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    yuakanegumo

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    yuakanegumo

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    恋人ヴィク勇❄⛸
    こっそりと隠れて、なぜか楽しそうにスマホを眺めるようになった勇利くんに不安を覚えたがヴィクトル、最終には圧倒的にhappyになるおはなし😇🌸
    ヴィ「ケータイ見せて?」

    #ヴィク勇
    vicCourage
    #SS

    結局は君のこと ここ一週間、ユウリの様子がおかしい。

     どこか幸せそうに微笑みながら、スマホの画面を眺めるようになった。何を見ているのかと何気なく尋ねれば、なんでもないよとはぐらかされてしまう。――どうして、ごまかす必要があるんだろう。
    休憩中、ベンチに腰掛けて楽しげにスマホを見つめる恋人を、おれはリンク上から見守った。

    「……まさか、おれ以外に好きな人が?」
    ぽつりと呟いて、慌てて首を振る。ユウリに限って浮気なんてありえない。何よりこの一週間、おれたちは公私共にずっと一緒にいた。おれ以外の誰かと出会う暇なんてないはずだ。

    「ユウリ! もう、休憩終われる?」
    「え?! あっ、はいっ……!」
    声をかければ、驚いたようにびくんと肩をすくめるユウリ。大切そうにスマホを置いてエッジカバーを外す恋人の姿を見つめながら、おれは、今夜、「決着」を付けることに決め、人知れず深く息を吐いた。
     

     その日の夜――夕食を終え、リビングのソファーでくつろぎながら相変わらずスマホを眺めている恋人の背中へ、不意打ちのようにおれは声を掛けた。
    「ゆーうり! 何見てるの?」
    「わっ…! 驚かさないでよ、びくとる!」
    ユウリは動揺しながらも、こちらに見えないようごく自然にスマホの画面を伏せて背中へと隠してしまう。その手の動きを追いながら、おれはユウリの隣へと腰を下ろした。

    「……最近、ずっとスマホみてるよね?」
    怖がらせるつもりはない。これ以上ないくらいの笑みとできる限りの優しい声で尋ねる。
    「そ、んなことないと思うけど……」
    「うそ。熱心に何見てるの?」
    「……あしたからのすけじゅーる、」
    わずかな沈黙の後で、もごもごと呟かれた言葉。分かりやすく視線が泳ぐ。おれはわざと深いため息をつきながら、「証拠」が映されたスマホの画面を恋人の目の前へと突きつけた。

    「へえ、こんなに嬉しそうな顔して?」
    そこに写っているのは、リンクのベンチに座りスマホを見つめるユウリの姿。アーモンド色の眼差しは、誰か愛する人を見つめるようにきらきらと輝いている。ユウリの顔が一瞬で真っ赤になった。

    「あっ! なんで僕の写真撮ってるの!?」
    「証拠」を掴もうと伸ばされたユウリの手からおれはスマホを遠ざけると、恋人の目をまっすぐに見つめながら、言った。
    「おれはユウリのこと、信じてるよ。……でも、不安なんだ。はっきりと言って欲しい。もし、おれの他に気になる人ができたなら――」
    おれの他に気になる人が――自分の発言に動揺する。そんなことがもし、起きていたならば……それ以上なにも言えなくなってしまう。

     気まずいその沈黙を破ったのは、今にも泣きそうな顔でおれをじっと見つめていた恋人だった。
    「ヴィクトル! ごめんなさい……!」
    次いで勢い良く、頭を下げるユウリ。
    「ぼっ、僕……ヴィクトルのこと、こっそり『盗撮』してました……!!」
    「えっ!? 盗撮?」
    「……これ、」
    そう言って恐る恐る差し出されたのは、背中に隠していたユウリのスマホだった。すでに画面に開かれていたいくつもの動画ファイルには、練習着を着てリンクに立つおれの姿が映されていた。ヤコフと話し合っているもの、流しで滑っている時のもの、ジャンプ瞬間の動画もある。

    「……おれの、練習してるとこ……」
    うつむいたユウリは何も言わない。
    「これ見て、あんなに嬉しそうにしてたの?」
    そう尋ねれば、ようやくこくんと小さく頷くユウリ。
    「……うん。ヴィクトル、ヤコフコーチとちゃんと練習出来たの久しぶりだったでしょ? かっこいいなって思って、ずっと見てたんだ」
    まさか、おれの恋敵がおれだったとは。本物と一緒に住んでるはずなのに、こっそり撮影して画面の中のおれのこと見てたなんて――息が止まる。本当に、おれの恋人は可愛いな。

    「黙って撮影して、ごめんね」
    動揺を押さえようと深い息を吐けば、何を勘違いしたのかユウリが意思の強そうな眉を下げる。その様子がまた可愛らしくて、おれは思わず微笑んでいた。
    「ううん、これからもいっぱい見ていいよ!」
    「ほんと……?」
    「うん、写真も動画も沢山撮っていいからね」
    「……! ありがとう、ヴィクトル!」
    腕の中に飛び込んできた恋人を抱きしめる。おれのことが大好きな、可愛い、可愛いユウリ。

     こんな可愛いパートナーのことを誰かに伝えたくて、出会い頭のヤコフに惚気けまくり、いい加減にしろと説教をされるおれの姿までユウリが動画におさめていたらしい事実を聞かされることになるのは、また別の話だ。

     
    おしまい
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    咲楽優

    MEMO他サイトにて公開しているサウンドノベルです
    バックログで文章を確認出来ないつくりにしていたのでテキストにしてみました
    タイトル【Endless road】
    ※約900字
     ダークファンタジー系
     一部残酷な表現が含まれます
      この物語はフィクションです

    (ひとりごと)
    確かにギャレリアの方が機能は豊富だけど私はこっちも好きです
    あるところにひとりの男がおりました
    男は頭からマントをかぶり、手にはつえを持っています
    その男がどこからやって来たのかは分かりません
    男はある目的を胸に、旅をしていました

    男は旅をしています
    あるとき、耳の長い少年が声をかけてきました
    「ねえ、君はどうしてつえをついているの?」
    男はこう答えました
    「私は足が不自由だからだよ」
    男は曲がった足をさすりながら言いました

    =男は昔、ある国の王様でした=

    男は旅をしています
    あるとき、羽の生えたおじいさんが声をかけてきました
    「おぬしはどうしてマントをかぶっているのじゃ?」
    男はこう答えました
    「それは、私の顔が醜いからだよ」
    男はマントを深くかぶりながら言いました

    男は旅をしています
    あるとき、尾びれの生えた女が声をかけてきました
    「あなたはなぜ旅をしているの?」
    男はこう答えました
    「ひとりぼっちはさみしいからだよ」
    男は遙か彼方を見つめながら言いました

    =男は昔、大きな罪をおかしました=

    花ほころぶ丘をこえ、砂塵(さじん)の嵐をぬけました
    海を渡り、広い草原にたどり着いたところで男は腰をおろします
    野原にはゆるやかな風が吹い 943