人生の楽園今日の分の薪割りを終え狡噛は体を伸ばした。
それなりに年齢を重ねた身には連続での作業も疲労を覚えるようになった。
そして自分がそれを感じることのできる年齢まで生きていることに軽く驚きも感じていた。
転がった薪をまとめ、乾燥させるために軒に並べおくと、母屋に戻る。
今日は宜野座が街まで出かけており、夕飯の支度も自分が担当だ。
2人のここでの暮らしももう15年になる。
あの時、宜野座が一緒に果ての地まで同行すると申し出てきた時、狡噛は驚いた。
昔でいう島流し
刑罰と同じ扱いの身の上。
宜野座は”限定付きの範囲”であれば人間らしい生活が約束されていたのに。
よりにとって”罪人”についていくというのだ。これが奇特以外の何ものでもないだろう。
何を言ってるんだ
考え直せ
ありきたりな言葉で狡噛は翻意を促した。
しかし宜野座の決意は固いようだった。
驚く狡噛をよそに涼しい顔をして
「勘違いするなよ、お前を見張るんだ。世の中の為だ。」などという。
宜野座自身の限定付きは棚上げだ。
それを聞いていた周りは、特に驚きもせず受け入れていたのも納得がいかなかった
しかも、さらに反対の意を示す狡噛を哀れむような目で見るだけで、
すでにこの話は終わったとばかりに宜野座に対して「いつ出発する?」だの「お別れ会をしよう」だの相談が始まっていた。
なんなんだこれは…と狡噛は呆然としていたが
その心の奥底ではどこかほっとしていたのも事実だ。
どこに、何にほっとしていたのかに気づくのはそれからずっと後だったのだが。
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ここまでです