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    りこ(千梨子)

    @pd_cani

    普段は千梨子名義で小説を書いています。

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    りこ(千梨子)

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    一目惚れした美女は一国を護る騎士様でしたたまに町中を散策してみる甲斐もあるものだ。馬車ではなく足で町を散策していた俺は雑踏の中に他の女より頭ひとつ分デカい美女を見つけた。
    すらりと伸びた背丈に猫のように括れた腰つき。むちむちした太腿には太めのベルトが巻き付いていて、女の趣味か、それとも男の趣味か、その答えは分からないがそれは女の体によく似合っていた。
    すっと伸びた鼻筋の上に見えるまつ毛はくるんと上を向いている。正直言ってどタイプの女だ。彼女の視線はずっと先、人の波の向こうを見ている。
    「何を見ているんだ?」
    視線を向ければ、チョコレート屋に若い女が群がっている。その光景を見て、俺はなるほどと頷いた。
    おそらく中に加わりたいけど加われないんだ。
    なかなか澄ました顔をして可愛いところもあるじゃないか。
    「店主、薔薇を一本」
    横の花屋に金貨を一枚差し出せば、店主は戸惑いながらも薔薇を手に返してくる。
    「釣りはいらん」
    言い置いて、俺は甘い匂いの漂う店先へと足を運ぶ。見るも美しいチョコレートの前に群がる女を俺は横にどけた。
    「ちょっと! あんた、何するのよ!」
    「うるさい。庶民が貴族に容易く声を掛けるな。おい、店主。この店で一番高いチョコレートを」

    一つ、と言いかけたところで、何処からともなく鞭の鳴る音が聞こえてくる。
    「へっ?」
    気が付けば脇に差していた薔薇の花がひらりひらりと地面に散っている。振り返れば先ほどの美女が手に鞭を持って俺に眼を飛ばしてきていた。
    正面から見れば、物凄く迫力のある美人だ。というか、この顔なにかで覚えが……
    「あっ!」
    声を上げた瞬間、ずんずんと歩み寄ってきた美人が俺の手首を握りしめてくる。彼女、……いや、彼のモノクルがぎらりと光り、俺は人生の終わりすら感じた。
    「皆の楽しみを妨害するとは何たる非道か!」
    「あっ、いや、待ってください! これには訳が!」
    「言い訳無用!」
    女たちが呆然とする中、俺はずるずると腕を引かれていく。何処に俺は連れて行かれるのだろう。あ、いや、恐らく騎士団の本拠地か。顔を上げればプンスカと怒る姿は美人というより、ちょっと可愛い。
    あれ、何か胸がドキドキしてきた。
    俺を引っ張りながら、美人は「今日発売の新作スイーツが」とか何とか口にした気がしたが、この美人の正体を考えれば空耳だろう。
    目の前のタイツから透けた肌色にごくりと息を呑み込む。まあ昼間から美人と監獄までデート出来るなら有りか……
    いや、相手は男だぞ?
    真昼間から俺の性癖を歪めてきた美人、そう、この国を護る偉大な副団長様を前にして、俺は彼を副団長に任命した国王様に些か腹が立った。
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