硲道夫/おいらの恋路:硲先生にラブレターを添削してもらった話 授業中にせこせこ書いてたラブレターを見つかって笑われても、おいらはちゃんと笑えた。
「ヒッコ、いい加減諦めろよ!」
「ンども、おいら好きだかんなあ」
子供の頃、ばあちゃん家で暮らしてたせいでおいらの訛りはきついらしい。俺、と言ってるつもりでも、おいら、に聞こえるらしく、意図的に一人称をおいらにしたのは確か小四のあたり。高校生になってもおいらはおいらで、ヒッコ、と呼ばれて頭をしばかれる。
「字ぃ汚ね! 内容もキモすぎるだろ!」
「ええ!?」
ラブレターは渾身の出来だった。隣のクラスの沓澤に、付き合うとかは無理にしたって良いって思ってもらえる、と思ったのに。
おいらの声にクラス中がどっと沸く。腹を抱えてひいひい言ってるクラスメイトを見ているのはいい気分だ。なんか、ほんとはもっと違う仲良しになりたかったけど、こうやって仲良しになるのも悪くはねえ。
1346