書こうと思ったゲタ水話水木の通勤路の途中には鬱蒼とした森がある。ここは最近出来た道で本当はこの森は伐採されて真ん中に大きな道路が出来る予定だった。しかしこの森は古くから呪われた森と言われていて地元住民が大反対したのと、建設会社が試しに木を倒そうとしたところ携わった者全員が何かしらの怪我や病気をし直属の上司に至っては事故で下半身不随になり、会社側の人間も気味悪がり森は伐採されずに森を囲うような形で歩道が出来上がった。
だが、地元住民はこれでも気味悪がりなるべく使わないようにしていて綺麗な道路の割に歩く人はおらず、水木の場合は会社からこの道は近道になるのとあまり人が通らないことからこの道を好んで使っている。
今日も仕事する為にこの道を通っていると森と道の境目に細長いキラキラと輝く物が見えた。最初針金かと思ったがうねうねと動き、気味が悪くて歩みをゆっくりにして遠目から観察するとそれは小さなヘビだった。
「…あぁヘビだったのか。ちょっとビビった…」
無視しても良かったが、今は秋でもうすぐ冬に入るのではと思うほど寒い日だ。これで放っておいて帰り道にヘビが死んでいたらちょっと可哀想だなと思った水木は、適当な枝を拾うとそれでヘビを掬って森の中にヘビを置いてやった。
「餌は自分で何とかしろよ」
ぶっきらぼうにそう言うと水木は振り返らず仕事に向かった。
一方でそれまでぐったりしていた筈のヘビは起き上がり、まるで視線から糸を出しているのかと思うほどジットリとした目で水木をいつまでも見ていた。
仕事が終わり帰っているとまた細長いキラキラした物が森と道路の境目で見つけた。
「またあのヘビか?」
水木の予想通りヘビで、朝見たモノと同じかまではハッキリ分からないが恐らく同じヘビだろうと思うと何となく愛着心が湧いて距離を開けた上でしゃがみこんだ。
「朝よりかは元気になったっぽいし、少しは餌食えたのか?」
ヘビからは返事なんか帰ってくる訳がないが、代わりに頭を上げてヘビなりに元気アピールしているようで水木は笑うと立ち上がった。
「じゃあな。今度こそちゃんと冬眠の準備しろよ」
この時付かず離れずの距離でヘビが水木を追いかけていて、一度でも振り返っていればヘビは逃げたかもしれない。だが水木は一度も振り返らなかったせいでヘビは水木の家まで着いてきてしまった。
次の日、今日も仕事の水木は欠伸をしながら玄関を開けると昨日見たヘビが玄関の隅っこにいるのを見つけた。
「昨日の…着いてきたのか?」
返事はないが昨日みたいに頭を上げてきて水木は『変なのに好かれたか』と心の中で頭を抱えながらも枝を拾ってヘビを家の敷地内から出してやった。
「じゃあな」
そう言って水木は仕事に向かい蛇はまた水木の自宅の敷地内に入り比較的暖かい所で水木が帰ってくるのを待った。