Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    Suzu_gnsn_0720

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💚 🌱 🏦 💝
    POIPOI 1

    Suzu_gnsn_0720

    ☆quiet follow

    カーヴェちゃんお誕生日おめでとう!!!!
    末永く君の男と仲良くしてくれ!!!

    こちらはアルカヴェ♀シソデレラパロです。

    ご都合主義で捏造しまくっているので、何でもいい方のみお読みいただけますと幸いです。

    感想いただけると喜びます
    ▼Wavebox
    https://wavebox.me/wave/6p30s3s1r0mjm2ox/

    #アルカヴェ
    haikaveh
    #アルカヴェ♀

    ガラスの靴じゃなくて君が欲しい むかしむかしあるところに、美しい心と美貌を兼ね備えた女性がいました。彼女の名前はカーヴェ。早くに両親を亡くした彼女は父親の再婚相手だった継母と2人の義理の姉と暮らしていました。美しく、賢いカーヴェはいつだって妬みの対象で、3人に虐められながら過ごしていました。
    「カーヴェ!ここに埃があるからしっかり掃除してちょうだい!」
    「カーヴェ!洗濯が終わってないじゃない!服が無くなるから早くやりなさいよ!」
    「カーヴェ!なぜあなたがここにいるの!あなたは屋根裏に帰りなさい!」
     毎日毎日、扱き使われて働かされていましたが、カーヴェは文句も言わずに、せっせと仕事をしました。
     しかし、カーヴェにだって反発する心はあります。
    「ああ、今日も疲れた……。全く、父さんはなんだってあんな人と再婚なんかしたんだ……。」
     カーヴェは屋根裏、もとい自室に戻ると、疲れからベッドに突っ伏しました。すると、そこへ小鳥がやってきました。彼女の部屋にはたくさんの小動物が遊びにやってくるのです。
    「ピッピ(カーヴェ大丈夫……?)」
    「ピーッ(元気だして!)」
    「ああ、きみたち……お腹が減ってるのか……?」
     カーヴェは鳴いている小鳥に餌を用意しました。その様子を見て心配が通じてないことに気づいた小鳥は首を傾げました。
     
     そんな彼女がなぜ、継母と義理の姉達からの仕打ちに耐えているかというと、彼女には夢があったからです。
    「よし、綺麗に書けた。やっぱり僕には才能があるな。」
     カーヴェは建物の設計をすることが好きでした。勉強をすることも好きでした。同年代の女性は若いうちに嫁ぐことが普通で勉学をすることは一般的ではありませんでしたが、カーヴェは変わり者と言われるくらいにそれが好きでした。
    「勉学に関しては水準が参考にならないが、絵は上手いし、家事もできてしまう僕は非の打ち所がないと言っても過言ではないな。君たちもそう思う?」
    「ピヨッッ(カーヴェは天才よ!)」
    「ええ、そんなことない?」
     ただし、友人である小動物との意思疎通は苦手でした。
     

    ―――――――――――――― 

     そんなある日、街に大きなニュースが舞い込みました。王子様の花嫁探しをするために、王宮で舞踏会を開くというのです。街に住む年頃の娘たちはみんな大はしゃぎでした。
    「普段お顔を見せない王子様ってどんな人かしら。」
    「噂によるととてもハンサムな方らしいわ。」
    「舞踏会が待ちきれない!」
     街の娘たちはまだ見ぬ王子様に思いを馳せました。カーヴェはというと、そんなものに全く興味はありませんでした。顔も知らない、知り合いでも無い、身分だけが高い男にかまけている時間などなかったからです。しかし、継母と姉達の会話を聞いてその考えを改めました。
    「王子様が花嫁探しだなんて!あなた達いい機会よ。入れ込ませてしまえばこちらのものなのだから。」
    「そうね!ステータスとしても完璧だわ!」
    「はやくドレスを用意しなきゃ!」
    「(もし義姉さんのどちらかが王宮へ嫁いだら……そんなことが起きたらこの国は終わりじゃないか!ただでさえ僕の人生が最悪になったのに!)」
     義理の姉、2人のうちどちらかがいずれ国を仕切る人の結婚相手になることを考えると、とんでもありません。カーヴェは慌てて自室に戻りました。
     義姉2人が王家に嫁ぐのを阻止するために、舞踏会に行くことを決めましたが、カーヴェは舞踏会に行けるようなドレスを持っていませんでした。昔、母親が生きていた頃にねだって、大きくなったら着たいと買ってもらったドレスは持っていますが、王宮の舞踏会に行くには華やかさが足りません。手先の器用なカーヴェはドレスを直すことに決めましたが、義姉達と継母の世話と日々の家事に追われるため、時間がありません。カーヴェは肩を落としました。
     
