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    ヒロ・ポン

    支部ないです。ここに全部ある。

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    ヒロ・ポン

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    かわいいカジが恋に悩んでいるのでひっかきまわしてあげるおじさんです

    門梶(CP)←フロ(非CP)門倉さんが手を出してこない。
    手を出してこないとはずいぶん即物的な考えだなあと自分でも思う。けど、自分の知っている恋愛の意でのお付き合い正規ルートの進行方向からすると、そろそろそういうことになる。
    よもやあの風体と年齢で初心なわけではあるまい、と勝手に失礼な事を考えもするが、いかんせん歳がおそらく10は離れている。思考というか、もはや文化の違いが生じているのかもしれない。


    思わず、頼りになるけど絶対に頼りにしてはいけない男に相談してしまった。だって僕の周りで一番セックスしてそうだったから。
    「ふーん、日本男児はお手付御免文化かと思ったが、奥手なんだなカジのハニーは」
    失礼な動機付けにも「まあ当たりだ」と笑って済ませてくれたフロイドはカウンターに肘をついて立っている僕の頭のてっぺんからつま先までをスキャンするみたいにじっと見つめる。
    「や、自分にそういう魅力がないのは分かってるんだけど…」
    ご存じの通り、胸も無ければ尻もない。くびれもなければ色っぽくもない。自分が自分を見た時に勃起するかというと、絶対しない。
    「いやあ?カジみたいな素朴で幼いアジアの男はモテるんだぞ?」
    「…僕がモテたい人もアジアの男なんだけど?」
    空になったアップルタイザーの瓶をわざと音を立ててカウンターに置くとフロイドはハンズアップしてくつくつと笑い出した。
    「何でだろうなあ、カジの言う事も分かるぜ?物事にはステップがあって、ここまではどうにか昇って来た。次のステップまでに邪魔者はいないのにどうして?ってことだろ」
    「…うん」
    俯く僕の横でフロイドはジンジャーエールをくっと呷って、何か思案してから瓶を置いた。
    「じゃあ…ハイリスクだが、ハイリターンでいこう」

    スイートルームの客専用のバーラウンジから手を引いて連れ出され、フロイドの居室に連れ込まれる。
    「ジャケットを脱ぎな」
    人の部屋に入るのだからそれもそうだな、と素直に従ってジャケットを脱ぎ、指に招かれるままついていった。
    「まあ座れよ」
    ひっぱりこまれたバスルームの籐の椅子に座らされ、自分の顔が洗面台の大鏡に映る。
    「今日は髪はセットしてないのか?」
    「あーうん…まさか同じホテルにいると思わなかったし…」
    朝、まだ眠い目を擦っている時に部屋にゲストアテンダントが直接呼出しに来たのだ。ゆったりと身支度なんかしてる暇はなかった。
    「この後の集まりにはカジも同席するんだからここで整えて行けよ。服はこのままでいいな」
    よだれかけみたいに首元にタオルを付けられて、言われるままに本日二度目の洗顔をした。
    その後に顔に色々と塗られて、日本は紫外線が弱くていいだの、髭の薄さがどうの、と言われながらされるがままになる。
    うかつにも剃り残していた髭もすっきりと落とされ、最後に化粧水らしい液体をぱしゃりと塗られた。
    身だしなみを整えたり、逆にわざと乱したりして相手の印象を操作する事は多々あるけど、ここまでくると身だしなみというより娯楽の域ではないか。
    「毎朝こんなのしてるの?」
    「気合いだよ気合い。人は相手への対応を先入観や第一印象で決定する。わかってるだろ?」
    それは重々承知している。けど、これがさっきのハイリスクハイリターンのどこに繋がるのかがぴんときていない。

