このタヌキなんで横に逃げないんだ。そう思いながら徐行に近い速度でタヌキの後ろをのろのろと走り続ける。
しばらくそうしていたところで、いきなり左手の林の中から人影が現れ、慌ててブレーキペダルを踏みこむ。
危ねえな!とか、轢いてないよな?という気持ちがないまぜになりながらおそるおそる正面を覗くとその人影は今どき珍しい着物を着た背の高い男だった。
男は先程のタヌキを小脇に抱えてこちらを振り返ると小さく頭を下げた。つられて俺も頭を下げてしまった。
あのタヌキ、あいつのペットか?それにしたっていきなり道路に出てくんなよ、と思ったが、それよりも俺はその男の頭部に釘付けになった。
ツンツンとした銀髪の上には二本の角のようなもの。
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