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    Yukkirai_pk

    @Yukkirai_pk

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    Yukkirai_pk

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    アオオモ。
    恋愛要素はほぼありません。
    アカデミーの同級生だった子供時代の二人の捏造小話。
    ・口調等は現在の二人と異なります。
    ・独自設定有ります。

    #アオオモ
    ##pixiv未掲載

    もっと強く せっかく学校で色々習ったのだから、一度くらい野生のポケモンとバトルをさせてやりたい。そう思って、たった一羽の相棒と共にテーブルシティの外に繰り出したのが間違いだったのかもしれない。
     まだバトルに慣れていない相棒の相手に選んだ、その小さなエスパータイプのポケモンは、そのか弱げな見た目に反して恐ろしい強さを持っていた。
     ヒラヒナのねんりきが、容赦なくアオキのムックルにぶつかる。か細い悲鳴をあげた相棒の体がふらりと傾いた。もう戦闘は不可能だろう。
     アカデミーの同級生とするバトルなら、これで決着がつく。しかし、ヒラヒナはまた攻撃のために身を構え、倒れたムックルの側へ接近した。
    「……っ、ムックル!」
     少年は叫んで、傷ついたポケモンの元に駆け寄った。力の抜けた相棒の体を、守るように腕に抱く。
     気が昂ったヒラヒナは、威嚇するような鳴き声をあげ、アオキの腕を鋭い嘴で勢いよく突いた。
    「……っ、ぐ」
     ムックルがじゃれるようにつついてくるのとは比べ物にならない、相手を傷つけるための攻撃。長袖が破れ、腕から血がつうと流れる。痛みと焦りで、何をすべきか分からなくなる。
     腕からこぼれそうになる翼をぎゅっと抱き込む。彼を守れるのは自分しか居ない。邪魔するな、とでもいうように、苛立ってヒラヒナが鳴く。
     凛としたよく通る少女の声が聞こえたのは、その直後だった。
    「何やってるの⁈ 倒れたなら、その子を早くボールに!」
     はっと顔を上げる。バトル中のポケモンに近づいてはいけない、という一番大切なことを忘れていた。返事をする余裕もなく、アオキがポケットからボールを取り出してムックルを戻すのと同時に、少女の投げたボールからメェークルが飛び出す。突然の乱入者に、ヒラヒナの意識がそちらを向いた。
     回復。そうだ、ムックルを回復しなければ。背負った鞄を下ろしてきずぐすりを探そうとした時、隣に立つ少女が、ヒラヒナを見据えたままアオキに話しかける。彼女は確か、同じクラスのオモダカだ。まさか教室以外で会うことになるとは思いもよらなかった。
    「回復アイテムはある?」
    「きずぐすりなら」
    「これも使って」
     彼女はそう言うや否やアオキに何かを放り投げる。慌ててそれを掴んだアオキは手の中を見た。げんきのかけらだ。一度も使ったことは無いが、授業で使い方は習ったことがある。
    「あ、ありがと」
     治療のためにボールから出されたムックルとアオキから少し離れたところで、少女のメェークルがヒラヒナと向かい合う。ヒラヒナの放ったねんりきがメェークルに命中し、彼女のポケモンは少したじろぐ。
    「……強いわね、倒すより捕まえましょうか。メェークル、頼んだわよ」
     任せろ、と言うように彼女の相棒が鳴く。
     意識を取り戻したムックルの手当てをしながら、アオキはポケモンに技の指示を出す少女の顔を見上げる。肩までの長さの夜空のような色の髪が、風でふわりと舞い上がる。
     同級生の彼女とは、ほとんど接点がなかった。優等生ではあるがどこか得体のしれなさがあり、感情の読み取りづらい様子に不気味ささえ覚えたことも何度かある。
     そんなオモダカの普段の印象と、今の彼女の様子は全く異なっていた。暗い色をした瞳が爛々と輝く。彼女は既に、アオキを助ける、という目的で戦ってはいない。明らかにバトルを楽しんでいる。
     少しだけ元気を取り戻した腕の中のムックルも、彼らの戦いへ興味を示していた。彼らをじっと見つめている。
    「メェークル、タネマシンガン‼︎」
     彼女の言葉に従い、これまたトレーナーと同じく、楽しげに目を輝かせたメェークルが技を繰り出す。敵の強さに気がついたらしいヒラヒナの技の切れが、先ほどより増した気がした。
     接戦だったが、ついに勝負がつく。
     メェークルの技が当たってヒラヒナが体勢を崩した隙に、オモダカが振りかぶってボールを投げる。ヒラヒナを取り込んだボールは地面に落ち、一度揺れ、かちり、と音を立てた。オモダカが近づいてモンスターボールを拾い上げた。彼女は、手の中に収まったボールに話しかける。
    「これからよろしくね」
     近寄ってきたメェークルを労わるように撫でてボールに戻すと、彼女はアオキの方を向いた。
    「……腕の怪我、大丈夫?」
     はっと我に帰って、アオキは自身の腕を見た。先ほどムックルを庇って受けた傷口からは血が流れ続けている。
    「街のポケモンセンターに戻りましょ。ポケモン達も傷ついてる」
     彼女はそう言って、座り込んだままのアオキの元に近づいた。
    「立てる?」
    「……うん」
     何もできなかったことが途端に気恥ずかしく思えて、アオキは差し出された手を無視して自分で立ち上がった。