    「男を煽るには、浮気が一番さ」
    フロイドは長い腕を伸ばして僕のシャツの裾を腰から抜き、香水を少し離して露出した脇腹にひと噴き、それから首のあたりにひと噴きした。
    「うわっすごい匂い…ちょっと、これ取れる…?」
    香水を身につける習慣がない分きつくむっと立ち上る香りに強い違和感がある。
    「時間が経てば薄れる。一日中同じソファーに居るのでもなけりゃシャワーとクリーニングで消えるだろ。」
    噴きつけられたのは当然、フロイドの香水だった。フロイドと会う時にいつも感じている匂いが、少し違うような気がするが自分からすると思うとなんとも居心地が悪い。

    「甲斐性なし君と会うのは五時間後。ちょうどいいだろ」
    何がちょうどいいのかいまいち理解しきれていないと、フロイドが「キスマークでもつけてやろうか?」と笑いだした。
    それでようやく理解して、自分でもわかるくらい青ざめて、それから赤くなった。
    *

    それからフロイドと真面目な打ち合わせをして、部屋に用意してもらった軽食を食べながらなぜか甲子園の壁のツタの話をして、それぞれ別の車で賭郎本部に向かった。
    迎えに来てくれた弥鱈さんは僕が近くに寄るや否や「うっわ」と露骨に顔をしかめた。自分からとんでもなく香水の匂いがしているのはわかっているのでひたすらに謝った。
    「打ち合わせと伺っていましたが、逢引きとは隅に置けませんねえ」
    「逢引きじゃなくてほんとに打ち合わせだったんですけどね…色々ありまして…」
    「詳しく聞きたいとは毛頭思いませんのでお話頂かなくて結構ですよ」
    あ、そう…と僕が口を閉じると弥鱈さんは運転席の背もたれをつま先で軽く蹴った。露骨な音を立てながら社内の換気が回る。ほんとに遠慮がないなこの人は、とちょっと笑ってしまった。

    窓は閉まっているのになんか寒い、という車内から賭郎本部のエントランスに降りる。迎えに来てくれた黒服の人たちの中を抜けながらエレベーターに乗り込んでまた弥鱈さんにため息を吐かれた。
    「すみませんほんと…今すぐシャワー浴びたいんですけど…」
    「別に構いませんよ。私は同席しませんし、梶様を送り届けたら直帰なので…巻き込まれません。」
    「巻き込む?」
    「…まあ、ご安全に…」
    思いがけず投げられた労わりのような言葉に目を白黒させる間もなくエレベーターは目的階に到着した。ドアが開くと同時に弥鱈さんが舌打ちをしたのが聞こえる。
    「あーあ、お出迎えが来ていますね。それじゃあ私はこれで。このドアが閉じたらもうボタン押さないでください。」
    「はあ…」
    半ば押し出されるようにしてエレベーターを脱し、振り向いたら大きな壁があった。

    「お久し振りです、梶様」
    「門倉さん!」
    思わず両手を広げそうになった。けどここは本部なのだと思い直してすぐに腕を降ろす。
    「本当にお久し振りです。今日も立会いがあったんですね?」
    きっちりと整えて立てられたトサカ、リーゼントが今日も格好いい。額に傷があって、リーゼントが似合って、タッパがあって、眼帯なんてカッコよさの特盛じゃないかと思う。
    けど、門倉さんの顔は能面の様に固まったままだ。何だ?と覗き込むと眉間に皺が寄った。
    「どうかしましたか?今日の勝負はそんなに面白くなかったとか…」
    「いえ…まあそう興奮できるものでもありませんでしたが」
    「そう、ですか。来週の僕の立会の時には楽しんでもらえるといいんですけど」
    「期待しております」
    踵を返して歩き出した門倉さんに慌てて着いて行く。ビジネス的な流れで言ったのかもしれないけど、期待していると口に出してもらえるのは嬉しかった。

    *
    不愉快だ。その一言であった。
    四週間ぶりに顔を合わせた恋人が知らない匂いを濃く纏い、しかもその匂いは何層にも重なっていた。
    頭からかぶったなどして一度に付いたものではなく時間を掛けて重ねられたものであるように感じる。
    エステなどのケアを受けた結果の物のであればすぐにわかる。しかしそれとはまったく違う、一点ずつをばらばらに選び、趣味や嗜好が折り重なってできた固有の気配を感じるのだ。
    まったく覚えがない匂いではない。特定の原因が分かるほど記憶にはっきりと残っているわけではないが、確かにどこかで嗅いだ事のある匂いだった。ごく薄く、故意に付いたわけではないそれくらいの…

