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    ヒロ・ポン

    支部ないです。ここに全部ある。

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    ヒロ・ポン

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    フロ梶さんは【扉越しの会話】をお題にして、140字以内でSSを書いてください。

    砂嵐の国にて『ねえ!全然落ちないんだけど!』
    「悪かったよ、俺もちっと予想外だった…」

    世が羨む高層ビル群の中の一つ、そのバスルームで梶は大騒ぎしていた。
    お国柄御法度であるはずのギャンブルの予定がこの地で立ち、それに対する自陣の足場を整えるためににやって来たこの国で、早速洗礼を受けた。
    数年間隔であると聞いていた砂嵐がピークを迎えているのがまさに今日この日だとはだれが予想できただろうか。
    すでに用は済み、二人は宿泊先ホテルに向かう帰途のわずかな徒歩の間に猛烈な吹き戻しに襲われた。
    白いジャケットにイエローのシャツを着ていたフロイドはそこまでの被害があったようには見えなかったが、ひどいのは梶の方だった。
    繊維の目が粗いシャツにスラックス、そして無造作な頭髪。その全てが真っ黒で、汗ばんでいた肌にまでびったりとついた砂でまるできな粉でもまぶされたのかという様相になってしまっていた。
    こりゃいけねえ、とフロイドは梶の手を引き足早に逗留先に駆け込んだ。

    「服はあらかた落としたが、クリーニングに任せるしかないな。まあ慣れてるだろうよ。」
    フロイドは自信も衣服を脱ぎ梶のものと共に早々にクリーニングに引き渡した。着替えはあるがまだシャワーを浴びていない身のこのざらついたままではバスローブすら身にまとう気にはなれない。
    洗面台に腰かけて煙草に火を着けてため息のついでに紫煙を吐く。スモークの張ったガラスの向こうにうっすらと見える影はとにかくバシャバシャと激しく音を立てて湯を浴びている。
    『ダメだ…あんな一瞬だったのにもうずっと砂が出てくる…』
    フロイドは自分の髪の筋の間に指を入れる。言わずもがな、整髪料のおかげで砂まみれだった。
    『なんかシャンプー全然泡立たないよこれ!洗えてるのこれ!』
    「そんなわけあるか、こんなグレードのホテルでそんな訳…」
    これ、と梶がドアの隙間から差し出して来たのはどう見てもリンスだった。
    そんな初歩的な間違いをする奴が居るのかよ、と声を上げて笑ってしまいそうだったが、ぐっとこらえてそのボトルを受け取った。
    「しょうがねえな、手伝ってやるよ」
    さっさと下着から脚を抜き少し開いたままのドアを大きく開けた。
    「おわっ、入ってくるなら言ってよ」
    目をぎゅっとつむったままシャワーに打たれている梶が面白くて、「こりゃリンスだ」というのはもう少し後にしようと思った。
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    DONEいとしい傷痕の対となってる門梶です。疵に贈るキス


     深夜に目を覚ました梶が最初に気づいたのは裸の背中に当たる大きな存在だった。梶の背中を覆うようにして眠る門倉がすぐ隣にいる。よほど深く寝入ってるようで寝息が耳元に当たる。そっと見上げると普段は鋭い隻眼が閉じられた、穏やかな寝顔があった。思いがけなく跳ねた胸の鼓動を宥めつつ、貴重な時に起きられた自分を褒めた。眠る門倉を見るのが小さな喜びであり、楽しみだった。
     ゆっくり身体の向きを変えて門倉に向き合う。前髪の分け目から見える、皮膚を抉ったような大きな傷痕。梶が雪出との勝負に負けた後に出来たものなのだと聞いた。傷が元で人格や体調に影響が顕れている。プロトポロスで見せた片鱗はたしかに門倉ではない、『なにか』だった。手を伸ばして優しく撫でる。起きないのを逆手に取っていたずらに指を這わせる。


     最初に出会った時とは違うかもしれない。それでも、根幹は門倉なのだと思う。梶は彼が普段から『なにか』を抑えつけているのをひそかに感じ取っていた。梶の前ではなんでもないように振る舞う。そんな彼を前に自分も知らないフリをした。何も出来ないのがもどかしかった。
     感触を感じるのか、眉間にしわ 615