ごちごちサンド(予定) その小さな男士の姿を見かけたのは、演練場の隅、ロビーとお手洗いを仕切る壁の前に設置してあるベンチの上だった。
後家兼光……いや、もしかしたら後家兼光と審神者の子なのだろうか。10歳くらいの身長だが、赤髪に黒ジャケットを体にかけ、美しい拵えの刀を抱いて寝ているその姿は、不思議と刀剣男士の神聖さを纏っているようにも見える。
しかし、その後家兼光をそのまま小さくしたような体は傷だらけ、包帯だらけで、周りの審神者は存在に気がついていないか、関わりたくないと見ないふりをする人たちばかりだった。
「えっと、大丈夫……ですか……?」
観葉植物の葉に隠れるようにして寝ていた彼に、私は躊躇わずに声をかける。
今日の近侍は第一部隊の隊長も兼任していて、演練中の今は側に誰もいない。本当はこんな状況で声をかけるべきではないとわかっていたけれど、生来のお節介がつい顔を出してしまった。
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