     ポケモンセンターでムックル、メェークル、そして新しくオモダカのポケモンとなったヒラヒナの回復を済ませる。アオキの腕の手当ても行ってもらった。休憩所のようになっているセンター前のスペースで、オモダカはヒラヒナの入ったモンスターボールを手に乗せて眺めながら言った。
    「だいぶ気性荒い子だから、懐くまで時間かかりそうね」
     それすらも楽しみだとでも言うように少女は目を細めた。バトルしていた時とは打って変わり、またいつもの教室にいる時と同じ、よく分からない女の子の姿に戻った。ただ、アオキの頭からは、メェークルに指示を出す彼女の、情熱に満ちた声色と表情が離れなかった。
    「……ありがとう。げんきのかけら、今度返す」
    「いいわよ、いくつも持ってるから。……確か、同じクラスのアオキよね?」
     アオキは黙って頷いた。
    「街の外でバトルしてるの初めて見たかも」
    「初めてムックルを野生ポケモンとバトルさせてみたんだ」
    「あのヒラヒナはかなり強かったわよ。太刀打ちできない相手からは逃げなきゃダメじゃない」
     彼女の言う通り、ムックルを危険に晒してしまったことは確かだった。相棒の入ったモンスターボールを両手で握ってアオキが俯いてしまうと、オモダカが少し微笑んで言った。
    「……元気出して。もう少しバトルの練習をしたらそのムックルも、このヒラヒナを倒せるくらい強くなるわよ」
     じゃあね、また教室で。と手を振って背を向けた彼女に慌てて呼びかける。
    「待って。オモダカさん」
     振り返ったオモダカが笑う。
    「オモダカで良いわよ。どうしたの?」
    「……さっきのバトル、凄かった」
    「そう? ありがとう」
     そのような言葉は言われ慣れているのか、流れるように彼女は礼を言った。
     もっと強くなって、彼女と戦ってみたい。先ほど彼女がヒラヒナ相手に行ったバトルよりも白熱した戦いを、いつかムックルにも体験させてあげたい。
    「だから、今度よければバトルを教えて欲しいんだけど……」
     アオキの言葉は続かなかった。オモダカの表情にぱっと光が差し、彼女はアオキの側へ駆け寄る。
    「もちろん!」
     嬉しそうな声で告げて、少女はにっこりと笑った。
    「あ、ありがとう」
    「じゃあ早速今からバトルする?」
    「ごめん、今日はムックルを休ませてあげたい」
    「じゃあ今度ね。また連絡するわ」
     もう行かなきゃいけないの、とオモダカは早口で述べて、スキップをするような足取りで学校の方角へと向かう。制服の後ろ姿が見えなくなるまで見送り、アオキは側にある机の上にボールからムックルを出す。
     小さなそのポケモンの頭を撫でながら呟いた。
    「……今日はごめん。無理させちゃったかも」
     言葉の意味を理解していないムックルは首を傾げた。少年の手に頭を擦り寄せて甘えるムックルの柔らかい羽を撫でて、アオキは呟いた。
    「これから、一緒に強くなろう」
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