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    伊那弥彪

    ラクガキと二次創作文物置。支部にアップしたりする。

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    伊那弥彪

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    オメガバース、転生パロ宇妓、梅ちゃん主役話。ある方のツイートネタをお借りしました(*˘︶˘人)感謝☆オメガバースについての説明はかなり割愛してます…

    ##宇妓
    ##オメガバ
    ##転生パロ

    生まれ変わったら娘でした何回生まれ変わってもアタシはお兄ちゃんの妹になる絶対に

    そう誓ったもの。だからアタシはまたお兄ちゃんの妹に生まれ変わるって信じてた。
    妹に生まれ変わって、またずっとお兄ちゃんと一緒にいる。絶対離れない。今度こそ2人で幸せになるんだって。
    そう信じてたのに……

    艶のある美しい白髪の少女・梅は、テーブルに並べられた朝食を前に深い溜息をついた。別に朝食に対してついたわけではない。寧ろ並べられた朝食は大好きなものだった。何故ならその朝食は梅が最も大好きな者が作ったものなのだから。

    「どうしたぁ梅ぇ?溜息なんかついて。何か幼稚園で嫌な事でもあったのかぁぁ?」

    エプロン姿の、うねりのある特徴的な黒髪と、個性的な痣を顔に持つ男が梅の顔を心配そうに覗き込む。

    「ううん!何でもないよー!」
    「本当かぁぁ?」

    大好きな人に心配かけまいと梅は満面の笑顔を向け、「いただきまーす!」と手を合わせ朝食に口をつけていく。程よく焼かれたトーストに適度に塗られた苺ジャム、ふんわりとしたスクランブルエッグにこれまた程よく焼かれたベーコンと、自分の好みにあった朝食を美味しそうに頬張っていく梅。

    (やっぱりアタシの好みをよく分かってる!さっすがアタシの……!)
    「はよ〜。あ〜腹減ったぁぁ」

    自分の好みにあった朝食を美味しく食べていた時、ダイニングに梅が耳に入れたくない声がやって来た。

    「おッ、梅。もう飯食ってんのか。早いなぁお前は」
    「……」
    「おおーい、梅〜?」

    後ろから声を掛けてくるその存在に梅は振り向く事をせず、返事もしないまま黙々と朝食を口にしていく。

    「何だ?もう反抗期か?」
    「お前、梅が怒るような事したんじゃないだろうなぁぁ?」
    「何もしてねぇよ。夕べだって普通だったろ?」
    「まぁ確かに…」
    「……」

    そう。昨夜までは梅は背後の存在を無視してはいなかった。寧ろ自ら駆け寄ったりと懐いていた。それが何故突然この様な塩対応となったのか…
    それは、梅が前世の記憶を取り戻したから。前世では背後の存在を嫌っていた梅は、その存在が身近にいる今世が非常に納得いかないものであった。そして何より納得いかないのが…

    「なぁ梅ぇ。どうしてパパを無視するんだぁ?ママだけにこっそり教えてくれよ」

    優しい声色で、梅の大好きな人・妓夫太郎は微笑みを浮かべて梅の頭を優しく撫でながら問い掛けてきた。
    そう…今世で梅は、大好きな人…前世で兄だった妓夫太郎と、大嫌いな男…前世で自分たち兄妹を死に追いやった天元との間に産まれた子供なのだ。
    何故男同士の2人の間に子供が産まれたのかというと、前世ではまだ発見されていなかったが、この世には男と女の第1の性と、アルファ/ベータ/オメガの第2の性が存在する。色々と割愛するが、アルファ性の人間は、例え女性であっても他の女性やオメガ男性を妊娠させる事ができる。そしてオメガ性の人間は、例え男性であっても妊娠し出産する事が可能なのだ。そして、天元はアルファ男性、妓夫太郎はオメガ男性で2人はれっきとした番夫婦なのだ。だから梅を産むことができたわけなのだが、

    (アルファって何よ!オメガって何よ!!何でお兄ちゃんがアイツと結婚してるのよ!!何でアタシお兄ちゃんから産まれたのよ!!!もう!!わけわかんないよぉぉぉ!!)

    前世の記憶を取り戻した本日早朝の梅の心の叫びである…。

    「梅?」
    「………」

    心配そうに自分を見つめてくる妓夫太郎に、梅は口を尖らせムスッとした表情を浮かべる。それは妓夫太郎に怒っているのではなく、今世の自分の立場に不満があるからなのだが、そんな事を妓夫太郎や天元が知る由もなく…黙り込んでしまった梅を妓夫太郎はひたすら心配し、オロオロと取り乱し始める。そんな妓夫太郎を見て「心配かけちゃダメだ」と思った梅はとある事を思い出し…

    「…昨日、パパ、パソコンで女の人とお話してた」
    「え?」
    「あぁ。リモート飲み会の事か。……え?それで?」

    天元の言葉に梅はコクンッと頷く。予想だにしなかった梅の言葉に天元と妓夫太郎は目を丸くした後、プッと笑いをこぼしアハハッと声に出して笑い始める。

    「そっかそっかぁぁ。梅はパパがその女の人に取られたと思ってヤキモチ妬いてたんだなぁぁ」
    (違うもんッ。お兄ちゃん取られたからだもんッ)
    「マジかぁ〜!心配しなくてもパパは梅とママが1番大切だぞッ」
    (頭撫でないで!アタシの頭撫でていいのはお兄ちゃんだけなんだからぁぁ!)

