僕だけに「光ノも素直になればいいのに。」
『・・・恥ずかしいです。』
シュウは部屋でベッドに転がりながら、精神と会話をしていた。
「ヴォックスは君のこともちゃんと好きだよ?」
『それは、わかっている、つもりです。』
「光ノから甘えてくれたら嬉しがると思うけどなぁ」
『私は、闇ノのように、上手く話せないですし・・・、貴方に向けられる彼の声を此処で聞いているだけで幸せなのです。』
自分の内側の人格、光ノシュウはシャイが過ぎる。
お互いの恋人であるヴォックスに甘えるときはいつも光ノはナカに隠れてしまう。
たまには甘えてくれていいんだぞ、としょんぼりするヴォックスの顔をみても、表に出でくることはない。
しかし、彼への愛情は内側から漏れきっていた。
ぶわわ、と浮かび上がる見えないオーラに、ヴォックスも苦笑いをするばかりだった。
そんなに好きなら自分から伝えればいいのに。とシュウは光ノに説得をしているところだった。
そんな言い合いをしていると、二人の主人が帰宅する。
「シュウ、ただいま。」
扉の向こうから愛おしい彼の声が聞こえる。
「おかえり、ヴォックス!」
扉を開けて、おかえりのキスを一つ。
「着替えてくるからリビングで待っていてくれ」
「はーい」
ほら、もう、返事は一つだけ。
先にリビングに降りて、夕飯の準備をする。
といっても夕方に作っておいたので温め直すだけなのだが。
火を入れて、盛り付けて、ダイニングに並べる。
「シュウ、いつもありがとう。」
後ろからぎゅっと優しく抱きしめられる。
「んへへ、どういたしまして。」
二人で向かい合ってご飯を食べた。
食べ終わると、ソファに座っているヴォックスが手招きする。
「おいで、シュウ。」
シュウはてちてちとヴォックスの隣に座ると、ニヤリと笑って目を閉じた。
『─僕のマネでもいいから、素直になってみなよ』
隣に座るシュウを纏う空気の匂いが変わる。
「・・・シュウ、膝においで。」
ぽんぽん、と膝を叩くと、ちらりとこちらを向いて、身体を固くする。
「ほら、いつもしてるだろう?」
脇に手をいれて、向かい合うようにしてシュウを座らせた。
包み込むように抱きしめて、ヨシヨシと頭を撫でる。
「シュウ、好きだよ」
優しく囁くとピクリと肩が揺れた。
「今日はなんだかとことん君を甘やかしたい気分だ。してほしいことがあったら言ってごらん。」
胸元に添えられていた手が、シャツごと握られる。
「・・・あの、」
「なんだ?」
「いっぱい、撫でて?」
「あぁ。もちろん。」
頭から、耳へ、そのまま頬へ手のひらを降ろすと、スリスリと顔を擦り付けられる。
「シュウ。」
クイ、と顎を持ち上げてキスを落とす。
「っは・・・」
いつもよりぎこちない呼吸の仕方。
「他には?」
「え、っと・・・」
しばらく考えながら、ぽぽぽと一人で頬を赤くするシュウ。
「僕、のこと・・・好き?」
潤んだ瞳でこちらを見上げてくる姿には、正直クるものがある。
たまらず口元が緩む。
「・・・あぁ。もちろん。愛してるよ、光ノ。」
目の前の愛おしい彼の目が、驚いて見開かれた。