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    riri_ko09

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    riri_ko09

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    続き

    俺リオ7 Nothing but Everything編「この度はおふたりに折り入ってお願いがあります…!!私めにおふたりの貴重なお時間をください…っ!」
    スメールでの楽しい休暇(?)を経て、そろそろモラも尽きてきた頃…。
    突然、俺とリオセスリさんの2人揃って蛍さんに呼ばれ、土下座する勢いで懇願された。目にはうるうると涙がたまっている…ように見えるが嘘泣きだろうな、これは…。
    「…とりあえず話を聞こうか」
    いつも無茶なお願いばかりされているリオセスリさんはもはや悟りきった表情をしている。
    「さすが公爵さまっ!やさしい!男前っ!
    でも、今ここで話すより見てもらうほうが早いかな」
    蛍さんは一瞬にしてテキパキとした職人モードに切り替わり、どこからか茶色の壺を取り出した。

    …壺の中に吸い込まれてる?!
    俺たちが何か言うより早く、目の前の景色が変わる。


    そこは不思議な空間だった。
    だだっ広い草原。目の前に大きな建物。あまり俺には馴染みがないが、璃月の建築物っぽい?
    それ以外何もない。
    「まあ、入って入って!」
    着くが早いかすぐ建物に入るよう促される。

    「…これは!」
    びっくりした。
    何も無さにびっくりした。
    広い空間にものが何一つない。辛うじて階段があるがこの調子では2階にも何もなさそうだ。

    「これはだーーいぶ前にある人から貰った塵歌壺っていう便利アイテムなんだけどね…」

    塵歌壺…!
    蛍さんの説明を要約すると、ここはある仙人の力によって作られた特別な空間で、好きなように建築物やら家具やらを配置出来る夢のようなところらしい。
    世の中には凄いものがまだまだあるんだな。

    「…でも、何も無いんですね…、というか、そんな空間あるんならベッドとか置いてしまえば野宿しなくていいんじゃないんですか?宿屋もいらないし…」

    俺の冴えた鋭いツッコミに、

    「えへっ」
    「えへってなんだよ…!」
    蛍さん&パイモンのお決まりのやりとりが炸裂した。

    「……素材集めるのがめんど…、大変すぎて…。そろそろ本腰入れようかなーって思ってるところ。だからおふたりには、その…素材集めに協力して欲しくて…!!」

    「なるほど…わかりました…」
    こんな簡単に拠点が作れるならそっちの方が良くない?言いたいことは色々あるが、断る理由はなかったので承諾することにした。

    「ありがとうございますっ!!公爵さまは鉱石系を、〇〇さまは木材をお願いしますっ!どれぐらい必要か調べて伝えるから、しばらく好きなところでまってて。ここにあるものは全部好きにしていいから」
    「…まぁ、何も無いけどな…」
    パイモンのツッコミも相変わらず冴え渡っていた。

    「………了解した」
    リオセスリさんはどこか気もそぞろとというか、なんだかここに来てからずっとぼんやりしている。

    「…どうかしましたか?」
    蛍さんとパイモンが向こうへ行ってから、リオセスリさんにそっと聞いてみた。

    「…ん、あぁ、すまない。…先程から気になっているんだが、外で生き物の声が聞こえるのは、一体何なんだろうな?」

    …室内は防音なのか大きな音は聞こえないのだが、確かにかすかになにかの声がする。来た時は直ぐに建物に入るよう急かされたので気付かなかった。

    2人で外に出て、声のする方、建物の裏手側に回ってみると……。

    いるわいるわ、犬やら猫やら色とりどりの鳥やらヤギやら、よく見たら小さなカエルやトカゲもいる…!!!!
    皆思い思いに飛んだり跳ねたりの大運動会だった。物は何も無いが動物は完備されているんだな…。
    どこから連れてきたんだというようなよくわからない動物もいるが、カピバラやフラミンゴはめっちゃみたことあるな、これは俺の故郷産だな…。

    「声の出処はここですね…」
    確認するように、リオセスリさんの方を見ると…。腕組みしながら真剣な表情で動物たちをじっと見つめていた。
    「…これは俺が触っても良いものなんだろうな?」
    「大丈夫なんじゃないんですか?ここにあるものは好きにしていいって言ってましたし…」
    恐らく本物の動物を捕獲してここに連れてきた訳じゃなく仙術的な何かなんじゃないかな?だって本物だったらこんな飼い方出来ないって!

