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    ヒロ・ポン

    支部ないです。ここに全部ある。

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    ヒロ・ポン

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    表稼業でパチンコ屋やってる門倉です

    チューリップの君今日もカーペットにガムがへばりつき、台バンと台抑えが横行し、いつも通りの一日だった。
    コーヒーさんは尻を触られてるし、かと思えばそのおっさんから南国育ち一列分の奢りの注文を取ったりしていて強かだし、
    ホールで放送してたらヤジられるし、あんまりいい一日ではない。あとホールのどっかにボールペン落とした。
    カウンターのペンスタンドにも生きているペンが見当たらなくてしぶしぶと事務所に取りに入る。
    蝶ネクタイの留め具を外しても大して解放感は得られない。元からゆるゆるだから。

    「おうお疲れ~」
    「お疲れ様で~す…ボールペン貰います~」
    パソコン仕事をしていた店長…門倉さんが振り向き声をかけてくれる。
    門倉さんは昼からだったから朝礼にはいなくて、今日はインカムでしか声を聴いていなかった。
    「横山君てシフト希望出した?」
    「あ、出してないっす。すみません。」
    「まだいいよ。そろそろ就活やろ?そっち優先で頼むわ。でも週2はお願いしたいんよ~」
    「ありがとうございます…」

    店長の門倉さんは事務所のドアをかがんでくぐるくらい大きくて、めちゃくちゃ顔がよくって、長くなった髪をお団子にして、今は咥えタバコでキーボードを打っている。
    そんな店長が大事故に巻き込まれ、しばらくして眼帯をして戻って来た時、僕たちバイトはどう接していいのかわからなかった。
    本部からの通達と店長の知り合いという人が面会謝絶とだけ伝えて来てそれっきりで、店長代理や本部の人たちとぎすぎすと働いていた。
    報せを聞いた時には門倉店長が帰ってくる!と一同は沸いたものだったが、戻って来た店長は別人のようだった。
    元から人には慕われる人だったし、真面目にやればやるほど褒めてくれるし、それは今でも変わらない。けど何だろう、この違和感は。
    この店で働いて長いチーフや先輩は店長が戻って来た時には「雄大クーン!」と号泣していたものだが、何も感じていないのだろうか?

    「あ、横山君。4日くらい休んどったじゃろ?その間に新入りが来たんだけど」
    「そうなんですか?」
    そろそろ来る、と監視モニターを見ながら言うので一緒になって目でフロアに散るスタッフを追っていると、事務所のドアに暗証番号を入れる音がした。

    「門倉…あー…店長、休憩入ります」
    「おお南方。昼からじゃったけえ横山君とまだ顔あわせとらんかったやろ。挨拶しい」
    「…どうも。南方です、よろしくおねがいします」
    「あ…横山です…よろしく…」
    店長と同じくらい、タッパも歳も。そんな人に頭を下げられて思わず引いてしまった。
    「歳くってゴツイけどなあ、後輩だからコキ使ってええよ」
    南方さんの、その、どう見ても「運動部でした」では説明しきれないガタイを門倉さんがばしばしと叩いて笑う。
    「おい、俺は人手が足りてないからって話で…」
    「人手ェ?スナイパーくんぶら下げて玉拾っとるだけじゃろがい。かたっぽの手ェにもならんやろ開けて閉めれば終わるエラーごときで毎回ワシを呼びおって」
    「ぐぅ…」
    「事務所が狭いから早よ休憩行ってくれや。そろそろコーヒーさんも交代だから精算見なきゃいけないしワシもホール出るし」
    「わかったよ…」

    俺が備品棚を漁っている間にも二人は仲よさげに話し、店長は椅子にひっかけていたベストを着てシャツの襟にインカム用のマイクを噛ませる。
    捲っていた袖を下ろしている店長の襟元を「曲がっとる」とか言いながら南方さんがネクタイを締めて、店長も顎を上げてされるに任せている。
    位置が高すぎる腰にインカムの本体を挿しなおして、長すぎる脚のスラックスの皺を払う。
    ここはパチンコ屋の事務所だからホールスタッフだという前提があるが、ところ変わればバーテンダーか、それともヤのつく家業か、といった風格がある。
    組長と若頭、みたいな―――
    身長も高くなければ顔も良いとは言えずワイシャツが学校制服にしか見えない俺からしたら、男として憧れてしまう。

    「あれ、放送用マイク充電されとらんね」
    「あ…俺の使ってください、清掃入るんで」
    「そ?借りとくわ」
    「お前が放送するのか?声が低すぎて通らんのじゃないか」
    「バカ言えお前の冤罪作りとうて脅しとるみたいな声よかマシじゃ」
    事務所の入り口でそんなことをされているもんだから、出るに出られず額がくっつきそうなくらい接近してにらみ合う二人を見守るしかできない。

    「———あ、スロット23,28,34が30分経ったから撤去しといてね」
    ぱ、と興味を失くしたみたいに南方さんとのメンチ合戦から離れ、髪を結び直しながら店長はホールに続くドアの向こうに消えていく。
    「は、はい…」

    ホールが暖まっている時に掛ける、応援団みたいな太鼓の効果音の後にパラリラ、パラリラ、としか形容できない電子音が続く。
    チューリップがどうの、スリーセブンがどうの、咲いた咲いた、並んだ並んだ、と店長の低い声がホールのスピーカーを通して聞こえてくる。
    店長がホールに居る時は台バンも吸い殻を床に捨てるのも、無いんだよなあ。


    「横山さん」
    不意に南方さんに話しかけられて背筋が伸びる。
    南方さんは店長に言われた通り俺を先輩として見て話しかけてくれている感じなのに、凄みが強くてすくんでしまった。
    「な、なんでしょうか…」
    「俺は来週の木・金は終日出られないから入ってほしいんだが…」
    「あー…大丈夫です…」
    頼まれた曜日のシフト希望欄に名前を書いて、南方さんは入れない日に×を付ける。
    「ありがとう」
    にこ、と笑われて、あーまた男前が増えちゃったよ、とコーヒースタンドのルミちゃんの喜ぶ顔を思い浮かべた。



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    トーナ

    DONE初門梶SSですが、門倉さんあまり出ません。すいません…。

    裏ver書きたい。
    僕の秘密

     門倉さんに秘密にしていることがある。それは門倉さんがいない間に僕が彼のシャツを独り占めしてることだ。僕と門倉さんは恋人同士で今でもどうしてこの関係になったのかもわからない。きっかけはたぶん、プロトポロスでの出来事だろうと踏んでいる。お付き合いしてだいぶ経った頃に彼がある日仕事が長引いてなかなか会えなくて寂しくなった僕は洗濯物に混ざっているシャツを見つけた。シャツから香る門倉さんの匂い。たばこと体臭。最後に嗅いだのはいつだったか。そしてふと思いついて、実行すると寂しさが解消された。
     
     その日も僕はあることを始めた。洗濯せずに取っておいた門倉さんのシャツを抱きしめながら眠る。彼と一緒に暮らすようになって、いつしか彼の存在がそばにあるのが当たり前になっていた。だから、会えない間はそばにいないと僕は胸に穴が開いて落ち着けなくなってしまう。
    「…門倉さん」
    僕より大きいそのシャツから嗅ぎ慣れた匂いがした。その匂いがあるだけで門倉さんがいるんだと錯覚できる。だから、よく眠れるようになる。胸のあたりに顔を埋める。今は薄っぺらいシャツだけの感触しかないけど、ここには彼のたくましく厚い 1001