原初ブレバンネタ辛勝、としか言えない。2体のデスドライヴズを少なくない被害でやっとこさ倒した。
バーンドラゴンは大破しバーンブレイバーンにはなれないだろう。
スペルビアは片腕と片足をもがれてしまいとてもじゃないが、戦力にはならないだろう。
ブレイバーンも片腕を落とされている。
塔は全部で7と観測されていた、その筈だったのに。
目の前にはスペルビアですら知り得ていない謎の塔がある。
冷や汗が止まらない、ブレイバーンですら息を呑んでいた。
「ぶ、ブレイバーン、何だあれはッ…?!」
『…すまない、イサミ私ですら…あれは…分からない…』
「オジサマ、あれ何…?私見たことない…?!」
『我も、知らぬ物だ…我らは7体のはず…なぜこのタイミングで8体目がッ…?』
「どういうことだ?!母艦はもうクーヌスとやらが壊したんだろう?!新しいやつなんて…」
『…まさか爆破される前に外れたのか…?いや、しかし…』
すると俺たちの困惑を見抜いた様に塔の上部がガコンと音を立てて開く。
出てきた姿に俺達は絶句した。
出てきたデスドライヴズの姿は初めて会った時のブレイバーンにそっくりだったからだ。
『ガガピガガガピ、ガガガガ』
「お、おい…ブレイバーン!どういうことだ!!」
『ガガガッ…ソ乃コエは、い、サミ…』
「え」
『イサミか?その声はイサミ…イサミ…私のイサミ…』
『イサミ、聞くんじゃない。惑わすための揺さぶりだ』
『黙れ、よくも私のイサミを取ったな貴様…!!本来であればイサミは私に乗り私と共にこの世を駆ける筈だったのに〜…!!!!』
塔から降りてズカズカとブレイバーンに近寄りガスガスと頭を突いてくるデスドライヴズ。
困惑しているのは俺だけではない様だ。
何も良くない。
『あだ、あだだだっ!何を言っている!イサミは私のイサミだ!!今までもこれからもそうだ!!」
「お前のじゃないしこれからもない」
『ふざけるなっ!!イサミは私のだ!私に乗る筈だったのだ!!熱くパトスを交わし合い溶け合うつもりだったのに!!』
「捕食か何かか?」
『ぁ!!イサミぃ!!何でそんな気持ち悪い奴に乗っている?!私の中の方が心地がいいのに!!冷暖房完備で風呂トイレ別に加えてキッチンもあるのだぞ!?3口コンロだぞ?!』
「マンション?」
『馬鹿め!!そんなので揺らぐイサミなものか!居心地の良さなら私が一等地だ!』
「気持ち悪さも一等だよ、何だよこいつ…お前の記憶同期されてるんじゃないか?…スペルビアー…」
『困ったら我に投げる癖をどうにかせい。我動けぬのだぞ』
「だ、だって…どっちも気持ち悪い」
『イサミぃ!!そんなやつから降りろ!!汚染されてるに違いない!!』
『言うに事欠いて貴様!!汚染だとぉ?!!私の清らかで純潔と言う言葉しか似合わん可憐なイサミに何をぉ?!!』
「下ろしてくれ…」
2人?はずっとくだらん口論しかしなくなりなんなら取っ組み合いになりガチャガチャと音が響く。
ごすっ!!とブレイバーンのアッパーが決まるが、すぐさまフックがブレイバーンの横っ面を捉える。
片腕な分バランスが悪いブレイバーンが大きくよろけるが気にせずに蹴りをかます。
『ぐふっ?!…ぃか?!イサミと私は数十年に渡り互いを見つめあった仲なのだぞ?!小さい頃から見守ってもきている!!』
『ストーカーの言い訳じゃないか!!大体デスドライヴズの母艦を捉えられるわけないだろう!!何の話をしてるんだ?!』
『は?何をいう、こういう長い筒でだな…』
「…まさか望遠鏡のこと言ってるのか?!」