     それから数日が経ち、舞踏会当日の朝になりましたが、ドレスは変わらない様子でトルソーにかかったままでした。カーヴェは大きくため息をつきました。このままでは、国が終わってしまう。なにせカーヴェの父親が騙されたほどの外面だけは良い家族なのです。王子様がどんな人かは分かりませんが、引っかかってしまう可能性がないとは言いきれないのでした。

     その様子を見ていたものたちがいました。カーヴェの友人の小動物たちです。彼らは心の優しいカーヴェのことが大好きでした。伝えたいことは全くと言ってもいいほど伝わりませんが、なんとかして日頃の感謝を伝えたいと思っていたのです。

     カーヴェが一仕事を終えて屋根裏部屋に戻ると、そこには華やかになったドレスが置いてありました。
    「え?!なんで??」
     カーヴェがトルソーに駆け寄ると、そこの傍らにはいつも話し相手になってくれる小鳥とネズミがいました。
    「君たちが……?」
    「ピピッ(カーヴェのためにがんばったのよ!)」
    「ありがとう……なんて言ったらいいか……そうだ!ご飯を持ってくるから待っててくれ!」
     小鳥たちは別にお腹が減っているからカーヴェの元にいるわけではないのですが、いつも食べ物を分けてくれるのでその様子を微笑ましく思いながら、遠ざかる後ろ姿を見つめました。

