花の形の愛を吐く 暦の上では春とは言え、冬の気配をまだ色濃く残す冴えた空気の中、煌々と輝く月明かりに照らされ、おどろおどろしい廃病院の朽ちた中庭で一人口から薔薇を吐き続ける吸血鬼———。
シチュエーションだけなら耽美ロマン系のホラーだな。まあ、残念ながら吐いてる俺自身の見た目が褞袍着たハゲって時点で耽美とは程遠いんだが。
これが上の弟なら、さぞ絵になったろうに。
どれ、試しにちょっと想像してみるか。
眦から真珠のような涙を幾筋も流し、赤い唇から血よりもなお濃く深い紅の花弁を滴らせる、苦痛に歪んだ白皙の美貌。
煌々と冴える青白い月が、花を吐く苦しみに震えるビキニをまとったしなやかな背を浮かび上がらせ———……。
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