『は?じゃあなんだ、望遠鏡で見てた星を自分を見てると勘違いしたのか?!自意識過剰すぎやしないか?!』
「お前がいう…?」
「オジサマ!動けそう?!イサミとスミス助けなきゃ!」
『し、しかしだなルル…』
「大丈夫、ルルとオジサマならブレイバーンたちと一緒のこと出来る!」
なにやらスペルビアとルルが一手を下す様だ。
それではあればサポートするしかない、一刻も早く俺は終わらせたいので。
「ブレイバーン、2人が何かやりそうだ。気を引いててくれ」
『ぬ、…うむ。了解した』
『何をコソコソと…さっさと貴様は私にイサミを返上しろッ!』
するとバーンブレイドに似た武器を出し斬り掛かってくる。
右腕を吹き飛ばされブレイドも遠くにある今防戦一方になってしまう。
どうしたらいい、だめだ気持ち悪すぎて考えたくない。
『ルル、何を?!』
「大丈夫、今の私とオジサマなら行ける!がっーたい!!」
『合体だな!え、がっ』
何やら聞き流せない単語が出てきたが大破したはずのバーンドラゴンが光り輝きスペルビアの方へ向かっていく。
もはや思考放棄した俺はおぉーすげーとしか思えなかったが。
すると形状が変化しさらに騎士らしさが増した姿になった。手足も初めてバーンブレイバーンになった時と同じ様に回復した様だった。
『うぉ、敵ながら何と見事な姿…!かっこいいぞ!!』
『うむ、さすがスペルビア…!!尻尾がな可愛いんだスペルビアは』
『ほうほう、ちょっと短いのがハムスターの様で可愛らしいな』
「セクハラやめろお前ら」
恥ずかしさでプルプルし始めたスペルビアは耐えきれずに槍を振り回す。
『いい加減にせぬか!』
『ふ、しかしその程度で私に勝てると思ってるのか?たかだか装甲が増えたところで実力は変わりはしない』
「イサミは渡さない、イサミはルルと!スミスと!ずっと一緒にいる、のっ!」
ルルの咆哮共にスペルビアが偽ブレイバーンへ斬り掛かる。激しい斬り合いの中でブレイバーンはバーンブレイドを拾いに向かう。
塔が光り輝き轟音と共に当たりを吹き飛ばしたがギリギリで武器を取れた。
「おい、何か策はあるのか?!」
『スペルビアが奴の相手をしてるうちに私達は塔を破壊するぞ。戦力を削ぐ、彼が私を模倣した存在であればバーンドラゴンに似たやつもいるはずだ…あまりこの様な手は使いたくないが。ハッキングし奪う』
「なんだお前も悪そうな事やるんじゃないか」
『ふっ、私も君に染まってきたかな。…絶対に君を渡しはしない、イサミ』
「大丈夫だよ…相棒。あんな奴に惹かれたりしてねーからやってやろうぜ」
塔へ向かいゾルダートテラー達をなんとか斬り伏せていく。中へ入ればバーンドラゴンそっくりの飛行体が鎮座していた。
がしょんとハンドルが出てきて回すとブレイザサモンとデカく叫びハッキングを仕掛ける。
『イサミ』
「ん?何か問題か?」
『いや、そうじゃない。…この戦いが終わったらどうするんだ?』
「…、考えてなかったな」
制服と共に立場を返した俺は所謂無職という奴だ。
戦いへ行く為に自衛隊は辞めてしまったし、この先のことなんて考えてなかった。
戻ることすら考えていない。
「お前はどうする気なんだ」
『私か?私はこの星が完全に復興するまで手伝うつもりさ、そのあとはまだ考えてないな!』
「そうか、ならお前の手伝いでもしてようか」
『そうだな、2人で…いや、スペルビアやルルもいる。4人で救おうじゃないか』
「それもそうだな、4人で地球を助けようぜスミス」
がちゃんっ!と急に大きな音を立ててブレイバーンはブレイドを落とした。
『い、イサミ何か間違えてないか?お、私は』