     時間はあっという間で、いよいよ出発の時間になりました。派手な衣装に身を包み、大袈裟な化粧をしている義姉達とは違い、カーヴェは軽いメイクを施しました。彼女の素の美しさが際立っています。しかし、そこで事件は起きました。
    「あんた何よその格好!まさか舞踏会に行こうだなんて思ってないわよね。」
    「ちょっと待って姉さんこれ私の布じゃない!」
    「こんなの似合ってないわ!あんたは灰でも被ってなさい!」
     着飾ったカーヴェを見た義理の姉2人は、彼女に罵声を浴びせ、ドレスに足した布を無惨にも引きちぎりました。そのままの勢いで家を後にする3人に、カーヴェは何も言えず、床に座り込みました。心配をした小動物が足元に集まってきます。
    「ピィ……(カーヴェ落ち込んでるの……?)」
     カーヴェは拳を握りしめて叫びました。
    「ほんっっっとになんなんだあの人達は!!ドレスが僕に似合ってない???似合わないわけがないだろう節穴か??こんなに美しいのに??魅力というものが一切分かってない残念な人たちだな!!美への感覚が本当に合わない。」
     カーヴェはとても強い心を持っていました。こんなことでへこたれるようではやっていけません。幸い引きちぎられたのは足されたレースと布だけだったので、母に買ってもらったドレスは無事だったことは幸いでした。
    「でも……着ていけるドレスが無くなったから舞踏会に行けなくなってしまった……。こ、このままじゃこの国が終わってしまう。」
     カーヴェは庭先に出て涙を流しました。可哀想なカーヴェ、心配した小動物達はカーヴェを慰めようと寄り添いました。
    「どうして、いつも僕がこんな目に……。」
     カーヴェの頬を伝った涙が、地面に落ちました。
     その時です。眩く優しい光が辺りを包みました。思わず手をかざしたカーヴェでしたが、その奥に小さな人影が現れるのが見えました。懸命に目を凝らすと、小さな人影はこちらへ歩いてきました。そして声が聞こえます。
    「可哀想に。泣いているのかしら。」
    「あなたは……?」
     少女のようでいて、しかしどこか貫禄のある少女はカーヴェに優しく微笑みました。
    「私は魔法使いよ。ナヒーダって呼んでちょうだい。」
    「ナ、ナヒーダさん?」
    「私はあなたを助けに来たの。」
    「僕を?」
     魔法使いの少女、ナヒーダは小さな歩幅でカーヴェの周りを歩きました。
    「あなたは舞踏会に行きたいのよね。」
    「く、国の危機なんです!」
    「私があなたに魔法をかけてあげるわ。まずは……そうね、馬車を用意しましょう。それからドレスね。あなたに似合うとっておきのものがいいわ。」
     ナヒーダはカーヴェへ小さな手をかざすと、近くにあったかぼちゃは立派な馬車へと変わり、ボロボロになってしまったドレスがたちまち美しいきらびやかなドレスに変わました。ぼさぼさだった髪型も共に綺麗に整えられました。
    「え?え??」
    「すべてお姫様には必要なものよ。」
    「お姫様だなんて……そんな、僕には似合わない。」
     カーヴェは目まぐるしく変わっていく光景に思わず視線を落としました。
    「あら、そんなことないわ。あなたはお姫様になれる。こんなに小動物もあなたの味方をしてるというのに。だいたいの物語のお姫様は動物に好かれるものよ。」
     そう言ってナヒーダはカーヴェのために集まっていた動物達にも魔法をかけました。たちまち立派な馬や御者に変化しました。
    「そう……なのか……?」
     カーヴェは近くにあった水溜まりをのぞき込みました。
    「これが……ぼく……?まるで夢みたいだ。」
     そこに映し出された姿に感嘆しました。
    「そう、これがあなたよ。さあ急いで馬車に乗るのよ。」
    「あ、ああ。」
     カーヴェは馬車に乗り込みました。今から急げば舞踏会には間に合うはずです。
    「それともう一つだけ!魔法は完全じゃないわ。12時の鐘がなり終わると消えてしまうの。だからそれまでにあなたは自分のやるべきことをしてちょうだい。」
    「わかった!本当にありがとう!」
     こうして、カーヴェを乗せた馬車は勢いよく駆け出していきました。
    「ふふ、あなたの幸せを願ってるわ。」

     
    ――――――――――――
     
     ところ変わって王宮。
     きらびやかな装飾がされているダンスフロアには、たくさんの娘たちが集まっていました。みんな今か今かと王子様の登場を待ちわびています。
    「あの方かしら……?」
    「あらやだ、あの方は伯爵よ!」
    「ドキドキが止まらないわ!」
     恋する乙女の顔をした娘たちは会話に花を咲かせながら胸を躍らせていました。
     
     そんな中、ダンスフロアが望めるバルコニーには、本を片手に持った青年が眉をひそめて座っていました。彼こそがこの国の王子、アルハイゼンなのです。傍らに控える従者が必死に彼を説得しようとしている最中でした。
    「騒々しい。」
    「アルハイゼン様、みんなあなたのために集まっているんですよ?。お顔くらい出されたらどうですか?」
    「興味無い。」
    「そんなこと言わず……、これはあなたのお祖母様の要望なんです。」
    「ふん。」
    「もういい歳なんですから。ささ、別に堂々と出ていかなくても結構ですから。もしかしたら気に入った子がいるかもしれないでしょう?」
     王子、アルハイゼンは噂通り整った顔立ちをした青年でした。しかし、今は機嫌の悪さが目立っています。それもそのはず、この舞踏会は彼の従者が勝手に企画したものでした。そもそもアルハイゼンは結婚になど興味はありません。学のない者と結婚するくらいなら、本と結婚したいと公言はせずとも思っているほどです。しかし、お祖母様からの要望と聞いて無視ができるような人間ではありません。アルハイゼンは仕方なく席を立ちました。
    「見るだけだ。」
    「そう来なくては!」
     アルハイゼンは本を片手に直接ダンスフロアに行くのではなく、裏から入ることを決めました。厄介事に巻き込まれたくない彼らしい選択です。一行はアルハイゼンに続いて部屋を後にしました。


