喧嘩中…なんですか?雪がちらつき出す冬のある日…ここ宇髄邸では怒号が飛び交っていた。
「あっ!?テメェ誰に対して口きいてんだ!?」
「るっせぇぇッ!この筋肉ダルマがぁぁ!!」
「テメェ…それが師匠に対する態度かッ!?」
「ハッ!!師匠面されてもなぁぁッ!!アンタなんか師匠として失格だろうがぁぁッ!!」
「んだとゴルァァァッ!!」
音柱・宇髄天元と、その継子・謝花妓夫太郎が激しく言い争う声が響き渡る…額に青筋を立て、目を血走らせては掴みかからん勢いの二人…
「テメェにはまだまだ教育が必要みてぇだな!?あぁッ!?」
「アンタみてぇな自分勝手な野郎から教わる事なんてねぇんだよなぁぁ!!」
「言いやがったな!?そこまで言うならさっさと出ていけや!!」
「あぁ出ていってやるさ!!清々するわ!!」
宇髄の言葉を受けて、妓夫太郎はドカドカと激しい足音を立てながら玄関へと歩いていく。
怒りと興奮が収まらぬまま、妓夫太郎は自身の靴を履いて屋敷から出ていこうとするが、
「ちょっと待て!!」
「あ"っ!?」
「大事なもん忘れていってんじゃねぇよバカタレ!!」
後ろから荒い声で呼び止めた宇髄の手には、妓夫太郎の日輪刀である二本の鎌。それを宇髄は「ほらよッ」と差し出し、その差し出された鎌を妓夫太郎は宇髄を睨みつけながらバッと荒く受け取る。
「んじゃぁなぁぁッ!!」
そう告げて戸に手をかけようとした時、
「ちょっと待て!!」
「あ"ぁッ!?」
再び宇髄に呼び止められ、妓夫太郎はキッと睨みつけながら後ろを振り向いた。
「もう外は寒ぃんだから、んな袖無しの隊服だけじゃ凍えんだろうが!!」
「これはアンタが用意した隊服だろうがぁぁぁッ!!」
「良いから上着着てけ!!お前元々病弱だったんだからそれだけだと風邪ひくぞ!!」
「んなもんアンタのおかげで治ったわ!!」
「後、首巻きな!!」
「それ俺がアンタに編んだやつ!!」
「今度お前用の買ってやっからとりあえず今日はこれ付けてけ!!」
「派手な柄とかはやめてくれよなぁぁぁッ!!」
「後、上着に財布も入れてっからな!腹減ったらちゃんと飯食えよ!!」
暖かそうな半纏と毛糸で編まれた首巻きを宇髄の手によって身につけさせられていく妓夫太郎。そして、ポンポンと背中を軽く叩かれて、
「よし!行ってこいや!!」
「行ってきます!!」
睨み合いながら挨拶を交わして、妓夫太郎は宇髄に見送られて屋敷から出ていった……
そしてその日の夜……
「たでーまー」
「おう。おかえりー」
妓夫太郎、無事帰宅。
冬の寒さに身を震わせながら、玄関から入ってくると、部屋着に身を包んだ宇髄がすぐさま出迎えてくれた。どうやら玄関付近で待っていてくれたらしい。
「冷えたろ?一緒に風呂入るぞ」
靴を脱いだ妓夫太郎を宇髄は抱き上げて浴室へと向かっていく。
冷えた身体に宇髄の体温が伝わってくる。寒さからなのか、はたまた照れからなのか、妓夫太郎の頬は赤く染まっていく。
「…やっぱお師さんはあったけぇなぁぁ」
「おう。風呂入るまでは俺で温まっとけ」
「…昼間言い過ぎた。ごめん」
「俺も大人げなかったわ。悪かった」
昼間の大喧嘩をお互いに謝罪し、微笑み合う二人…これで仲直り。
「でも梅から貰った饅頭食ったのは許さねぇからなぁぁ」
「悪かったって。今度ふぐ刺し食いに連れてってやっから」
「それアンタが食いてぇだけだろぉぉ」
「んじゃお前の好物教えろよ」
「梅がくれたもんか、アンタと一緒に食うもん」
「んじゃふぐ刺しで良いな」
この二人はこれからもきっと、些細な事で喧嘩をしてはすぐ仲直りしていくでしょうね。