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    sesekomasi

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    sesekomasi

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    ネタだし:自分
    書いたの:AIのべりすと先生
    でお送りします

    心中したい鬼とツボがおかしい小説家皺だらけの手が、わずかに残った力で自分の手を握り返した。その力の弱さに、綺麗なまま自分の手に、目の前にいる人間の終わりの気配に、埋められない壁を感じてしまう。
    「お前は、もう死んでしまうのか」
    語りかけたところで返ってくる言葉はない。彼はとうに言葉をうしなっている。
    「どうしてお前たちは俺を置いていくんだ、なぁ……」



    「なぁike」 
    「どうしたの?」

    voxが語りかけるとikeは読んでいた本から顔を上げてこちらへ顔を向けた。恋人の家に来てまで本を読む精神は少し理解できないが、この男のそういう性質は好きだった。

    「俺は君が失われることが残念でならない」
    「はぁ」

    Ikeはまた何か言い出したな、と言いたげな表情で相槌を打つ。voxは構わずに続けた。

    「俺は幸運にもこうしてお前と出会えて、さらにはこうやって逢瀬を重ねる関係にさえなれた。だが俺はお前のいない世界に耐えきれるだろうか?もしそうなったらきっと俺は生きる意味を失ってしまうだろう。それぐらいには愛しているんだよ、ike」
    「ふぅん」

    相変わらずIkeの反応は薄い。興味なさそうに本に視線を戻してページをめくるばかりだ。
    しかしvoxはその反応に慣れている。というより、それが普通なのだと思っている。だからいつものように、淡々と話すだけだ。

    「俺は死ぬときは一緒がいい。お前が死んだ後、俺は一人で生きていく自信がない。だから一緒に死んでくれないか?」

    するとIkeは再び本を閉じて、じっとvoxを見つめる。その瞳に映る男の姿は普段から考えられない、とても情けない顔をしていた。
    沈黙が続く。やがて、Ikeは口を開いた。そこまで大きな声ではなかったが、静かな部屋にはよく響いた。

    「残念だけど、それは無理だよ」
    「どうして?」

    間髪入れずに問い返す。断られるとは思っていなかったからだ。
    そんなvoxに対して、Ikeは少しだけ困ったような笑顔を見せた。そしてゆっくりと、諭すように言った。

    「僕の人生は僕のものだから。それを君に捧げる気なんてさらさら無いよ」

    死ぬ時も、僕が死にたい時に死ぬ、それだけさ。
    そう言ってIkeはまた本に視線を戻した。


    Ikeは目を伏せたまま本を読むをフリをして口元を本で隠す。今にも笑い出しそうになる口を隠す必要があった。
    おかしな話だ。人間でもない男がまさか心中しようだなんて、一緒に死ねるわけがないのに。可笑しくてvoxの表情を確認することもできない。
    Voxの住む部屋に恋人として来るようになってから、ikeは度々彼の人間でない一面をよく見るようになった。ちょっとした傷が次の日に綺麗に無くなっているなんてことは些細なことで、指の力だけでティーカップを駄目にしたこともあるし、足で開けたドアを壊したこともある。初めはいちいち驚いていたが、段々と呆れるだけになってきた。
    ただひとつ、今でも不思議だと思うことがあるとすれば。
    (なんでこの男はこんなにも人を愛せるんだろうな)
    Voxにだって、自分が人の形をしているだけの別物なのは分かりきったことだろうに。
    だからこそ、彼がこうして今やっと気づいたとかのように将来の絶対的な別れを悲しんでいることが不思議で、不釣り合いで、可笑しい話だった。

    「……っふ、はは!ごめんっ、我慢できない……」

    堪えきれずに笑いが漏れて、止まらなくなる。視界の端に目を丸くしたvoxが見えてもっと可笑しくなってしまう。

    「ike?どうしたんだ」
    「ごめん、君がちょっとッ……っふ、お、面白くて、ふふ」

    ああ、だめだ。声が震えてしまう。涙が出そうだ。こんなにもおかしい。
    Ikeはただの人間だ。Voxが殺そうと思えばすぐにでも殺せるだろう。この心中の誘いを受け入れたら、それこそ嬉々として。
    (そのまま僕を殺して、その後に自分が死ねなかったことに絶望するんだろうな)
    つくづく可哀相な生き物だ。何百年と生きてきて、心中なんて非現実的な夢に縋ろうとしている。

    「心配しなくても、ちゃんと君の目の前で死んであげるよ」

    そう言って笑ってやる。それを聞いたvoxの顔に浮かんだ表情を見て、また笑い転げたくなった。
    Voxは人間ではない。彼は自分には想像もできないほど長い時を生きてきて、その中で数多の出会いと別れを繰り返してきたのだろう。そして、自分は彼の初めてでも唯一でもない。別にそれでいい。今日、こうやってikeに心中の誘いをしてきたのも、大方過去に死に別れた恋人を思い出したとかだろう。
    本人からちゃんと話を聞いたことはないが、一緒にいるうちに察せるものはある。Voxが繰り返した別れの数を人間であるikeは測れないが、彼は出会った人間の死に目を忘れることがない。彼は過去に愛した人間を今でも愛しているし、生きている人間と平等に愛することができる。そういう愛の性質を持っていた。過去に囚われているくせに今も愛することをやめないところを、Ikeは可愛らしいとさえ思っている。そんなところに絆されてこんな関係になってしまったのだ。

    だけど、この男と一緒に死んでやる必要はない。自分のことを唯一にしない男のために、どうしてわざわざ自分の人生を捧げる必要がある? Ikeからしてやることは、可哀相な悪魔に終わりを見届けさせてやるくらいだ。せいぜいikeが息絶えるその瞬間にその紅い瞳に涙を溜めて、後悔すればいい。

    そして、いつか自分を殺したくなるといい。
    そうして死ぬ時が来たなら、その時はお前を残して死んであげるよ。
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