    ――――――――――――
     
     その頃、カーヴェはお城に到着しました。初めて来る場所に不慣れながらも歩いていると、衛兵が大勢並んでいるドアを見つけました。きっとこの先が会場のはずです。中の様子を探るべく、そっとドアに手をかけると、突然、背後から声をかけられました。
    「君。」
    「は、はい!僕?!」
     とても身なりの良い青年でした。そして目鼻立ちも整っています。カーヴェは生まれて初めて異性に見蕩れました。しかし、彼女の思考は彼の持っている本が目についた瞬間、吸い込まれていきました。
    「『古代文明における言語と建築の関係』……?その本……」
    「読んだことがあるのか。」
    「えっと、はい。僕は建築が好きで……。その本を読んでいる人を僕以外に初めて見たから驚いた、んです。」
     仏頂面とも言える青年の瞳に光が宿るのが見えました。
    「君の意見が聞きたい。」
     青年、もといこの国の王子であるアルハイゼンはそう言うと、カーヴェの手をとり、中庭へエスコートしました。
     街の娘たちが、王子を待ちわびている中、当の本人はたった1人と議論を楽しんでいました。そして、時間は刻々と過ぎていきました。
    「君の視点は実に面白い。」
    「僕も、誰かと議論を交わすことがこんなに楽しいことだなんて知らなかった。」
     アルハイゼンにとって、この出会いは奇跡としか言いようがありませんでした。これほどまでに話が分かる人に出会ったことはありません。それに、彼女のふわりとした笑顔を見ると、心の奥が暖かくなり満たされるような気分になります。バルコニーから集まっている娘を見た時とは違い、彼女は特段と輝いて見えました。それは今までに感じたことの無い感情でした。
     2人は寄り添い合いながら話に花を咲かせました。
    「ところで君は王子の花嫁候補としてここに来たのか?」
     もっと彼女のことが知りたくて、そう質問するとカーヴェは突然引きつった顔で固まり、大きな声で叫びました。
    「うわああああ!!やってしまった……国の終わりだ……」
     時計を見ると時刻は間もなく、12時を迎える頃でした。ブツブツとなにかを呟いていますが、アルハイゼンには、それを理解することはできません。
    「その、別に結婚に興味はないんだ。するつもりもないけど……。けど、えっと、とある理由でここに来て……でももう時間が……。」
     カーヴェは慌てて立ち上がりました。カーヴェを逃したくないアルハイゼンはしっかりとカーヴェの手を握りました。
    「時間?まだ12時にすらなってないが。」
    「えっと……事情があって……。」
     その時です。夜中の12時を迎える鐘が鳴り響きました。魔法の解けてしまう時間です。
    「ごめんなさい。僕、帰らなきゃ。」
    「帰る?待て。まだ名前を、」
    「君と話すのはとても楽しかった!またどこかで!」
     タイミングを見計らって逃げ出すと、カーヴェはできる限りの全力で走りました。
    「待て!」
     背後から青年の呼ぶ声が聞こえます。名残惜しいですが、仕方ありません。
    「あ、」
     階段を駆け下りていると、片方の靴が脱げてしまいました。慌てて拾おうとするカーヴェですが、すぐ後ろで追っ手の声が聞こえます。彼から逃げ出しただけなのに、なぜこんなに大勢の人に追いかけられるのか、カーヴェは検討もつきませんでした。しかし、捕まってはなりません。みすぼらしい姿を見せるのは、カーヴェのプライドとして許さないからです。仕方がないので靴を諦めて逃げ去ることにしました。大慌てで外に待機している馬車に乗り込み、お城を王宮を後にします。間もなく12時を知らせる鐘が鳴りやみます。すると、徐々に魔法が解けていきました。美しかったドレスは、元の姿に戻り、馬車や御者や馬たちも、かぼちゃと小動物たちに戻りました。カーヴェはキラキラと消えていく光に手を伸ばしました。
    「まるで夢のような時間だったな。」
     道の端に避けると、追っ手が通り過ぎていくのが見えました。なんとか追っ手を撒くことができたようです。
    「はあ、僕はなんてダメなやつなんだ。結局王子様は誰を花嫁に選ぶんだろうか。義姉さんたちが選ばれなきゃそれでいいんだが……。朝になったら探りを入れる必要があるな。」
     ふと足元を見ると、ガラスの靴が残っていることに気づきました。
    「これ……消えないのか!夢が本当だった証拠だな!あれ、待てよ……僕、お城で片方落としたんだよな……まあいいか。」
     カーヴェは大きく伸びをして立ち上がりました。
    「帰ろう!」
     カーヴェの声に合わせて小動物達も帰路につきました。


