Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    ヒロ・ポン

    支部ないです。ここに全部ある。

    ☆quiet follow
    POIPOI 147

    ヒロ・ポン

    ☆quiet follow

    誰も触れないふたりだけの国

    きゃば(本編後)いつだってここは絶妙に過ごしやすくて、微妙に天気が悪い。
    雨が降るほどの曇天でもなく、しかし咳こむほどの感想でもない。酔わない訳ではないが、船の発着に不都合が出るほどは荒れない。
    「よーいしょっと」
    「じゃあ、三日後にまた来ますね。」
    「うん。今年は三日かあ」
    「しょうがないですよ、忙しいんですから」
    「そだね~じゃあ梶ちゃん、あとよろしく」
    「は~い、何かあったら衛星電話してください」

    船に乗ったマルコと梶は岸から離れ、泡立つ帯を見送りのテープのように引きながら遠ざかっていく。
    手配して使えるようにした上下水道と電源を確認し、先に島に入って諸々の用意をしていた立会人らの用意した物品も確認する。
    卍戦の際にプレイヤーが破壊した家屋はそのままだが、外れを好んだプレイヤーが使っていた建物は無事だった。
    貘はその一軒を拝借し、手荷物を無造作にデスクに投げベッドの上に身を投げる。
    どちらかといえば町の方に近いこの家屋には最低限の物しかなくて、それでいて何故だか心地いい。
    仰向けの背中が暖まり眠気が来る前にと立ち上がり、靴ひもを結び直し、荷物から持ち込んだワインボトルを出して携える。
    そのまま森の中を海の方へと歩いて行って、ぜえぜえと切れる息に「これは歳かも」と笑いが出た。

    ジャケットを脱いでくればよかったと後悔するまではそうかからなかった。森の中でも気温は高く、疲労に伴う発汗が生じる。
    (毎年こうなのに、ほんっと俺って学習してないよね…)
    拭うハンカチもない。ただ、今日の供とするためのボトルだけを抱えて歩く。
    誰もいなくなって久しい島は、連鎖して生じる生態系のようなものがほとんどない。虫や植物はあるが、たまに立ち寄る海鳥以外の動物は見かけない。
    音のない森の中をただ歩き、顎から汗が滴る程になった頃ようやく目的の場所が見える。

    ここは墓標だった。盆と正月に帰ってくるのを渋るかもしれないから、先に会いに行ってやろう、と思った。
    大きな島の土の下にごろりと寝転がるかの人を迎えに、いや、迎えられに貘はこの島を訪れる。
    世界平和を謳う男が、手にした強大な権力を用いて求めたただひとつのわがままだった。

    「来たよ伽羅さん」
    木の幹にコンとぶつけたワインボトルの振動が、てのひらに波のように広がった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited

    recommended works

    トーナ

    DONE初門梶SSですが、門倉さんあまり出ません。すいません…。

    裏ver書きたい。
    僕の秘密

     門倉さんに秘密にしていることがある。それは門倉さんがいない間に僕が彼のシャツを独り占めしてることだ。僕と門倉さんは恋人同士で今でもどうしてこの関係になったのかもわからない。きっかけはたぶん、プロトポロスでの出来事だろうと踏んでいる。お付き合いしてだいぶ経った頃に彼がある日仕事が長引いてなかなか会えなくて寂しくなった僕は洗濯物に混ざっているシャツを見つけた。シャツから香る門倉さんの匂い。たばこと体臭。最後に嗅いだのはいつだったか。そしてふと思いついて、実行すると寂しさが解消された。
     
     その日も僕はあることを始めた。洗濯せずに取っておいた門倉さんのシャツを抱きしめながら眠る。彼と一緒に暮らすようになって、いつしか彼の存在がそばにあるのが当たり前になっていた。だから、会えない間はそばにいないと僕は胸に穴が開いて落ち着けなくなってしまう。
    「…門倉さん」
    僕より大きいそのシャツから嗅ぎ慣れた匂いがした。その匂いがあるだけで門倉さんがいるんだと錯覚できる。だから、よく眠れるようになる。胸のあたりに顔を埋める。今は薄っぺらいシャツだけの感触しかないけど、ここには彼のたくましく厚い 1001