……」
     メドキの声に『断られるかも』という不安以外の緊張を感じたものの、それが一体何なのかはよくわからないまま了承した。意識がぼんやりして体に力が入らない。ずるずるとメドキに体重をかけてしまう。
    「ごめ、ねる……」
     いいよ、おやすみショーカ。
     優しい声を聞いた途端、俺の意識は心地良い眠りに落ちていった。

    ・・・

     完全に意識を手放し、俺の膝に頭を預けて眠るショーカをそっと撫でる。先ほどまでの様子から、たぶん本人は体調が悪いところに食後の眠気がきた、くらいに考えているのだろう。誰にみられるわけでもないのに、思わず口元を手で隠した。

     数日前、普段より気だるげな姿を見たときに、もしかして、と思わなかったわけではない。
     それでもパートナーとしてはまだ日が浅いし、本人からもプレイの話がないのでただ体調が悪いのかと思っていた。しかしいつにも増して一緒にいたがったり妙に寂しそうだったりと、さすがにパートナーになったばかりでも感付くような行動をとられると気になってしまう。思い切ってそっと聞いてみれば「これ、ダイナミクスのせいなの?」と、当の本人がまるで気付いていなかった。
     まだセーフワードどころかろくな話し合いすらできていないのに、こんなことならもっと早く確認すればよかった。自覚したせいか益々動きが鈍くなったショーカを家まで連れて行って、とにかく楽にさせようと着替えさせてベッドに寝かせた。成り行きとはいえ勝手に世話を焼いたことでわずかにdom性が満たされてしまい、若干罪悪感を感じていたところでショーカの顔色がすこしだけ良くなっていることに気付いたのだ。
     もしかして。そう思って俺がやるからと食事を作り、抱き起して食べさせて、食後のコーヒーを用意し、また抱き起して飲ませて。その頃には俺のdom性はめちゃくちゃに満たされていて、ショーカの顔色はすっかり良くなり、代わりに手足はふにゃふにゃに脱力してしまっていた。

     そんな状態になっておいて「好きなプレイがわからない」だって?冗談だろ。俺はもう自分を抑えるのに必死で、これくらいはいいだろって頭を撫でていたら益々ふにゃふにゃのとろとろになってしまって。
     コマンドを使ってなくてよかった。性的な快感を伴わなくてよかった。Sub Spaceに入ってしまったのかと思うくらいとろとろになったショーカをベッドに寝かせて、ゆっくりと距離をとってから深呼吸を繰り返す。
     明日絶対に、何より先にセーフワードを決めなくてはならない。一応明日は昼前に来るからと書き置きを残し、いつも通りに玄関の鍵を閉める。ドアがある安心感にようやく緊張の糸がきれて、その場にずるずると座り込んだ。

    「お前構われるのめちゃくちゃ好きなんじゃん……ッ」
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