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    ヒロ・ポン

    支部ないです。ここに全部ある。

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    ヒロ・ポン

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    ハンバーガーをめぐる二人の会話です

    門梶「へえ、新発売らしいですよ」
    ほらほら、と薄すぎる紙がへろへろと門倉の眼前で揺れる。
    たかだか50円か100円かの割引を大盤振る舞いしている紙面に踊る新発売の文字に梶の言う商品を見た。
    「新発売て…これ前にもあったでしょう」
    「毎年リニューアルして発売してるんですよね。でも結局一回も食べた事なくて…」
    うーん?とクーポンの紙を見ながら首をかしげる梶につられて己の視界も傾く。
    「割高でしょう。以前の梶様からすればその価格帯は」
    梶の職務経歴から察する収入から見て、紙面に並ぶ価格帯は一食にするにしては手ごろとは言えない。
    「全然食べてましたよ?ビッグマックのセットとか」
    きょと、と見上げてくる梶の視線を受け門倉は紙面に目を落とした。そして黙した。
    「梶様、金が無くても外食で、ジュースは自販機で買ってたでしょう」
    「まあ、そうですね。自炊は面倒だし時間掛かるし、あと材料とか道具買う方がお金かかるじゃないですか」

    門倉は、調味料とか全部使うわけじゃないし~と一人で納得した風の梶をつい抱きしめそうになった。
    「なんですか…」
    「うちにある道具、好きに使っていいから」
    「なんですか」
    「お料理しような、梶くん」
    「料理位できますけど」
    「何作るの?」
    「ラーメン」
    「まあ、いいわ」
    特にそれ以上言いようもない。食事とは買う物という中と万年金欠ならそうもなるだろう、の納得だった。

    「それなら今日はハンバーガーにしましょうか」
    「ほんとですか?門倉さんこれで足りますか?」
    「私の事なんだと思ってるんですか?」
    クーポンを大事そうに畳んで胸ポケットに入れる梶に上着を渡し、財布と携帯それからキーケースを自分のジャケットにねじこむ。
    「どれにしようかな~新発売のこれにしよっかな?食べたことないし」
    「是非そうしてください」
    二人でエレベーターに乗り、地下駐車場で車に乗り込む。

    思えば梶はどこでチラシを入手してきたのだろうか。このマンションへのポスティングなど、ない。
    どこかで偶然渡されでもした紙切れをなんとなくでも連れて来て自分に見せたのかと思うと可愛げを感じてしまう。
    もう何の疑問もなく助手席に乗るようになった梶を視線で慈しんでいると梶が小首をかしげた。

    「ん…?」
    「どうかしましたか」
    んん、と梶が紙面に目を凝らす。お目当ての商品を見ているようだが何か気に入らない事でもあったのだろうか。
    「これ、グラタンのコロッケをパンで挟んでますよね」
    ほら、と指で示されてつられて目を凝らす。それが売りの商品のはずだが、何か疑問に思う事があるだろうか。

    「全部…小麦…」
    神妙な面持ちでつぶやく梶の口をつい手で覆いそうになった。何故かはわからない。硬直より先にそうしそうになった。
    車内に沈黙が流れる。それは同意と納得、そして困惑だった。

    「…言わんほうがええよ、世の中には、そういう事もあるよ」
    「そうですね」
    カチ、とシートベルトが着用された音を聞き、開き始めた駐車場のシャッターに直進する。そのまま目的地までお互いに無言だった。


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    トーナ

    DONE初門梶SSですが、門倉さんあまり出ません。すいません…。

    裏ver書きたい。
    僕の秘密

     門倉さんに秘密にしていることがある。それは門倉さんがいない間に僕が彼のシャツを独り占めしてることだ。僕と門倉さんは恋人同士で今でもどうしてこの関係になったのかもわからない。きっかけはたぶん、プロトポロスでの出来事だろうと踏んでいる。お付き合いしてだいぶ経った頃に彼がある日仕事が長引いてなかなか会えなくて寂しくなった僕は洗濯物に混ざっているシャツを見つけた。シャツから香る門倉さんの匂い。たばこと体臭。最後に嗅いだのはいつだったか。そしてふと思いついて、実行すると寂しさが解消された。
     
     その日も僕はあることを始めた。洗濯せずに取っておいた門倉さんのシャツを抱きしめながら眠る。彼と一緒に暮らすようになって、いつしか彼の存在がそばにあるのが当たり前になっていた。だから、会えない間はそばにいないと僕は胸に穴が開いて落ち着けなくなってしまう。
    「…門倉さん」
    僕より大きいそのシャツから嗅ぎ慣れた匂いがした。その匂いがあるだけで門倉さんがいるんだと錯覚できる。だから、よく眠れるようになる。胸のあたりに顔を埋める。今は薄っぺらいシャツだけの感触しかないけど、ここには彼のたくましく厚い 1001

    トーナ

    DONEいとしい傷痕の対となってる門梶です。疵に贈るキス


     深夜に目を覚ました梶が最初に気づいたのは裸の背中に当たる大きな存在だった。梶の背中を覆うようにして眠る門倉がすぐ隣にいる。よほど深く寝入ってるようで寝息が耳元に当たる。そっと見上げると普段は鋭い隻眼が閉じられた、穏やかな寝顔があった。思いがけなく跳ねた胸の鼓動を宥めつつ、貴重な時に起きられた自分を褒めた。眠る門倉を見るのが小さな喜びであり、楽しみだった。
     ゆっくり身体の向きを変えて門倉に向き合う。前髪の分け目から見える、皮膚を抉ったような大きな傷痕。梶が雪出との勝負に負けた後に出来たものなのだと聞いた。傷が元で人格や体調に影響が顕れている。プロトポロスで見せた片鱗はたしかに門倉ではない、『なにか』だった。手を伸ばして優しく撫でる。起きないのを逆手に取っていたずらに指を這わせる。


     最初に出会った時とは違うかもしれない。それでも、根幹は門倉なのだと思う。梶は彼が普段から『なにか』を抑えつけているのをひそかに感じ取っていた。梶の前ではなんでもないように振る舞う。そんな彼を前に自分も知らないフリをした。何も出来ないのがもどかしかった。
     感触を感じるのか、眉間にしわ 615