恋リア千ゲ6.5 (視聴者目線)平凡OLモブ美。恋愛遍歴はそこそこあれど毎度ダメ男に捕まる運のなさ。拗らせすぎて白馬の王子様の迎えを本気で待っている30歳。独身、現在彼氏募集…は、していない。しなくてもいいぐらいに他に夢中になれるものがあるからだ。
今彼女がハマっているのは週末深夜帯の恋愛リアリティショー。番組の始まる30分前から画面の前でスマホ片手に視聴準備を始め、オンエア中はずっとリアタイポストをし続けひとり悶えながら、たった30分にまとめあげられた若者たちの恋愛模様に一喜一憂するのが何よりもの楽しみだった。
特に推しが出ていたとかではないのだが友人の勧めで見始め、今ではすっかり『推し活』中だ。
推しの名前は【あさぎりゲン】。友人から『あんたのハマりそうな男が出てる』と言われ半信半疑で見始めた。名前の挙がった人物は特に顔が好みというわけではない。どちらかといえば顔面は完全に白菜みたいな頭の超絶美形くんに持ってかれている。喋りは軽薄、軽い口調、嘘か本当か分からない内容の薄い話っぷり。なのに人の機微に敏感で気配りが出来て、何より本業にかける想いの強さとプロ根性にモブ美はまさに文字のごとく沼っていった。

恋リア千ゲ続き⑥寝息を立てる千空の横から抜け出したゲンはTシャツ短パンというラフな格好で自室から1階にある共用のキッチンに降りてきた。水をもらってすぐ上がるつもりだったがダイニングに人影を見つけて一瞬足を止めた。

💃🎤「ゲンくん？」
🃏「め、メンゴ〜！こんな格好でこんな時間に鉢合わせちゃって〜！」
この部屋のカメラは24時間回ってる。何もなければカットだろうが、何せ昨日(全体MTGでの三角関係発言)の今日(事後の自分たち)。渦中の2人とくれば編集側はどうあっても使いたいシーンだろう。
それに、例え千空との今後の関係を世間的にはビジネス交際で通したとて自分の気持ちは本物。本気で好きになったのだ。
番組上で偽りのキューピッドに徹し千空とアイドルの仲を取り持った好感度の高い『あさぎりゲン』より、心象は悪くとも自分の信念とアイドルから千空と勝ち取ったヒールな『あさぎりゲン』の方がずっといい。「あの時千空ちゃんを選んでいれば……」なんてこの先ずっと後悔の十字架を背負っていい子ちゃんを演じて芸能界を生きてくなんてまっぴらだ。やるなら徹底的に。千空のいう『ロードマップ』とやらは既に頭の中に出来上がっている。

恋リア千ゲ続き⑤MTG後、千空がゲンの部屋のドアをノックする。(この回のカメラはここで止まるため様々な憶測が飛び交う)
この三角関係が修羅場にして最大の見せ場だ。ここの立ち回りが今後の人気を左右する。
千空もゲンも、きっとアイドルの彼女でさえ、この番組を足がかりに知名度を伸ばそうと参戦したはずだ。それなのに…。
🃏(どの選択をするのか決めるってのが俺の役よね〜…)
あえて自分から誘ったとしてアイドルにアタックを仕掛ける役･見守り役に徹して千空にアドバイスし続けキューピットになる役･千空からの好意を受け取り新たな愛のカタチを視聴者に提供する役。
🃏「…ってのが俺のロードマップ。どう思う？千空ちゃん」
🚀「一択だろ」
🃏「どの一択？！」

恋リア千ゲ続き④仕事の関係でしばらくシェアハウスに帰っていなかったゲンが4日ぶりに撮影現場に戻る。
今日の撮影は週一のメンバー揃っての夕食回。オンエア自体はあったりなかったりで尺はけして長くなく全体の1/10放送されればいい方。
ただ参加しているキャスト側からすると超絶重要イベントで、他メンバーの恋の進捗や関係性の把握、今後スポットが当たるであろうメンバーの絞込みとそれに合わせた撮影予定すり合わせを全員で共有する、いわばミーティングのような機会なのだ。
集合に遅れたゲンがダイニングに入ると食事は既に用意されていた。ひやかすように迎えてくれたメンバーたちに謝りながら席を探せば千空が自分の隣をポンポンと叩いて合図する。
🃏(席そこかぁ〜…)

恋リア千ゲ続き③TLは大盛り上がり。
「あれはキスしてるでしょ！」
「盛り上げるためにあの角度でわざと撮ってる。計算。だからまだしてない、『まだ』」
「あんな長いこと顔突合せてんだからべろちゅーやってる」
「魅せ方わかってる」
「この番組のカプ成立ってカメラの前でキスして卒業じゃないの？フライング有りなん？」
「キスしてない！手は握ってる！！」
キスしてる派としてない派がプチ対立(けど全員千空とゲンを既に両想い扱いしているのでどこかほっこり）
当然エゴサでオンエア後のコメントをチェックするゲン。盛り上がるのは嬉しいけど一方怖いのはアイドル側の視聴者。
「あさぎりゲンバイなの？」
「○○(アイドルの名前)が可哀想！」
「ヤリチンか？」

恋リア千ゲ続き②千空と視線がぶつかった。というより、明らかに顔ごとこちらを向いている。
感動シーンに差し掛かったらしく、周りからは観客たちのすすり泣く音が響き意外と騒がしく感じるが、それより何より自分の胸の鼓動が大きく聞こえてゲンは困惑した。
🃏「え……？千空、ちゃん……映画見てる？」
🚀「見てねぇ」
🃏「んぇ？」
🚀「ずっとテメーを見てた。その方が唆る」
🃏「っ！？」
千空がそう言うやいなや手を握られる。カメラからは見えない位置だ。
🃏（な、に？どういう……？）
スクリーンの光が反射して千空の表情が見える。いつもより、いやだいぶ赤いだろうか。照れを隠すように少しむくれたような表情をするのをゲンは可愛いと思ってしまう。

恋リアの千ゲ続き①続き
表向き、二人は仕事帰りで遅くなった者同士ご飯を食べてる設定でオンエアされる。
🃏（千空ちゃん、ご飯行ったり出かけたりしてるって言ってたのに。…手を繋ぎたいって言ってたのは、じゃあ誰と？）
アイドルとの食事デート(に見せかけた作戦会議)中、的確な受け答えをしているように見せてずっと上の空のゲン。あの時の千空の相談は一体なんだったのか…。
🎤💃「とりあえず…今日はこの後どーする？」
🃏「えっ！？」
『この後』。もうずいぶんと深い時間になっているのに？いきなり展開に慌てるゲン。見せ場なのもわかるけども気のない相手とのワンナイトは流石にちょっと…。しかも売り出し中のアイドルと駆け出しマジシャン。ここでお互いコケる訳には……