    黒い犬が1匹、こちらに気付いてしっぽを振りながらやってきた。リオセスリさんの足の下で止まる。
    「……お出迎え、感謝する」
    彼はそう言ってぎこちなく手を伸ばした。

    それからしばらくして…。

    「俺が怖くないのかい?ははっ、かわいいな…!」
    すっかり打ち解けたようで、かがみこんで犬を撫でよしよししている。

    「前にペットを飼おうかと考えたことがあったが、自宅の環境があまり良くなくてね、犬や猫が可哀そうすぎると思ってやめたんだ。
    こんな体験が出来るなんて。ありがたい。蛍ちゃんはああ言っていたが、俺にとっては最高のご褒美だ」

    ……っああぁあああ!!動物好きでしたか!!
    設定めっちゃ盛ってくるやん!!!!
    かわいいがてんこ盛りすぎるやん!!

    動物好きだし、動物にも好かれるタイプのようで犬やら猫やら鳥やらよくわからない動物やらが彼の周りにぞくぞく集まってきている。


    ここにあるもので俺の好きにしたいもの…。それは…。

    俺は立ったまま、今は俺より少し下にある彼の後ろ頭を眺めていた。

    髪の毛めっちゃもふもふだな…。両サイドのハネがケモミミみたいに見えるし…。
    命ノ星座は獄守犬だし、リオセスリさん本人の外見も犬っぽさあるよな…。性格まで犬っぽいかは…現段階では何とも言えないけど…。

    黒い犬の動きに合わせてリオセスリさんの髪も揺れる。目で追っていると何とも言えない気持ちになってくる。
    あぁ、この黒髪に顔を埋めて思いっきりくんかくんかしたいっ…!今日は良い天気だし、お日様の良い匂いがするだろう。その後、頭をよしよしして…って、めちゃくちゃキモいな、俺…。
    流石にキモすぎるので髪のことから離れよう!!えっと、違うこと、違うこと…と視線を落とし…。

    あの首に巻いてる黒いのって何なんだろうな。包帯?バンテージ?
    あれがまた犬っぽいというか、…首輪っぽいんだよな…。獄守犬らしさの演出だとしたら(違うだろうけれど)良いセンスしてる。

    ……でも俺的には首輪は赤がいいな……!彼の黒い髪と蒼い目にとても似合う。
    赤い首輪には、そう、ちょうど彼のコートの後ろについてるような取っ手付きの鎖がついていて…。
    俺はその取っ手を強く引っ張りながら…、

    『 散歩したい…』

    ……髪のキモさの比ではないトンデモエロ妄想を思わず口にしてしまい、ついに社会的に死んだと思ったが…。
    まさかの、リオセスリさんも全く同じセリフを同時に言っていてハモったことに驚愕した。

    「えっ?散歩したいんですか?!!」
    ばかみたいな質問をしてしまう。死にたい。

    「…今日は良い天気だし、この場所はこんなに広いんだ、この子らが気ままに歩くのに合わせてのんびり散歩するのも悪くないと思ってな」

    俺がさっき思ってたことと微妙に被っているようで全く被っていない!なんて健全なんだ!ほんとどうしようも無いことを考えてしまって、すみません!!!!!!

    でも、前にシグウィン先輩が言ってた通り、彼らは今までずっと日の当たらないところで暮らしてきたんだ。こうやって暖かい日差しの中大好きな動物に囲まれてゆっくり過ごせるというのは、彼にとってどれだけ至福なんだろう。
    この些細な時間が彼にもたらす幸せについて考えると、胸のあたりがきゅうっとして、泣きたくなるのも事実だった。

    穏やかな世界で幸せに笑っていて欲しいという気持ちも、めちゃくちゃにしてしまいたいという気持ちも、両方ある。


    などと考えていると、
    「…お待たせ!」
    蛍さんが素材リストを持ってきた。

    「………」
    なるべく表情に出さないよう努めているようだが、リオセスリさんが一瞬「正気か…」という顔をしたのを俺は見逃さなかった。
    ご褒美<労働量でしたか…。
    というか、彼がこんな表情するなんてよっぽどなんだな…。


    のんびり考えていた俺だったが、他人事ではなく…。リストを見た途端気が遠くなった。

    幸せにはまだまだ程遠いようだ…。

    To Be Continued













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