俺リオ2 覚醒編俺は今、猛烈に悩んでいる事がある…。
スライム事件(?)から数日…。
できる範囲で頑張ろうとかもっと強くなろうとか色々考える所はあるはずなのに、そういう事を考えようとすると条件反射のようにリオセスリさんの顔を思い浮かべてしまうようになっていた…。
ここで誤解のないように断言しておくが、俺は未だかつて同性をかわいいと思ったり意識したことは1度もない。
ただまあ、かと言って異性と積極的にお付き合いしたいかと言われたらそうでも無いのだが…。
要は人付き合いが面倒なのである。
他人と分かりあって赦しあって共に生きていくという面倒さが俺には煩わしく感じられる。そもそもあまり他人に興味が無いのかもしれない。
そんな俺が何かある度に男の顔を思い出すというこの現象にどう名前をつけたらいいかわからないまま数日が経っていた。
当のリオセスリさんとは相変わらずではあるが、前よりは接する機会も増えた。向こうが気にかけて話しかけてくれている感じだ。なかなか馴染めない年下の新人を気にかけてくれるところをみると、どうやら本当に最初の印象とは異なり、面倒見の良い優しい性格のようだ。
とはいえ、戦闘やら素材集めやらで引っ張りだこの彼となかなかゆっくり会話することも無い。
このまま穏やかに時が過ぎてゆくように思えた。
そんな折。
ここしばらく現地調達しながら野宿する日々であったが、さすがにそれだけでは苦しくなってきた…とのことで一旦璃月の街で買い出しをする事になった。
必要物資の調達だけでなく久々の息抜きも兼ねるということで、ひとまず女性と男性にわかれて街を見て回ることに。
もちろん合流したあとの荷物持ちは我々男性陣の仕事だが。
という訳で、今、リオセスリさんの横に並んで璃月の隅の方にある長い階段を歩いている。
どんな話題にも通じている博識な彼だが、意外にもこの街に来たのは初めてらしくいつもよりテンションが上がっているようでほんのわずか、声が高い。
「噂に名高い璃月の茶葉を自らの手で購入出来る日が来るなんてな。後で頂くとしよう。あんたも一緒にどうだい?」
そう言って隣を歩く俺に顔だけ向けて笑いかけてきた。彼自身に関する話題を聞くのは初めてだったので知らなかったのだが、どうやらお茶が好きらしい。好物(?)を手に入れられて気持ちが緩んだのか、にこにこと屈託のない笑顔を浮かべている。さらに…、余程嬉しかったのか白い頬が少し上気している…。
かわいい…。 かわいいがすぎる…!かわいすぎてこれ以上直視出来ないっっ!
怖すぎて直視出来なかったあの頃とはまた違う理由で、これ以上顔を見続けてはいけない、俺の何かが崩壊してしまうと理性が判断し、咄嗟に、視線を下にずらした。
ずらしてしまった。
その瞬間ざあっと風が吹いた。
風に乗って一瞬ひらひらと宙を舞った彼の赤いネクタイは穏やかに元の位置に戻り…。
……って、戻ってなくない?……ちがう、もしかして、このネクタイ浮いてる?
……物凄いえげつない段差じゃない?!
というか、デカすぎじゃない?!
何がとは言わないが…。
………よく見たら全体的に凄くない?
俺は他人にあまり興味が無い。それゆえ、人と話す時誠意を示すために目を見て話そうと努力をするが、それ以外の他人を観察するための努力はしないのだ。
だから、今まで気がつかなかった…。とんでもないポテンシャルをもった人間がこの世に、というか俺の隣に今存在していることに…。
「のんびりしていたらもうすぐ待ち合わせの時間だな。遅れたらレディたちにどやされてしまう。走ろう!」
彼の呼び掛けにはっとした。
「そうですね…!」
そう言って走り始める。
まだ多少時間に余裕があるため、運動の得意では無い俺に速さを合わせてくれているのだろう。俺を追い抜くでもなく、真横に彼の姿がある。
見たかった訳では無いのだが、先程の流れで思わず凝視してしまう。
……走るたびに相当な弾力を持って横に揺れるそれは、ばいんばいんと幻聴が聞こえるようだった……。
かわいい顔に魅力溢れる身体。
それでいて優しく強く、たくましい心…、こんな人間がいていいのだろうか…。
目をつぶるたびに今日見た彼の全てを思い出す。
そして、もっと俺の知らない彼の全てを知りたくなった。この気持ちはもはや邪な領域に足を踏み出していると言っても過言ではなかった…。
さすがに本人には知られたくないな。というか、知られちゃいけないやつだな、これは。
明日からどうしよう。
俺の悩みはさらに深みにハマっていくのを自覚していた……。
to be continued