ジェイ監の『最期』白い瞼が震えた。
「──ジェイド先輩」
「はい。お迎えに参りました」
「先輩、なんだか白くなりましたねぇ」
「そうですね。鱗は所々剥げてしまったし、実は尾鰭もちょっとだけ欠けちゃいました」
「でも相変わらず素敵ですよ」
「ありがとうございます。もちろん貴方も素敵です。この目尻の皺なんて……たくさん笑いましたね」
「はい。たくさん笑いました」
「それなら良かった。僕もたくさん笑って楽しみました」
「良かったですねぇ」
「さて、やり残したことはありますか?」
「いいえ。なぁんにも。やりたいこと全部やりました。これで、私の人生での『心残り』はジェイド先輩だけになりました」
「おや。奇遇ですね、僕もです」
「さぁ、そろそろ終わりが近い。どうしますか?」
「ここで目を閉じた後に僕が下に連れていくか、それとも下に行ってから目を閉じますか?」
「選ばせてくれるんですね」
「貴方の願いを僕が叶えるんです」
「ひねくれてますねぇ」
「こういうところもお好きでしょう?」
「ふふ、はい、大好きです」
「どうします?」
「ジェイド先輩と一緒に下まで行きたいです」
「分かりました。それじゃあ一緒に行きましょう」
「ジェイド先輩白いから、こんなに暗くても見えますね」
「貴方も同じようなものですよ。白くて、干からびてる」
「ひどい」
くるくると回りながら沈んでいく。
重ねた唇から溢れた小さな泡が、ジェイドの口腔で溶ける。
それをゴクンと飲み下し、口付けたまま、細く小さな身体を強く抱き締めた。