「油断ならない」 おれが愛弟子である勇利と付き合い始めて知ったことが二つある。
一つ目は、おれのことを、おれが思った以上に好きでいてくれたこと。そして二つ目は、その愛情表現がとてつもなく不器用なこと、だ。
「びくとる!」
「わっ…! ユウリ、どうしたの?」
リビングのソファーに座るおれの背中に、とん、と小さな衝撃がある。振り向けば、満面の笑みを浮かべた恋人の姿があった。
「びっくりした?」
「うん。すごく驚いたよ」
最近のユウリは、どうやらおれの後ろから気づかれないように近づき、ハグするのがマイブームらしい。驚くほどに可愛い。天使かな。
愛しい恋人は、おれが手にしていた紙の束を指しながら、首を傾けた。
「ヴィクトル、今、何してるの?」
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