    本心を頑張って隠しながら、梅は顔を真っ赤にして頭を撫でてくる天元の手を振り払う。そんな梅の反応に「照れんな照れんな」と天元は構わず梅の頭を撫で回す。

    「うううぅぅッ!ヤメテェ!!」
    「あ〜もうそんなにぐしゃぐしゃにするなよなぁぁ。折角綺麗にとかしたのにぃ。なぁ梅ぇ」
    「もうパパ嫌い!!」
    「えッ……」

    梅から嫌いと言われ、天元はようやく梅の頭から手を離した。余程ショックだったのか、その後は視線を泳がせて妓夫太郎に助けを求めるように視線を送る…が、妓夫太郎は「やり過ぎ」と呆れた視線を送り、天元はガックリと項垂れてしまう。

    「ほらほら。ショック受けてねぇでさっさと飯食えや」
    「おぉ…」

    天元がテーブルの席に着いた時、梅は朝食を食べ終え手を合わせ「ごちそうさまでした!」と元気に告げる。

    「んじゃ髪とかしに向こうに行こうかぁぁ」
    「うん!」

    天元によってボサボサになった梅の髪をとかす為、妓夫太郎は梅の背を押しながらダイニングから出て行く。その為、天元は一人ぼっちの寂しい朝食となってしまった…そんな天元に梅は内心「いい気味!」と思いながらほくそ笑み、妓夫太郎に連れられ身支度品を置いている梅の部屋へと向かって行く。
    部屋に着くと、妓夫太郎は梅をクッションに座らせ、可愛らしい櫛で梅の髪を慣れた手付きで梳いていく。痛まないように優しく梳いていくその手付きはとても気持ちが良く、その心地良さに梅は機嫌を良くし、鼻歌を口ずさみ始めた。

    「梅は歌も上手だなぁぁ」
    「えへへ〜」

    もっと褒めてお兄ちゃん!と心の中でウキウキワクワクしながら、妓夫太郎の次の言葉を待っていると、

    「髪の毛もなぁぁ、パパに似て艷があってサラサラだしなぁぁ」
    (……ん?)
    「目もパパに似てパッチリした可愛い目で」
    (え?ちょ、ちょっと待って…待って待って)
    「本当、梅はパパに似て美人さんだなぁぁ」
    「………(な、何で……)」

    何でアイツの事ばっかり言うのぉぉぉぉぉぉ!!しかもアタシがアイツに似てるとかぁぁぁぁッ!!
    そう心の中で絶叫する梅…

    「歌が上手いのもパパ似なのかもなぁぁ。パパは絶対音感持ってっからなぁぁ」

    梅の心の中の絶叫等知らない妓夫太郎は微笑みながらそう告げてくる…無論悪気は一切無い。それが分かっている梅は反論する事ができず、わなわなと体が震えてくる。

    「ん?どうしたぁ梅ぇ?」
    「おに……ま、ママは、パパの事が好き、なの??」
    「へ?」
    「さっきからずーっとパパの事ばっかりで……」
    「勿論パパの事は大好きだぞぉぉ」
    (躊躇いなく言った!?)

    躊躇なく夫である天元を大好きと告げてきた妓夫太郎に、梅はショックを受けてしまう。妓夫太郎は…兄は自分だけを見ているものと思っていたのに。今も2人っきりだというのに、天元の話を振ってきて…

    (あれ?でも何でだろ…胸の中がポカポカする…)

    嫌な筈なのに…大好きな兄が大嫌いな男に取られて嫌な筈なのに、何故か梅の心は温かいもので満たされていく…

    「ママがパパの事大好きだから梅はママとパパのとこに来てくれたんだからなぁぁ。パパがいなけりゃママは梅に会えなかったんだぞぉぉ」
    (ママ…パパ……あ、そっか……)

    妓夫太郎の優しい声色に包まれながら、梅は理解した。
    この温かいものは、今世の自分だ。今世の…妓夫太郎と天元の事が大好きな自分……2人の大切な娘である自分の心だ。前世の記憶を思い出してすっかり忘れていた…自分は本当に2人の事が大好きなのだと。仲良くてお互いを想い合ってる2人が大好きなのだと。

    (…バッカみたい。一人でムキになっちゃって)

