目の前にどんどん並べられていく食事をぼんやりと眺める。何故こんなことになったのか。
恐らくきっかけは、先日無理矢理受けさせられた健康診断。結果に微塵も興味がなかったから、検査結果の紙は机の上に放り出していた。
それをサテツ君が『良かった。健診行ってくれたんですね』と覗き込んだところまでは横目で見たが――気が付いたら大量の出前がラボに運び込まれだしていた。
チャーハン、天丼、カツ丼、カレーライス、ラーメン、蕎麦、うどん、焼きそば、ナポリタン、唐揚げ……明らかに多い。匂いだけで満腹になりそうな、胃もたれ必至のラインナップ。普通なら二人分としても無理がある。
まあだが問題ない。ほぼほぼ彼が食べてくれるだろう。なにせ彼の胃は新横浜退治人が誇るブラックホールだ。
そう考えながら埋まっていくテーブルを見るともなく見つめていると「そうそう」と皿を並べる手を止めて、サテツ君が顔を上げた。
そして、小さく笑う。
「どれも二人前あるんで、俺に遠慮せず食べてくださいね」
――は!?
咄嗟に椅子から腰を上げようとした俺様の肩に、ズドンと物凄い勢いで彼の両手が落ちてくる。肩から尻までビリビリと衝撃が走る。なんとか立ち上がろうと足を踏ん張っても、恐ろしいことに全く体が動かない。
「サ、テツ君……」
テーブル越しに腕を伸ばしている彼の顔を見上げると、彼は依然笑顔のままで。
「BMI、もうちょっと増やしましょう?」
と、小首を傾げた。