死ぬまでにしたいnのこと 前日譚『FBIを辞めたってほんと?!』
電話に出るなり、声の主は開口一番そう尋ねた。ストリートベンダーの列に並びつつ、赤井は小さく溜息を吐く。
「何だ藪から棒に……誰から聞いた」
『……とある情報筋ってとこ』
「どうせジョディだろ……ったく」
あ、バレた?と、まだ若い日本の名探偵が笑う。
黒ずくめの組織との戦いの頃から、ジョディは彼に対して驚くほど口が軽かった。
FBIを辞めると言った時も、辞表を出した時も、一番反対したのは彼女だ。
赤井が自分の意見など聞きもせずFBIを辞めると決めてしまったことを、誰かに愚痴りたかったのだろう。
列が進み自分の番が来て、赤井は店員にブラックコーヒーを注文する。
『赤井さんがFBIじゃないなんて、なんか変な感じ』
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