    今自分が生きているのは前世ではない。今世なのだ。それを理解した梅は自分の言動が恥ずかしく思えてきてしまった。
    今自分の後ろにいるのは兄ではない。母親だ。自分を産んでくれた母親。そして、大嫌いだと思っていた男は父親。自分を大切に守ってくれる頼りになる父親。2人共自分にとってかけがえのない、大切な両親…2人がいたからこそ、自分はこの世に再び生を受け、幸せな家庭で育つ事ができている…全ては2人のおかげ……自分を愛してくれる2人のおかげ。

    「……ぅ、梅も」
    「ん?」
    「梅も…パパの事、好き……」

    照れ臭そうに頬を赤く染めてもじもじとしながら妓夫太郎に伝えた言葉。それは梅の本当の気持ち。もう大嫌いな男だとは思わない。大切な、唯一の自分の父親。
    その言葉に妓夫太郎は優しい微笑みを浮かべ、「パパにそれ言ってあげようなぁぁ」と梅を優しく包み込むように抱き締める。

    「でもでもママの方が好き!!!パパよりママの方が断然好きぃぃぃ!!!」

    そう叫んでくるりと体を回して妓夫太郎に抱きつく梅。そんな梅に妓夫太郎は「ママも梅の事大好きだぞぉぉ」と伝え、ギュッとその小さな体を抱き締める。

    (ごめんねママ…もう少しだけ…)

    もう少しだけ、自分の気持ちが整理つくまでは、いっぱいいっぱい甘えさせて。この温かい胸の中で、いっぱいいっぱい甘えさせて。あの雪の日ようにいっぱいいっぱい温めて。
    きっといつか、アナタから離れられるようになるから…アナタがアタシ以外に大事な人を見つけたように…。





    ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





    「パパ、嫌いって言ってごめんね」
    「ん?全然大丈夫だぞー!」

    髪をとかし終え、幼稚園の制服に着替えて部屋から出てきた梅は、父である天元に謝罪をし、その謝罪を天元は笑顔で受け入れ、その小さな体を抱き上げては優しく抱き締める。

    「怒ってない?」
    「怒るわけねぇだろー。梅の女心を理解してなかったパパがわりぃんだからな」
    「うん!女心理解してないパパが悪い!」

    笑い合う天元と梅。いつもの父娘…いつもの風景に、妓夫太郎はホッと胸を撫で下ろす。

    「梅ぇ。そろそろ幼稚園のバス来るから靴履いて玄関で待ってろぉぉ」
    「はーい!」

    妓夫太郎のその言葉に床に下ろされた梅はとことこと玄関へと向かって行く。その小さな背中を見ながら天元は、上着を着て梅の後を追おうとした妓夫太郎の腕を掴み、自分の元に引き寄せた。

    「は?急に何……」
    「そろそろ2人目欲しくね?」
    「いや本当急に何なんだぁぁ」
    「梅が大きくなってからって約束だったろ。梅は来年年長だし、そろそろ良いかなぁって」
    「いや…んな事朝から言われても……」
    「んじゃ、話の続きは夜にな?」

    そう微笑みながら告げて、天元は妓夫太郎の唇へ唇を重ねていく。触れるだけの口づけだったが、突然の事で心の準備をしていなかった妓夫太郎は目を見開き顔を真っ赤に染めてわなわなと体を震わせてしまう。
    そんな妓夫太郎に天元はクスッと笑って、その紅潮した頬に手を当て、

    「本当お前はいつまで経っても可愛いな。さすが俺の嫁」
    「ッ〜!お、お前も早く仕事の準備しろよなぁぁッ!」
    「あーはいはい。んじゃいつもの行ってきますのキスな」 

    そう言って、再び妓夫太郎へ触れるだけの口づけをする天元。そんな天元を妓夫太郎は「早よ行けぇぇ!」と突き放し、梅の待つ玄関へと向かって行く。それは梅の知らない宇髄家夫婦の日常的風景であった。

    その夜……
    一緒に入浴している妓夫太郎と梅。妓夫太郎は梅に笑みを浮かべながら話し掛ける。

    「なぁ梅ぇ」
    「何〜?」
    「弟か妹、欲しいと思うかぁぁ?」
    「……え」

    梅の思考は停止した。
    弟か妹…それはつまり…両親が事を致すという事で……

    「……メ」
    「ん?」
    「ダメダメダメダメ!絶対にダメェェェェ!!まだまだダメなのぉぉぉぉッ!!!」

    泣きじゃくりながら妓夫太郎の胸に飛び込んでくる梅…そんな梅を妓夫太郎は困惑しながら「あ〜うんうん。分かった分かったぁ」と言いながら優しくあやす。

    (まだアタシの気持ちが整理できてないからそれは本当に絶対にダメェェェェェェッ!!!)

    梅5歳、中身は気難しいお年頃。

    風呂から上がり、梅を寝かしつけた妓夫太郎は、天元へと報告する。

    「梅が完全拒絶したから2人目はまだだなぁぁ」
    「え?何?梅、もう赤ちゃん返り?」
    「いやまだ2人目できてねぇから」

    宇髄家の第2子誕生はいつになる事か……。
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