    ――――――――――――

     翌朝、また街に大きなニュースが舞い込みました。昨日の舞踏会で王子様が気に入った娘がいるらしく、その娘を探しに家を回ってくるというのです。
    「昨日、王子様は顔をお見せにならなかったわね。」
    「でもしっかり私を見ていたという噂はあるわよ。」
    「本当に?!私だったらどうしようかしら!」
    「でも、どうやらその気に入った娘というのは靴を落として行ったらしいの。」
     朝食の準備をしていたカーヴェはそれを聞いて、コップを取り落としました。
    「ちょっとカーヴェ何してるの!」
    「早く掃除なさい!」
    「(靴を落とした娘を探してる……?じゃあまさか昨日僕が話していたあの男性が件の王子ということなのか……)」
     義姉達のわめく声が聞こえますが、カーヴェにとってそれは騒々しい虫の鳴き声同然です。必死に思考を巡らしました。
    「(つまり?あの王子が僕を見つけ出したら、僕は結婚することに……?そんなのごめんだ!僕には夢が……どうしよう!)」
    「なんなのよあの子。」
    「知らないわ。さっさと準備してしまいましょう。」
     義姉達は様子のおかしいカーヴェを一瞥して部屋を出ていきました。
    「でもこんなみすぼらしい格好をした僕に気づかないんじゃないか?そもそも靴で探すなら、僕以外でもきっと履ける人がいるだろう。よし、大丈夫だ。」
     カーヴェは自己完結をし、壊れたカップを拾いました。おめかしする必要はありません。王子様と結婚する気は無いからです。

     一方その頃、お城では従者たちが慌ただしくしていました。
    「あなた自ら行くんですか?」
    「どうせ街の娘たちは俺の顔を知らないんだ。彼女は俺と話した唯一の人だから、俺の顔を見れば分かるだろう。それに、昨日は逃げられたんだ。2度目は無い。」
     アルハイゼンは小さなガラスの靴をそっと握りました。従者達は彼のこんな姿を見たことはありません。しかし、彼が結婚に意欲的ならと、全力で女性を探す準備をしました。

