俺リオ3 エンジンかかってきた編相変わらず俺の心は深い悩みのただ中にある。
璃月での休暇後…。
俺は明らかに自分の身に異変を感じていた。
自分で言うのもなんだが、俺は小さい頃からさめていて周りの人間よりも大人びた言動をする方だったと思う。
が、今の自分はかなりおかしい。
例えば、
「昨夜は風が強くて木が揺れる音が大きくて寝不足なんじゃないかしら?寝不足はお肌に悪いのよ~」
だとか
「璃月の人間たちが働く姿もかわいくて見てるだけで胸がいっぱいになるのよ~」
だとか。
そんなたわいないことを仲間が話してるのを聞いただけで…。
揺れる?!胸?!
………リオセスリさんのおっぱい!!!!!おっぱい!!!!\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/ばるんばるん揺れてる!!!\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/
……俺の頭の中はこの調子だ…。殺して欲しい…。
こんなことを考えてる時。
小柄だが実際は俺より随分年上らしいシグウィンさんの横で彼女の個性的な言動に少し困ったように相槌をうってるリオセスリさんと目があい…。
本当に申し訳ありません!!!!!!!!そんな気持ちで見てる訳じゃないんです!!!!!!!
今すぐ気持ちを切り替えるので許してください!!!
と気持ちを新たにする、という日々だった…。
まだ引き返せる!
そう思っていた時期もあったが、ここで決定的な事件が起こる。
その日は冒険者ギルドからの依頼で様々な素材を集めることになった。俺が担当するのは、高所にある花。
いわゆるひとつの崖のぼりであるが、メンツ的に、女子やら、身体(隠語)の大きいリオセスリさんより、身軽な男性である俺が行った方が早いと思い自ら引き受けた。他の皆はそれぞれ近場でそれぞれの素材を集めている。崖の下の方にリオセスリさんの黒い髪が見え、内心動揺してしまうが、平静を保つよう努力する。
崖のぼりは、実はそんなに得意という訳でもないが特に苦手という訳でもなく、順調に規定数集まり、あとひとつでクエスト完了…というところで、何気なく下をみると心配そうにこっちを見上げているリオセスリさんに気がついた。
もしかして俺のことを気にしてくれている?
優しい!
けど、上から見ると胸元が見えそうでやばいつつつつつつっ!!!!
と馬鹿げたことをつい考えてしまい…。その瞬間体に衝撃が走り、足を踏み外してしまったことに気付く。
そのまま地面に落下…とはならず、運良く少し下に張り出していた岩の出っ張りに着地することが出来た。
ずるずると重力に従って出っ張りまで落ちただけなので特に身体を打ち付けることも無く大きな怪我もない…、と思ったところで足に違和感を感じた。
足を滑らせた時に挫いてしまったようだ。
はたと下を見ると、俺の異変に気がついたリオセスリさんがこちらに向かって来ようとしているところだった。
身体(隠語)が大きいから崖のぼりは苦手かもしれないとか勝手に思っててすみません!と謝りたくなる程パワフルに登ってくる彼の姿に、そんな場合では無いのだが惚れ惚れした。
しかし、あと少しで到着というところでスタミナが切れてきたのか動きが鈍る。何とか最後の力で強引に飛び移り…、ドサッと俺の真横に座り込んだ。
その一連の流れで……、
「うぅっ……、ぃっ、はぁぁっ……」
彼の口から熱のこもった熱い吐息が漏れるのをすぐそばで聞いてしまった…………。
えっ…。
思わず彼の顔を見てしまう。
黒髪が汗で額に張りついている…。急な運動による体温の上昇でほんのり頬が赤い。前にも思ったが、この人、やたら色白なんだよな。動いた後にその白い肌がうっすらと色づくのが妙に色気があって…。
崖のぼりは実際のところやや苦手だったのかもしれない(それでも常人よりはパワフルだったと思うが)疲労により青い瞳が少し潤んでいるようにも見えた。
そんな彼が苦しそうに胸を上下に揺らして息を整えている時の表情は、いつものあどけないかわいさとはまた違った、なんて言うんだ、これ?
そう、シンプルにえろい。えろすぎる。
「はぁ…っ…、歳はとりたくないな……」
乱れたシャツをゆっくり直しながらそう呟いた。その自嘲的な掠れた声が酷く蠱惑的にきこえた…。
「すみません!!!!心配かけてしまって!!!!!大丈夫です!!
失敗ばかりで本当に、恥ずかしいです…。もっと頑張ります!!!!!!!」
色々な気持ちがまじりあっているが…。
また迷惑かけてしまったんだ。
やっとのことでお礼を言う。
「…若い頃は俺も失敗ばかりだったよ。思うようにいかない日々に喘ぐ毎日だった。あんたを見てると昔の自分を思い出して懐かしくなるな。
…まぁ、今も失敗しないと断言できるかと言われたら嘘になるが」
とてもいいことを言ってくれているのだが…。
……喘ぐって…?!
確かにさっき喘いでましたよね?!
あんなの壁登る時の声じゃないですよね?!!むしろそんな時はあんな声出すんですか?!
見た目もさることながら、声もえろすぎですよね?!
未だ熱を帯び掠れた声色から発せられる色のついた単語にいちいち反応してしまう。違う、これは例えなのであり、別に卑猥な話をしているわけではないんだ!!!!
…その後、俺が抱いて降りてやろうか?などと冗談かどうか判別つかないことを言われたが、そんなことされると発狂しそうだったので、必死で自分で下まで降りた。
俺が抱いてやろうか(意訳)、って何?!
むしろ、抱きたいのはこっちだよ!
そう、俺が、抱きたい!!!!!!!!!!
何を考えているんだ、俺は…。大丈夫か…。
今の俺はもはや、クールキャラを気取っていたことすら怪しくなってきた…。
こういう人間見たことある。
そう、ギャルゲーやら乙女ゲーやらで無能な癖にラッキースケベ的展開に遭遇しまくる主人公だ!!!!!
何気に俺が1番苦手な人種になりかけていることに、どうしようも無い気持ちになった。
とりあえず、舞い上がりすぎて、彼に迷惑をかけないようにしたい…。
今宵も、俺の悩みは尽きない…。
あの時の、頬を赤らめつつ潤んだ瞳で俺を見つめながら悩ましい吐息を漏らす彼の乱れた姿(仮)が頭から離れない。
どうにかして…、欲しい…、本当に……。
to be continued