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    ヒロ・ポン

    支部ないです。ここに全部ある。

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    ヒロ・ポン

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    おっきい門倉おじさん

    門梶 かどくらさんはおおきい門倉さんの家のベッドは大きい。
    それもそうだ。門倉さん自体がミニバスケのゴールに直立のままボールを入れられるくらいの人なんだから、そりゃベッドも大きくなる。
    車の運転席は僕が運転しようとすると座席が後ろに下げられすぎていてペダルに脚も届かないし、門倉さんの家には踏み台なんてものはないし、台所も高い。
    本部に居る時には南方さんやヰ近さんや美玲さんとかマルコも居るからそんなに目立ってはいないけど、スーパーに行ったら主婦の多い時間帯では小人と巨人みたいになっていた。
    門倉さんは「世間が小さいんですよ」というけど絶対違うと思う。たぶん、僕とか銅寺さんの体格に近い人の方が絶対に、絶対に多い。
    オフの日が重なったからその前日である今晩門倉さんの家に来てみたものの、午前中の勝負で結構な時間電気を流されていた僕には体力が残っていなかった。
    賭郎の車が一台巻き添えでダメになったので近辺での別件を終えた門倉さんが迎えに来てくれたけど、膝が笑っている僕を見てちょっと眉間に皺を寄せられてしまった。

    筋肉痛が始まった手足を胴体をひねる動きに引きずるようにして動かして寝返りを打つ。門倉さんは隣で本を読んでいる。
    今日の立会でちょっと頭に圧が掛かったから、と家でも眼帯をしている。多分目が飛び出してしまいそうになったんだと思うけど、うーん、それはさておき顔がいい。
    「そんなに見つめられると顔に穴が空きますが。反対側にでも。」
    はんたい、と復唱した。言わずもがな反対じゃないほうの穴は既にある傷の方だ。右側にまで空いたら両目に眼帯になったりするんだろうか。
    「手足が痛むでしょう」
    「ああ、まあ…結構キてます」
    「無理に動かしたようなものですからね。仕方がない」
    「心臓と脳は絶対ヤバイと思ってたので手足と腰までで助かりましたよ。トイレ行っておいてよかった~」
    「仕事とはいえ黒服に小便の始末をさせるのはいただけない」
    あの場に門倉さんは居なかったから見てないだろうけど、相手側のなれの果てが結構ひどかったので「そうならなくてよかった」の気持ちは強い。だまって強く頷いた。

    指先からじんわりと圧を掛けて揉み込み始めた門倉さんの手を目で追う。表面はまだちりちりとしているが、抑えられて圧迫をきちんと感じるのだから神経に問題はないのだろう。
    「…すみません今日、食事に誘っていただいたのに」
    ただされるがままになる。門倉さんの指先が筋と筋の間を平たく押して気持ちがいい。立会人は素手でも人を殺せるらしいから、人の骨や神経、筋肉の位置も理解しているのかもしれない。
    「どのみちこの豪雨では気が進みませんから。候補にあったレストランはあまり高層階ではないので景色もよくなかったでしょう。」
    大人しくもみほぐされてちょっと眠たくなってくる。門倉さんの手がすごくあったかい。ベッドのマットレスにどこまでも沈んでいってしまいそうだと思った。

    ふくらはぎまで揉んでもらっていると、との手が不意に止まった。眠気と戦っている中でも刺激が止まったのには気づき、窓の方に振り向いた門倉さんと同じ方を見た。
    「ピザが来ましたね」
    「え?そんな音しました?」
    はい、と立ち上がろうとするかどくらさんを引き留め、少しでも動かなきゃとその肩を支えにして僕がへろへろと立ち上がる。
    ベッドを回りこんでもすぐに追いつかれたけど、手に握らされる紙幣を受けとりつつインターホンに応対し、なんとかエントランスの開錠までをした。
    「ひっくり返すんじゃないですか?」
    「うう、見守っててくださいよじゃあ」
    ドアに力なくよりかかっていると、その向こうを無造作に歩く足音が聞こえて来た。
    「ほら来ましたよ、ピザ。ピザ~」
    玄関までたどり着いた足を見て、自分の靴がないのを思い出した。車に乗る時に「相手の粗相を踏んでしまったので」と遠慮したらその場で脱がされて捨てられたんだった。
    もちろんこの玄関につっかけなんてものはない。なのでなんとなく、内心で「失礼します」と唱えながら門倉さんの革靴に足を差し入れた。
    うわ、大きい。
    自分の足のサイズは標準的なものだと思うけど、玄関を数歩歩くにもかぽ、かぽ、と音が立つ。
    配達の人に支払いをしてLサイズの箱を三枚受け取って、おっとっと、となった所で箱が後ろに取り上げられる。
    「梶様、持ちますよ」
    「そうしてくださ~い…」
    残りの瓶ビール四本も受け取って、それも取り上げられる。
    配達の人が消えるまでを見送ってからドアを閉じてロックを全部掛けて、革靴を元の場所にもどすべくまたかぽかぽと歩いた。
    「うーん、たまらんものがある」
    「出来立てですよ、よかったですね」
    ん?今の会話は多分すれちがったな?まあいいか。
    門倉さんの大きすぎる革靴をちゃんと定位置に戻して、そういえば僕は明日どうやって帰れば?とそこでようやく首を傾げた。



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    トーナ

    DONEいとしい傷痕の対となってる門梶です。疵に贈るキス


     深夜に目を覚ました梶が最初に気づいたのは裸の背中に当たる大きな存在だった。梶の背中を覆うようにして眠る門倉がすぐ隣にいる。よほど深く寝入ってるようで寝息が耳元に当たる。そっと見上げると普段は鋭い隻眼が閉じられた、穏やかな寝顔があった。思いがけなく跳ねた胸の鼓動を宥めつつ、貴重な時に起きられた自分を褒めた。眠る門倉を見るのが小さな喜びであり、楽しみだった。
     ゆっくり身体の向きを変えて門倉に向き合う。前髪の分け目から見える、皮膚を抉ったような大きな傷痕。梶が雪出との勝負に負けた後に出来たものなのだと聞いた。傷が元で人格や体調に影響が顕れている。プロトポロスで見せた片鱗はたしかに門倉ではない、『なにか』だった。手を伸ばして優しく撫でる。起きないのを逆手に取っていたずらに指を這わせる。


     最初に出会った時とは違うかもしれない。それでも、根幹は門倉なのだと思う。梶は彼が普段から『なにか』を抑えつけているのをひそかに感じ取っていた。梶の前ではなんでもないように振る舞う。そんな彼を前に自分も知らないフリをした。何も出来ないのがもどかしかった。
     感触を感じるのか、眉間にしわ 615