     何件が回りましたが、アルハイゼンは娘の顔を見るなり靴は履かせず、次の家へ行きました。なかなか彼女と再会することはできません。
    「この街に住んでいないんじゃ……。」
    「いや、彼女はこの街に住んでいる。昨日議論をした時にここの近くの図書館にしか所蔵されていない本を読んだ話を聞いたんだ。近くの図書館にあると言っていたからな。」
    「そうですか……。」
     従者はみなヘトヘトです。
     ついに最後の家となってしいました。ここに住んでいなければ、見つからなかったことになります。従者の間に緊張が走りました。笛を鳴らし、一行が来たことを知らせます。
    「ようこそお越しくださいました。さあどうぞ中へ。」
     出迎えたのは母親らしき女性でした。手前には2人の娘がいます。従者は皆見蕩れるような美貌の持ち主である話を聞いていたので、ここも外れかと肩を落としそうになったその時でした。アルハイゼンが急に歩きだしたのです。その場にいる全員が彼の奇行に唖然としてると、彼は奥にいたみすぼらしい服を着た女性の前で立ち止まりました。
    「見つけた。」
    「はえ??」
     それは隠れるようにこちらを見ていたカーヴェでした。アルハイゼンはおもむろにカーヴェの手をとると、薬指にキスを落とし、言いました。
    「俺と結婚してほしい。」
     その場にいた何人かが叫び声を上げました。
    「ひ、人違いじゃない、ですか?」
    「人違いじゃない。俺には君が輝いて見える。」
    「な!!!」
     顔色ひとつ変えないアルハイゼンに、カーヴェは顔を上気させました。
    「け、結婚なんかお断りだ!僕には夢があって」
    「君の夢のバックアップはこちらに任せて欲しい。昨日も思ったが、君の才能は目を見張るものがある。見たところ……」
     アルハイゼンは周りを見渡し、カーヴェの服に目を落としました。
    「現状、君はいい扱いを受けていると思えない。俺だったら君の才能を潰すようなことはしない。約束をする。」
    「そ、んなこと言われたら……。」
    「頼む。共に来て欲しいんだ。」
     顔色を変えないというのは嘘でした。彼は今捨てられた犬のような表情をしています。流されやすいカーヴェのことです。そんな表情をされて、強気に断る事なんてできません。それに、カーヴェは正直に言ってアルハイゼンの顔の造形が好みでした。カーヴェの心のうちは既に決まったも同然でしたが、プライドが何となく許さなかったので、考える振りをしてから答えました。
    「仕方ない……お受けいたします。」
     従者一行からわあっと歓声が上がりました。それにより、カーヴェは熱烈なプロポーズを周囲に聞かれていたことに気づき、顔を真っ赤に染め上げました。アルハイゼンはと言うと、勝ち誇った笑みを浮かべています。すると、ガラスの靴を持った従者が駆け寄って来ました。確かめるべく念の為に履いて欲しいどのことだそうです。もちろん、ガラスの靴はカーヴェの足に合わせて作られたものですから、履けないはずがありません。靴はパズルのピースがピッタリ合うようにカーヴェの足にハマりました。カーヴェは恥ずかしそうにアルハイゼンへ目を向けると、彼も柔らかい笑みを浮かべてこちらを見ていました。それは、長らく重い腰をあげなかった王子の花嫁が決まった瞬間でした。


    ――――――――――――

     それからしばらくが経ち、2人の結婚式の日になりました。
     ウェディングドレスをまとい、舞踏会の日よりも美しく着飾られたカーヴェは、それはもう、すれ違った誰もが思わず見蕩れるような美しさでした。そして、王族の正装を身にまとったアルハイゼンも、普段よりもキリッとしていて、かっこよく見えます。カーヴェは少しだけ心配になりました。
    「本当に僕でよかったのか?」
    「なにが。」
    「他にも綺麗な娘さん達はたくさんいるし、僕はなんていうか変わっているから……。」
     アルハイゼンは大きく溜息をつきました。
    「俺は君のそういう部分に惹かれたんだ。俺は君とあの日に出逢えたことを嬉しく思っているよ。」
    「そ、そうか……。」
     アルハイゼンはカーヴェの腰に手を回して、引き寄せました。
    「カーヴェ、これがゴールではないよ。」
    「わ、分かってるさ。その、今日の君はいつもよりかっこよくて、その、どう接していいのか分からなくなる……。」
     カーヴェはもじもじしながら俯きました。
    「……随分可愛いことを言ってくれるな。少し気が早いんじゃないか。」
     アルハイゼンはカーヴェのこめかみにキスを落としました。
    「ば……!そんな意味で言ったんじゃない!!というか君!そんなキャラだったか?」
    「知らなかったのか?」
    「知らないよ!」
    「俺もかなり浮かれてるんだ。」
    「全く……。」
     口論と呼ぶには甘すぎる雰囲気が二人の間に流れました。
    「僕も、ちゃんと、その、好きだから……。」
    「なに?聞こえなかったな。もう一度だ。」
    「君のこと好きだって言ったんだよ!!」
    「俺は愛してるが。」
    「君ってやつは!!」
     部屋で待機していた従者は全員こう思いました。他に人がいることを忘れているんだろうなと。

     こうして2人は多くの人々に祝福され、結婚式を終えました。そして、友人を巻き込む喧嘩を度々繰り返しながら幸せに暮らしましたとさ。


    〜fin.〜
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺💒💒💖💖🌋
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works