    軽い足音を立てながらついてくる梶を会議室に連れて行き、客人の出迎えにさっさと頭を切り替えた。



    お屋形様となった嘘喰い…斑目貘がわざわざ出迎えに来るほどの事が動く。
    フロイド・リーは立ち位置こそ取引ありきの相手ではあったが、友好的な態度を示して損はない人物だ。相応の誠意を見せておくというのは良手だと思われる。
    ビジネスパートナーとして梶の口からも良く聞くフロイド・リーがわざわざテッド・ウィリアムズという名で直接コンタクトして来たとなった時のお屋形様のはしゃぎ様と言ったらなかった。
    きっと面白い事が起きる。そう予感している立会人は私だけではないだろう。
    地下入口に横付けされた車からチェスナットのつま先が降り、髪をかっちりと纏めた長躯がドアから姿を現した。
    「よお嘘喰い。今日も新鮮なネタが欲しいってカジにおねだりされちまったよ。向こうの海は大荒れなんだがね。」
    「聞いたよ。今朝獲れたばかりだって?こっちは深海に面白い魚がいたんだ。是非楽しんでいってよ。」

    夜行立会人が二人を本部エントランスへ案内する。中で待っていたマルコに手を振り返しながら、フロイドが不意に立ち止まった。

    「なあ、若くして立会人のNo.2に上り詰めた男、ってのはどいつだ?」
    「No.2?ああ、実質三番目だけど、門倉さんだよ。この人。」
    黒服を10人ほど挟んだ距離にいた私にフロイドが無造作に近づいてくる。客人だからと頭を下げたが、近づかれるに伴い不快感が鼻腔から脳に刺さる様だった。

    思い出した。なぜ梶が纏うあの匂いに覚えがあるのか。この男が車から降りた瞬間に胸の内がざわついたのか。以前どこで嗅いで、その日梶が誰と会っていたのか。
    「へえ…いい男じゃないか。まあ、それだけかもしれないがな。」
    フロイドから立つ、時間差で同じ香水を二度吹き付けた異なる濃さが重なった匂い。今の体質を得たからこそ分かる。その二度目の重なりは梶と同じ濃度だ。
    額に青筋が立つのを自覚して、私個人の中にも一応は組み立てられていた友好的な接触プランは破綻した。

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    DONE初門梶SSですが、門倉さんあまり出ません。すいません…。

    裏ver書きたい。
    僕の秘密

     門倉さんに秘密にしていることがある。それは門倉さんがいない間に僕が彼のシャツを独り占めしてることだ。僕と門倉さんは恋人同士で今でもどうしてこの関係になったのかもわからない。きっかけはたぶん、プロトポロスでの出来事だろうと踏んでいる。お付き合いしてだいぶ経った頃に彼がある日仕事が長引いてなかなか会えなくて寂しくなった僕は洗濯物に混ざっているシャツを見つけた。シャツから香る門倉さんの匂い。たばこと体臭。最後に嗅いだのはいつだったか。そしてふと思いついて、実行すると寂しさが解消された。
     
     その日も僕はあることを始めた。洗濯せずに取っておいた門倉さんのシャツを抱きしめながら眠る。彼と一緒に暮らすようになって、いつしか彼の存在がそばにあるのが当たり前になっていた。だから、会えない間はそばにいないと僕は胸に穴が開いて落ち着けなくなってしまう。
    「…門倉さん」
    僕より大きいそのシャツから嗅ぎ慣れた匂いがした。その匂いがあるだけで門倉さんがいるんだと錯覚できる。だから、よく眠れるようになる。胸のあたりに顔を埋める。今は薄っぺらいシャツだけの感触しかないけど、ここには彼のたくましく厚い 1001