今夏、あなたの名前を。 窓を突きぬけてくる日差しだとか、ただただ五月蝿いだけの蝉だとか、
そんなもの達のせいで浮き出た汗がつう、と顎の端まで伝って落ちた。
夏休み中に学校の夏期講習という名目で朝から呼び出されたせいで、冷房が効いているのにも関わらず多くのクラスメイトはだるさを全身から滲ませていた。
自分も例外なくこの時間のやるせないだるさに身体を溶かされていたので、頬杖をついて目線だけ前に向ける。
目の前の綺麗なアイリス色の癖がかった髪が日光を透かして、ちらちらと明滅した。
浮奇・ヴィオレタ。
きっと、俺以外を思っている、
俺のすきだったひと。
恋とか愛とか、自覚する瞬間なんかは小説でも漫画でもいくらでも見てきた。
読者という立場ながら『今更かよ』と思い続けてきたが、いざ自分がなってみると本当に分からないものだなぁ、とファルガーは薄ら思っていた。
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