無題佐助が風の王国を出ていってから、小太郎は兜で顔を見せないが苛立っていた。何故かここ暫く仕事が振ってきて夜に佐助に会えないし、昼間も合間を縫って佐助に会いに行っていたのが大量の仕事のせいで佐助に会えず、またこの時に限って佐助も姿を見せず小太郎の苛立ちはピークに達した。
この日の夜、側近が大量の書類を持ってきたが小太郎は無視して部屋に行った。周りが引き止めようとあれこれ言ってきたが殺気を出すと一斉に離れていきその隙に寝室へ行った。そういえばここしばらく乱暴にしてしまったからたまには優しくしてやろうと思ったが佐助の姿はどこにも無く、追いかけてきた部下の首を掴むと片手で持ち上げた。
「佐助はどこだ?」
「さ…佐助様が居ないのですか?」
「惚けるな。ここしばらく忙しかったのは、佐助が居ないのを誤魔化す為だったのだな」
佐助が居ない事で全てを把握した小太郎は、怒りで周りの物を吹き飛ばしながら部下を睨みつけた。部下は観念し、全てを語った。
「佐助様は…炎の国へ旅立ちました」
「炎の国…。そうかあの時」
「もう佐助様を解放してあげてくださいっ!佐助様は」
すると部下の首が皮一枚繋がってはいるが大きく切り裂かれ大量の血を流しながら倒れた。小太郎は死体を放り投げると玉座の間へ行き、大臣を呼びつけこう言った。
「炎の国を滅ぼす」
数週間後、突然風の王国から兵士がやって来て、炎の国を侵略していった。炎の国の兵士は反撃するが小太郎の風の魔法で炎を寄せ付けず、寧ろ炎で攻撃すればする程炎は家や人々を焼いた。
「佐助…!お主だけでも逃げろっ!!」
「俺様が逃げたらそれこそ国が滅びてしまうっ!旦那こそ逃げてくれ!」
遂に城にまで攻撃の手が伸び、幸村は佐助を守りながら戦った。しかし多勢に無勢で奥の間に一時的に避難した幸村と佐助はお互いが逃げろと言い合っていた。
「あいつらの狙いは多分俺様だ!だからここは俺様が残って旦那は逃げるんだ!王太子であるアンタが生き延びればいずれ炎の国は復活する!」
「狙いがお主と分かっているからお主が逃げるべきだっ!もし佐助が捕まってしまったらどんな仕打ちを受けるか…」
「…大丈夫だよ。何だかんだで命までは取られた事ないんだから死にはしないよ。だから今回もきっと大丈夫」
「佐助…!」
「ほら、旦那逃げて。大丈夫。俺様も最低限は戦えるんだから」
それでも幸村は逃げようとせず、寧ろ佐助の隣に立った。
「ならば共に残ろう」
「旦那!」
「共に戦い最後まで生き残ればいいだけだ」
「いざとなったら俺様を盾にしろ」
そう言って佐助と幸村は身構えるが…