小悪魔な弟Ⅱアルバーンから見て、サニーは魅力的な男性だった。
背も高くて、男らしくて、さらに紳士だ。
自分を兄弟のように可愛がってくれる彼に、アルバーンは憧れの目をむけていた。
しかし仲良くなるにつれ、サニーがアルバーンに対して友情以外の想いを抱いていることに気づかざるを得なかった。
パーソナルスペースが近くなった2人が話す時は、決まってアルバーンがサニーを見上げる形になる。
ある日少し調子にのったアルバーンが、サニーの腕にしがみつきながら「おにいちゃん!」と上目遣いで呼んでみたところ、みたこともないくらいに首まで真っ赤にして照れてしまったのだ。
それを見たアルバーンも、サニーへの友情がむくむくと色を変えるのを感じた。
サニーとなら兄弟の域を越えてもいいと思ったのだ。
ことあるごとに、サニーに甘えるようになったアルバーン。
本人は隠してるようだが、あからさまに自分を意識しているサニーの反応が可愛くて仕方がなかった。
きっと彼も、自分と同じ考えを持っていると確信したアルバーンは、あえていつまで彼が耐えられるかと反応を楽しむようになった。
彼が喜びそうな声でよく甘え、おにいちゃん、と慕う。
泊まりに行く回数を増やし、一緒にいる時間を長くする。
一緒に寝ようと隣に並んだ時には、頻繁にトイレに行ったり、次の日の朝は目がギンギンに血走っていた。
サニーをさんざん煽り倒したが、なかなか自分に手を出してこないので、アルバーンはさらに強気に出ることにした。
その日もお泊まりの約束をし、おやつを持って遊びに行く。
サニーが映画を見ようというので隣に座って一緒に鑑賞した。
その日はホラー映画だった。
正直ホラーは得意だ。余裕を持ちながら暗くした部屋で映画を見ながら、たまにサニーがおやつを掴む手にそっと触れてみる。
しかし、サニーはよほど今回の映画の内容が面白かったのか、集中してこちらの意図には気づかないようだった。
アルバーンは少しがっかりする。
予想では、映画に集中できずにソワソワするサニーを横目に楽しもうと思っていたのだが。
この調子だと今何をしてもサニーは反応してくれなさそうだし、目を輝かせて楽しそうに画面を見つめる彼もそれはまた可愛いので、アルバーンは諦めたようにソファに深く座り、次の作戦に向けて準備を整えるのだった。
映画が終わり、サニーがお風呂を勧めてくる。
さて、ここからが本番だ。
言い訳を作ってサニーに先にお風呂に行かせる。
そこで、入浴中の風呂に突撃しようと考えたのだ。
サニーが入浴に向かってから少し時間をあけて浴室へと向かう。
流石に急に黙って入るのは驚かせると思い、簡単な理由をつけて一緒に入ってもいいかと尋ねた。
するとドアの奥でガシャン!と物音がした。
「サニー!?大丈夫?!」
「だ、だいじょうぶ!大丈夫だから・・・ちょっと、シャンプー流すから待って!」
ザー、と急いで身体を流す音が聞こえる。
ひとまず断られはしなかったことに、口元が緩む。
いくらか待って、もう一度声をかける。
「_もうはいってもいい?」
「う、うん!どうぞ!!!!」
ばしゃん、とサニーが湯船に浸かったであろう音が聞こえた。
どんなふうに待っているのだろうとワクワクしながら浴室のドアを開けると、そこにはそっぽを向いて湯船の中で小さくなっているサニーがいた。
きっと裸を見るのが恥ずかしいのだろう。
こちらからも普通に話しかけながら、シャワーを浴びる。
サニーと同じ匂いのするシャンプーとボディソープが密かにアルバーンの好みだった。
サニーはこちらの質問にはぼそぼそと返事をするものの、心ここに在らずというようにじっとアルバーンに背中を向けていた。
そろそろ反応がほしい。
アルバーンは身体を洗い終えると同じ湯船に足をつけた。
そこまで湯船は大きすぎないため、自然と足がぶつかる。
すると、サニーはそっと身を縮めるのだった。
そこまでして避けられるとアルバーンも少し不満である。
「_なんでさっきからこっち見ないの」
思った以上に低い声が浴室に響く。
「えっと、あの、ちょっとのぼせちゃったみたいで、もう、上ろうかな・・・」
一度もこちらを向かずに立ちあがろうとするサニーの腕を引く。
「っあぶな・・・」
バランスをくずし倒れてくるサニー。流石の運動神経で、左右の手で浴槽をつかみ、アルバーンを両腕の中に囲むような体制になった。
サニーと目があったことに嬉しさを感じて彼の目をみてつい微笑んでしまった。
「へへ、やっとこっち見た。」
サニーはアルバーンの顔を見るや否や、全身を真っ赤にさせ、こちらに倒れてきた。
ゴン、とサニーはのおでこが浴槽の縁にぶつかる。
抱きつく形となり、それにはさすがのアルバーンも驚いた。
「わわっ・・サ、サニー?」
ペチペチと肩を叩くが返事がない。
・・・まさか、気を失った?!
「・・・くそ」
なけなしの筋力を使って、気を失ったサニーを寝室まで連れて行った。
ベッドに気を失ったサニーをごろんと寝かせる。
キュっと引き締まった体に、綺麗な筋肉がついている。
整った顔に、そっと手を伸ばした。
睫毛もながく、キラキラと光るブロンドヘアーが眩しい。
アルバーンは、赤くなったサニーのおでこに思わずキスをした。
「思ったより、重症かも。」
ぽつりと呟く。
このままだと眠ったままの彼に悪戯しかねないと、頭を冷やすために水を冷蔵庫に取りに行く。
ぺたぺたと裸足のまま、水を片手に寝室へと戻ると、サニーが身体を起こしていた。
頭にハテナを浮かべている顔をみて、今の状況を伝える。
「おにぃ風呂でのぼせて倒れるんだもん、運ぶの大変だったよ」
「あわわわわ、ご、ごめん ・・・」
サッと顔を青くし、眉を下げあからさまにしょんぼりするサニー。
そんな可愛い顔しないでよ、こっちから誘ったんだから。
愛おしさが込み上げ、アルバーンは微笑む。
さぁ、続きと行こうか。
「水、のむ?」
片手にもつペットボトルを持ち上げ、サニーに問いかける。
「あぁ、うんありがとう・・・」
赤くなったおでこを擦るサニーに近づきながら、アルバーンは持っている水を口に含んだ。
サニーに自分の顔を近づけると、彼は驚いたようにえ、と口を開く。
そのまま開いた口と自分のそれを重ね合わせる。
開いた口へ、水を流し込む。
サニーの喉からゴクリ、と大きな音が鳴った。
口に含んだ水を全てサニーへと流し込み、そっと顔を離した。
アルバーンは欲情に溶けた目でサニーを見つめる。
心臓が高鳴る。
「__いいこと、しよ?おにいちゃん__?」