「何がだよ、スミスだろお前?ルルから聞かされたけど思い返してみれば納得するとこあったからそうなんだろ?」
『えふぇ?ルル気がついて?!』
「まぁいいんだよ、そのことは。あとでぎっちり聞かせてもらうからよ。早く終わらせろハッキング。バーンブレイバーンになって加勢すんぞ」
『ちょ、ちょっと待ってくれ?!俺そんな簡単に冷静になれないぞ?!』
「なれ、俺の相棒なら直ぐによ。あーあ、やっぱあっちの方が良さげがなーー」
『ちょ、酷くないかイサミっ?!なんかもう少しあっても…』
「うるせぇ、今までの仕返しだっつーの。こんくらいで済んで良かったと思え」
するとバーンドラゴンの色が青くなりハッキングは完了した様だ。
「口上めんどくさいから省くぞ」
『え?!そんなイサミそんな!!』
「ほらやんぞ、合体ー」
『雑すぎるぞイサミっ〜!!!!』
文句しか垂れてこないがレバー引いちまえばこっちのもんなので有無を言わさずレバーを引きバーンブレイバーンになる。
塔の内部から破壊して爆風と共に出ていく、どうやらまだ善戦してくれていた様でそこまで大きな被害は出ていなかった。
『待たせたな!!』
『遅かったではないか!』
「イサミ!スミス!!」
『ルル!終わったら話があるからな!!』
「ガガピッ?!イサミまさか話したの?!」
「別にいいだろ、こいつバレる前にどっか行きそうだったからなヒーローらしくねぇなぁー」
『ぅぐ、ぐぬぬっ…!!』
『まぁ良い、我もこの形態は長く持たぬ…!』
よく見ればバチバチと電撃が走っている。
無理やり合体状態を維持していたのは明白だった、それであればと両肩のキャノンをエセブレイバーンへ標準を定める。
スペルビアが機動力を活かしパチモンバーンの両足を叩き斬る。
その一瞬の隙を突いてブレイブトルネードアークをぶっ放す。
『行くぞ!イサミ!』
「ああ、やってやろうぜスミス!!」
『あ、いやそこはせめてブレイバーンと』
「行くぞ!スミス!!」
『あぁ頑なだぁ…仕方ない!』
『「勇気一刀流奥義ッ!」』
両脇から引き抜いたビームサーベルを連結させパクリバーンへ向かう。
『「ブレイブアブソリュートズバァアアッシュッ!!!!」』
縦一文字に切り裂く。
『そんな、イサミぃっ…!!なぜ私を選ばないッ…!!』
『ちょ、まてイサミ出るんじゃないッ!』
俺はブレイバーンの言葉を無視してコックピットを開ける。
「確かにコイツは不器用で嘘下手くそで面倒くさくて気持ち悪いし変な言い回しはうざったいけどな」
『イサミ?イサミ??』
「だがな、こんな俺を信頼して最後の最後まで付き合ってくれた相棒なんだよ。自意識過剰で見た目まんまパクリのお前なんざお断りだっ!!俺のブレイバーンはこいつなんだよ!分かったらとっとと失せやがれ」
そう言い放ち、コックピットへ戻り模造品にトドメを刺す。スペルビアも並走しならばと動きを合わせてクロスする様にデスドライヴズを叩き切りそいつは最期の言葉すら吐かず結晶となり消えていった。
すると塔産のバーンドラゴンは消失、戻っていた腕も一緒に消えてしまった。
バゴン!!と音をする方向をみたら完全に大破したバーンドラゴンと倒れているスペルビアが居た。
俺もブレイバーンも限界で一緒に倒れ込む。
ルルへ通信を試みるが限界を先に迎えた様で返事がない。
俺も疲れた、きっと終わったことを認識してタスクフォースメンバーが来てくれるだろう。
「スミスー…」
『…、なんだよイサミ』
「帰ったら、カレーとビール飲もうぜ。絶対美味い」
『そうだな…そいつはいい…』
俺も限界を悟り、重くなった瞼を意識と共にそのまま落とす。